今度の日曜日は復活祭です。キリスト教ではクリスマスよりも重要な祭日です。
イエスが十字架上で死んで3日目に甦って弟子達に話をしたのです。人間は死んでも生き返るのです。
そこで今日は何故イエスが死刑になったか、その理由と経緯を簡単に書きます。
少しややこしい話です。ユダヤ王国と、そこを占領しているローマ帝国との国際関係がからんだ話なのです。
イエス・キリストは約2000年前の中東のユダヤ王国のベツレヘムで生まれ、ナザレと言う町で育ちました。
ですからイエスはユダヤ教徒だったのです。そして民族宗教のユダヤ教を斬新に改革して全ての民族のためになる世界宗教にしたのです。その世界宗教を現在の人々は「キリスト教」と呼んでいます。
さてユダヤ教の保守的な聖職者や律法学者はイエスのこの改革を邪道だと非難し、イエスを捕らえて死刑にしようとしたのです。
しかし当時のユダヤ王国はローマ帝国の支配下にあったのです。ですから重要な裁判権はローマ総督のピラトだけが持っていたのです。
そこでユダヤ教の保守的な聖職者たちはイエスを捕らえて、ピラトに裁判をして死刑にして下さいと頼んだのです。
ピラトは始めイエスには罪が無いと思います。しかし保守的な聖職者や群衆が死刑判決を下せと叫び続けたのです。騒乱を恐れたピラトはしぶしぶイエスへ死刑の判決を下したのです。
この歴史的事実を福音書は克明に書いています。以下にルカによる福音書の第23章を示します。
(1)ユダヤ教の保守派がイエスを捕らえピラト総督に裁判を頼む場面
1 群衆はみな立ちあがって、イエスをピラトのところへ連れて行った。
2 そして訴え出て言った、「わたしたちは、この人が国民を惑わし、貢をカイザルに納めることを禁じ、また自分こそ王なるキリストだと、となえているところを目撃しました」。
3 ピラトはイエスに尋ねた、「あなたがユダヤ人の王であるか」。イエスは「そのとおりである」とお答えになった。
4 そこでピラトは祭司長たちと群衆とにむかって言った、「わたしはこの人になんの罪もみとめない」。
5 ところが彼らは、ますます言いつのってやまなかった、「彼は、ガリラヤからはじめてこの所まで、ユダヤ全国にわたって教え、民衆を煽動しているのです」。
(2)ピラトは困ってイエスをユダヤのヘロデ王へ送った場面
6 ピラトはこれを聞いて、この人はガリラヤ人かと尋ね、
7 そしてヘロデの支配下のものであることを確かめたので、ちょうどこのころ、ヘロデがエルサレムにいたのをさいわい、そちらへイエスを送りとどけた。
(3)ヘロデ王の対応の場面
8 ヘロデはイエスを見て非常に喜んだ。それは、かねてイエスのことを聞いていたので、会って見たいと長いあいだ思っていたし、またイエスが何か奇跡を行うのを見たいと望んでいたからである。
9 それで、いろいろと質問を試みたが、イエスは何もお答えにならなかった。
10 祭司長たちと律法学者たちとは立って、激しい語調でイエスを訴えた。
11 またヘロデはその兵卒どもと一緒になって、イエスを侮辱したり嘲弄したりしたあげく、はなやかな着物を着せてピラトへ送りかえした。
12 ヘロデとピラトとは以前は互に敵視していたが、この日に親しい仲になった。
(4)ピラト総督が再度イエスを無罪放免しようとした場面
13 ピラトは、祭司長たちと役人たちと民衆とを、呼び集めて言った、
14 「おまえたちは、この人を民衆を惑わすものとしてわたしのところに連れてきたので、おまえたちの面前でしらべたが、訴え出ているような罪は、この人に少しもみとめられなかった。
15 ヘロデもまたみとめなかった。現に彼はイエスをわれわれに送りかえしてきた。この人はなんら死に当るようなことはしていないのである。
16 だから、彼をむち打ってから、ゆるしてやることにしよう」。
17 祭毎にピラトがひとりの囚人をゆるしてやることになっていた。
