最近、航空参謀長(最近は幕僚長という)が「太平洋戦争はアジア人に感謝されている」と主張して早めの退職へ追い込まれた。軍隊の文民統制(シビリアン・コントロ-ル)から大きく逸脱したからである。
彼の主張は我々の生活を脅かすのだ。この主張に反発した中国人が日本へ輸出するギョーザに毒を入れたら、どうなるか?
中国の各地で操業している数多くの日本の会社の工場へ、中国側の自治体が無法な税金をかけたり、営業上の邪魔をしはじめたらどうなるか?日本の会社が倒産すれば、日本人が困るのは当然である。
だからこそ、軍人が政治的な発言をしてはいけないのだ。政治問題にかんする限り軍人には言論の自由が無いのだ。そんなことも分からない人物が参謀長になって居たのだから恐ろしい。
上の写真は昨日撮影した東郷平八郎元帥が祀られている神社である。境内にはバルチック艦隊を葬ったあと、旗艦三笠の上で、元帥が明治天皇にかしこまって、いろいろ説明している絵画が飾ってある。
そうか文民統制は日本には根着かないわけだ!と合点が行く。
もともと、これは欧米の近代国家で、軍隊の暴走を防ぐために発達した政治的な思想である。
関東軍が中国大陸で勝手気儘に武力侵略したのを政治家が止められなかった。それは一つの記憶に過ぎない。
むしろ戦後、アメリカの占領軍によって押し付けられた政策である。
占領軍に押し付けられた考え方は、なんでも無視しようという感情が現在の日本人の中にあるのは自然なことだ。その感情が国益へ損害を与える結果になる場合もある。どのような場合には国益を損なうのか?そのような教育をするのが自衛隊の職場教育である。
しかし、日本では政治家も軍人も民間人の我々もみんな、シビリアン・コントロールとか、文民統制の重要性をよく理解できないのも一方の真実である。
朝鮮戦争のとき敗走する共産軍が中国領へ逃げ込んだ。マッカーサー司令官はその中国領を爆撃し共産軍を殲滅しなければ又朝鮮へ侵入してくると主張する。
それは軍事的には正しい主張だ。でもその結果は、大きな悲劇となる。マッカーサーにはそれが理解出来ない。
そんな司令官をトルーマン大統領は一通の電報で解任する。マッカーサーのことを神のように崇めていた日本人にとっては驚天動地の体験であった。中国領を爆撃すればソ連も参戦し、第3次世界大戦が勃発する可能性が否定できない。それが政治家、トルーマンの判断であった。我々日本人が第三次世界大戦で塗炭の苦しみから逃れられたのは、トルーマンの政治的判断のお陰である可能性を否定できないのではなかろうか。
「軍人は現職にある限り、客観的に国際政治が理解しにくい職業だ。ややもすると武力を使いたくなる職業だ!」という国民共通の強い認識が無ければ文民統制は根着かない。はかない浮き草のようにマスコミが賢げに騒ぐだけで終わってします。
アイゼンハワー司令官が退職後に大統領になったのは、彼のバランス良い国際政治能力をアメリカ国民が信頼したのだ。しかし、歴代の大統領で総司令官の経歴を持った大統領は希少な存在である。
この問題は、われわれ一人一人の心の中の問題なのだ。田母神参謀長ひとりを非難しただけでは済まない。いつも忘れないことが重要なのだ。(終わり)