伊澤孝平さんが書いた「そういう時代の旅と人」という欧米旅行記を5回の連載記事でご紹介しました。
そういう時代とは昭和27年頃のことです。第二次大戦の壮絶な戦災の跡がまだ人々の記憶に生々しく残っていた時代です。
下に伊澤孝平さんも被災した仙台大空襲のあとの写真を示します。
そして伊澤氏が旅をしたヨーロッパには以下のような戦災の記憶がまだくすぶっていたのです。
この旅日記の連載記事を6回書いてから、私はいろいろなことを深く考えています。
まず、自分が戦争の頃や戦後の復興の時代をすっかり忘れていたことに愕然としました。この忘れやすさに人間として恥じ入っています。
そして一番衝撃を受けたことは伊澤氏が不自由な旅をしながらも非常に楽しんでいたことです。欧米旅行が歓喜の連続でした。その喜びは彼の欧米の歴史や文化についての深い教養によって一層輝いていたのです。そして何よりも彼は欧米の文化に憧れ、崇拝すらしていたのです。
その歓喜と崇拝が読者としての私の心に力強く響いて来るのです。
私はそんな時代の日本人が真剣に人生を考え、生きていることに感動したのです。
そして現在の若者達が真剣に人生を考えていないことに不満を感じていました。
いえ、はっきり言えば確固たる人生目的も無く、のんべんだらりんと生きている現在の若者たちを軽蔑さへしていました。伊澤氏が立派で、現在の若者が立派でないと感じていたのです。
しかしこの考えは根底から間違っているのです。
伊澤氏の強い欧米崇拝や、ヨーロッパ文化についての深い教養は、昭和初年から昭和20年にいたる戦争の連続と鎖国のような時代が作った一つの現象に過ぎないのです。
そして現在の若者達の人生の過ごし方は、この豊かで平和な時代が作ったもう一つの現象に過ぎないのです。
どちらもその時代の作ったそれぞれの現象である限り、絶対に優劣はありません。
日本人の、そして人間の考え方や感じ方はその人々の住んでいる国がどんな時代なのかということによって大きな影響を受けるのです。甚大な影響をうけるのです。
その上やっかいなことには国が違えば、同じ時期でもそれぞれの時代の内容が違うのです。日本が自由で平和なこの同じ時に中国は共産党独裁時代なのです。両国の人々の考え方や感じ方が大きく異るのは当然です。
しかし日本と中国の文化には優劣が無いのです。日本人が中国人の考え方や感じ方が間違っていると言っても、それは暖簾に腕押し、豆腐にカスガイなのです。
伊澤孝平氏の「そういう時代の人と旅」という本を読んでいろいろなことを考えています。人々にものを深く考えさせる本なのです。下に掲載記事の一覧を示します。クリックするとそれぞれの記事が自動的に開きます。
それはそれとして、
今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
===この記事に関連した過去の掲載記事の一覧==========
2013年11月30日掲載、夕闇と炎を見ながら伊澤孝平著「そういう時代の旅と人」を読む
12月1日掲載、伊澤孝平著、「そういう時代の旅と人」(1)ソ連の原爆攻撃にそなえ防空壕を作っていたアメリカ
12月2日掲載、伊澤孝平著、「そういう時代の旅と人」(2)アムステルダムにゴッホの絵画を見に行く
12月4日掲載、伊澤孝平著、「そういう時代の旅と人」(4)戦災の跡生々しいドイツ
12月5日掲載、伊澤孝平著、「そういう時代の旅と人」(4)ミラノ、ヴェネチャ、ローマ、ヴァチカンに魅了される
12月7日掲載、伊澤孝平著、「そういう時代の旅と人」(5)マルセーユ、スエズ、インド洋、そしてペナン、シンガポール経由の帰りの船旅