(6)群衆がイエスをに十字架につけて死刑にしろと叫ぶ場面
18 ところが、彼らはいっせいに叫んで言った、「その人を殺せ。バラバをゆるしてくれ」。
19 このバラバは、都で起った暴動と殺人とのかどで、獄に投ぜられていた者である。
20 ピラトはイエスをゆるしてやりたいと思って、もう一度かれらに呼びかけた。
21 しかし彼らは、わめきたてて「十字架につけよ、彼を十字架につけよ」と言いつづけた。
22 ピラトは三度目に彼らにむかって言った、「では、この人は、いったい、どんな悪事をしたのか。彼には死に当る罪は全くみとめられなかった。だから、むち打ってから彼をゆるしてやることにしよう」。
23 ところが、彼らは大声をあげて詰め寄り、イエスを十字架につけるように要求した。そして、その声が勝った。
(7)ピラトが折れてイエスに死刑判決を下す場面
24 ピラトはついに彼らの願いどおりにすることに決定した。
25 そして、暴動と殺人とのかどで獄に投ぜられた者の方を、彼らの要求に応じてゆるしてやり、イエスの方は彼らに引き渡して、その意のままにまかせた。
26 彼らがイエスをひいてゆく途中、シモンというクレネ人が郊外から出てきたのを捕えて十字架を負わせ、それをになってイエスのあとから行かせた。
27 大ぜいの民衆と、悲しみ嘆いてやまない女たちの群れとが、イエスに従って行った。
・・・28から35までは省略します・・・
(8)ローマ軍の兵士が十字架につけたイエスを罵る場面
36 兵卒どももイエスをののしり、近寄ってきて酢いぶどう酒をさし出して言った、
37 「あなたがユダヤ人の王なら、自分を救いなさい」。
38 イエスの上には、「これはユダヤ人の王」と書いた札がかけてあった。
39 (イエスと共に他に2人の死刑囚が十字架に架けられていた)十字架にかけられた犯罪人のひとりが、「あなたはキリストではないか。それなら、自分を救い、またわれわれも救ってみよ」と、イエスに悪口を言いつづけた。
40 もうひとりは、それをたしなめて言った、「おまえは同じ刑を受けていながら、神を恐れないのか。
41 お互は自分のやった事のむくいを受けているのだから、こうなったのは当然だ。しかし、このかたは何も悪いことをしたのではない」。
42 そして言った、「イエスよ、あなたが御国の権威をもっておいでになる時には、わたしを思い出してください」。
43 イエスは言われた、「よく言っておくが、あなたはきょう、わたしと一緒にパラダイスにいるであろう」。
(9)午後3時にイエスが絶命する場面
44 時はもう昼の十二時ごろであったが、太陽は光を失い、全地は暗くなって、三時に及んだ。
45 そして聖所の幕がまん中から裂けた。
46 そのとき、イエスは声高く叫んで言われた、「父よ、わたしの霊をみ手にゆだねます」。こう言ってついに息を引きとられた。
47 (ローマ軍の100人の兵を持つ隊長の)百卒長はこの有様を見て、神をあがめ、「ほんとうに、この人は正しい人であった」と言った。
48 この光景を見に集まってきた群衆も、これらの出来事を見て、みな胸を打ちながら帰って行った。
49 すべてイエスを知っていた者や、ガリラヤから従ってきた女たちも、遠い所に立って、これらのことを見ていた。
このように福音書は具体的にピラト総督やヘロデ王の対応を克明に書いているのです。
この死せるイエスが3日目に復活し生き返るのです。その場面は続編でご説明いたします。
今日の挿し絵代わりの写真は椅子に座っているピラトの前に引き出された白い服を着たイエスの絵画です。死刑にしろと群衆が叫んでいます。
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ピラトの前に引き出されたイエス(1881年、Mihály Munkácsy)
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
イエスが十字架上で死んで3日目に甦って弟子達に話をしたのです。人間は死んでも生き返るのです。
そこで今日は何故イエスが死刑になったか、その理由と経緯を簡単に書きます。
少しややこしい話です。ユダヤ王国と、そこを占領しているローマ帝国との国際関係がからんだ話なのです。
イエス・キリストは約2000年前の中東のユダヤ王国のベツレヘムで生まれ、ナザレと言う町で育ちました。
ですからイエスはユダヤ教徒だったのです。そして民族宗教のユダヤ教を斬新に改革して全ての民族のためになる世界宗教にしたのです。その世界宗教を現在の人々は「キリスト教」と呼んでいます。
さてユダヤ教の保守的な聖職者や律法学者はイエスのこの改革を邪道だと非難し、イエスを捕らえて死刑にしようとしたのです。
しかし当時のユダヤ王国はローマ帝国の支配下にあったのです。ですから重要な裁判権はローマ総督のピラトだけが持っていたのです。
そこでユダヤ教の保守的な聖職者たちはイエスを捕らえて、ピラトに裁判をして死刑にして下さいと頼んだのです。
ピラトは始めイエスには罪が無いと思います。しかし保守的な聖職者や群衆が死刑判決を下せと叫び続けたのです。騒乱を恐れたピラトはしぶしぶイエスへ死刑の判決を下したのです。
この歴史的事実を福音書は克明に書いています。以下にルカによる福音書の第23章を示します。
(1)ユダヤ教の保守派がイエスを捕らえピラト総督に裁判を頼む場面
1 群衆はみな立ちあがって、イエスをピラトのところへ連れて行った。
2 そして訴え出て言った、「わたしたちは、この人が国民を惑わし、貢をカイザルに納めることを禁じ、また自分こそ王なるキリストだと、となえているところを目撃しました」。
3 ピラトはイエスに尋ねた、「あなたがユダヤ人の王であるか」。イエスは「そのとおりである」とお答えになった。
4 そこでピラトは祭司長たちと群衆とにむかって言った、「わたしはこの人になんの罪もみとめない」。
5 ところが彼らは、ますます言いつのってやまなかった、「彼は、ガリラヤからはじめてこの所まで、ユダヤ全国にわたって教え、民衆を煽動しているのです」。
(2)ピラトは困ってイエスをユダヤのヘロデ王へ送った場面
6 ピラトはこれを聞いて、この人はガリラヤ人かと尋ね、
7 そしてヘロデの支配下のものであることを確かめたので、ちょうどこのころ、ヘロデがエルサレムにいたのをさいわい、そちらへイエスを送りとどけた。
(3)ヘロデ王の対応の場面
8 ヘロデはイエスを見て非常に喜んだ。それは、かねてイエスのことを聞いていたので、会って見たいと長いあいだ思っていたし、またイエスが何か奇跡を行うのを見たいと望んでいたからである。
9 それで、いろいろと質問を試みたが、イエスは何もお答えにならなかった。
10 祭司長たちと律法学者たちとは立って、激しい語調でイエスを訴えた。
11 またヘロデはその兵卒どもと一緒になって、イエスを侮辱したり嘲弄したりしたあげく、はなやかな着物を着せてピラトへ送りかえした。
12 ヘロデとピラトとは以前は互に敵視していたが、この日に親しい仲になった。
(4)ピラト総督が再度イエスを無罪放免しようとした場面
13 ピラトは、祭司長たちと役人たちと民衆とを、呼び集めて言った、
14 「おまえたちは、この人を民衆を惑わすものとしてわたしのところに連れてきたので、おまえたちの面前でしらべたが、訴え出ているような罪は、この人に少しもみとめられなかった。
15 ヘロデもまたみとめなかった。現に彼はイエスをわれわれに送りかえしてきた。この人はなんら死に当るようなことはしていないのである。
16 だから、彼をむち打ってから、ゆるしてやることにしよう」。
17 祭毎にピラトがひとりの囚人をゆるしてやることになっていた。
(6)群衆がイエスをに十字架につけて死刑にしろと叫ぶ場面
18 ところが、彼らはいっせいに叫んで言った、「その人を殺せ。バラバをゆるしてくれ」。
19 このバラバは、都で起った暴動と殺人とのかどで、獄に投ぜられていた者である。
20 ピラトはイエスをゆるしてやりたいと思って、もう一度かれらに呼びかけた。
21 しかし彼らは、わめきたてて「十字架につけよ、彼を十字架につけよ」と言いつづけた。
22 ピラトは三度目に彼らにむかって言った、「では、この人は、いったい、どんな悪事をしたのか。彼には死に当る罪は全くみとめられなかった。だから、むち打ってから彼をゆるしてやることにしよう」。
23 ところが、彼らは大声をあげて詰め寄り、イエスを十字架につけるように要求した。そして、その声が勝った。
(7)ピラトが折れてイエスに死刑判決を下す場面
24 ピラトはついに彼らの願いどおりにすることに決定した。
25 そして、暴動と殺人とのかどで獄に投ぜられた者の方を、彼らの要求に応じてゆるしてやり、イエスの方は彼らに引き渡して、その意のままにまかせた。
26 彼らがイエスをひいてゆく途中、シモンというクレネ人が郊外から出てきたのを捕えて十字架を負わせ、それをになってイエスのあとから行かせた。
27 大ぜいの民衆と、悲しみ嘆いてやまない女たちの群れとが、イエスに従って行った。
・・・28から35までは省略します・・・
(8)ローマ軍の兵士が十字架につけたイエスを罵る場面
36 兵卒どももイエスをののしり、近寄ってきて酢いぶどう酒をさし出して言った、
37 「あなたがユダヤ人の王なら、自分を救いなさい」。
38 イエスの上には、「これはユダヤ人の王」と書いた札がかけてあった。
39 (イエスと共に他に2人の死刑囚が十字架に架けられていた)十字架にかけられた犯罪人のひとりが、「あなたはキリストではないか。それなら、自分を救い、またわれわれも救ってみよ」と、イエスに悪口を言いつづけた。
40 もうひとりは、それをたしなめて言った、「おまえは同じ刑を受けていながら、神を恐れないのか。
41 お互は自分のやった事のむくいを受けているのだから、こうなったのは当然だ。しかし、このかたは何も悪いことをしたのではない」。
42 そして言った、「イエスよ、あなたが御国の権威をもっておいでになる時には、わたしを思い出してください」。
43 イエスは言われた、「よく言っておくが、あなたはきょう、わたしと一緒にパラダイスにいるであろう」。
(9)午後3時にイエスが絶命する場面
44 時はもう昼の十二時ごろであったが、太陽は光を失い、全地は暗くなって、三時に及んだ。
45 そして聖所の幕がまん中から裂けた。
46 そのとき、イエスは声高く叫んで言われた、「父よ、わたしの霊をみ手にゆだねます」。こう言ってついに息を引きとられた。
47 (ローマ軍の100人の兵を持つ隊長の)百卒長はこの有様を見て、神をあがめ、「ほんとうに、この人は正しい人であった」と言った。
48 この光景を見に集まってきた群衆も、これらの出来事を見て、みな胸を打ちながら帰って行った。
49 すべてイエスを知っていた者や、ガリラヤから従ってきた女たちも、遠い所に立って、これらのことを見ていた。
このように福音書は具体的にピラト総督やヘロデ王の対応を克明に書いているのです。
この死せるイエスが3日目に復活し生き返るのです。その場面は続編でご説明いたします。
今日の挿し絵代わりの写真は椅子に座っているピラトの前に引き出された白い服を着たイエスの絵画です。死刑にしろと群衆が叫んでいます。
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ピラトの前に引き出されたイエス(1881年、Mihály Munkácsy)
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)