後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

夢幻的な藤の花の咲く季節になりました

2019年04月23日 | 日記・エッセイ・コラム
季節のうつろいは早いものです。ロウバイと梅が咲き、コブシ、白モクレンが咲き、桃、桜が満開になり春が過ぎ行きました。最近は藤の花が咲き出して初夏のような日々がやってきました。
藤の花は実に夢幻的な淡い紫色で、眺めていると優しい気持ちになります。
嗚呼、いかにも日本的な色彩だとしみじみ思います。桐の花の色とも通います。
藤は日本固有種です。縄文、弥生の古くから人々に愛されてきた花です。
万葉集では藤の花を藤波と言って数十の歌が詠われています。
私も藤の花が好きで栽培種と野生の藤の花の写真を沢山撮りました。
野生の藤は他の木に巻きついて大きく成長し山の新緑を一層美しく飾ります。山藤の蔓は上から見ると左回りで栽培種とは逆です。

今日はまず以前に撮った栽培種の藤の花の写真を4枚と山梨県の甲斐駒岳の麓で撮った山藤の写真を3枚送りします。













さて万葉集の藤の花を詠った和歌を少しだけご紹介いたします。
万葉集では藤は、藤波と表現されています。一方、海女(あま)の藤衣(ふじころも)と表現されているものは、つるの繊維で織った粗末な衣のことです。
藤波とは藤の花が波のように重なって咲いている光景を詩的に表現した美しい言葉ですね。。

0330: 藤波の花は盛りになりにけり奈良の都を思ほすや君
0413: 須磨の海女の塩焼き衣の藤衣間遠にしあればいまだ着なれず
1471: 恋しけば形見にせむと我がやどに植ゑし藤波今咲きにけり
1627: 我が宿の時じき藤のめづらしく今も見てしか妹が笑まひを
1901: 藤波の咲く春の野に延ふ葛の下よし恋ひば久しくもあらむ
1944: 藤波の散らまく惜しみ霍公鳥今城の岡を鳴きて越ゆなり
1974: 春日野の藤は散りにて何をかもみ狩の人の折りてかざさむ
1991: 霍公鳥来鳴き響もす岡辺なる藤波見には君は来じとや
2971: 大君の塩焼く海人の藤衣なれはすれどもいやめづらしも
3075: かくしてぞ人は死ぬといふ藤波のただ一目のみ見し人ゆゑに
以下省略します。

以上の和歌は「たのしい万葉集: 藤(ふじ)を詠んだ歌」、https://art-tags.net/manyo/flower/fuji.html
から転載しました。原典には数十の藤の花を詠った和歌があります。
この「たのしい万葉集: 藤を詠んだ歌」の優れているところはそれぞれの和歌をクリックすると次のように万葉仮名で書いた原文、作者、よみ、意味が明快に書いてあることです。

第三巻 : 藤波の花は盛りになりにけり
原文: 藤浪之 花者盛尓 成来 平城京乎 御念八君
作者: 大伴四綱(おほとものよつな)
よみ: 藤波の花は、盛りになりにけり、平城(なら)の京(みやこ)を、思ほすや君
意味: 藤の花がいっぱい咲きましたね。これを見ていると奈良の都のことを思ってしまいますでしょ。
太宰府で、大伴旅人(おおとものたびと)に贈った歌です。

第三巻 : 須磨の海女の塩焼き衣の
原文: 須麻乃海人之 塩焼衣乃 藤服 間遠之有者 未著穢
作者: 大網公人(おほあみのきみひと)
よみ: 須磨(すま)の海女(あま)の、塩(しほ)焼き衣(きぬ)の、藤衣(ふじころも)、間(ま)遠(とほ)にしあれば、いまだ着なれず
意味: 須磨(すま)の海女(あま)の塩(しほ)焼き作業に着る藤衣(ふじころも)は織目が粗いので、まだ着慣れないです。
宴会の時に詠んだ歌です。「塩(しほ)焼き衣(きぬ)の藤衣(ふじころも)」は、塩焼き作業の時に着た藤(ふじ)のつるで作った粗末な衣のことです。「間(ま)遠(とほ)にし」は、その衣の織目が荒いことを言ったのです。

第八巻: 恋しけば形見にせむと我がやどに
原文: 戀之家婆 形見尓将為跡 吾屋戸尓 殖之藤浪 今開尓家里
作者:山部赤人(やまべのあかひと)
よみ: 恋しけば、形見にせむと、我がやどに、植ゑし藤波、今咲きにけり
意味: 恋しいので形見にしようと庭先に植えた藤が、今、咲いています。

これを読むと万葉集が完成した奈良時代末期の780年の頃の人々が藤の花を愛でた様子が鮮明に分かります。
そしてその藤の花は野山に自然に咲いている山藤だったのです。
藤を庭に植え藤棚を作り花枝が滝のように垂れさがるようにしたのは江戸時代だったと私は勝手に想像しています。

このように美しい花をヨーロッパ人も見逃しません。
http://mini-post-uk.blogspot.com/2016/05/blog-post_20.htmlからの抜粋文えです。
・・・藤は、日本、中国などの東洋と、一部北米が原産ですので、イギリス(とヨーロッパ)には、18世紀になってから導入された植物です。それでも、レンガや石造りの屋敷や塀を覆って咲いている様子は、かなりさまになっており、はるか昔から、イギリスにいるような、貫禄の面持をしているものもあります。 藤(ウィステリア、wisteria)と言うと・・・
是非、藤の花がレンガや石造りの屋敷や塀を覆って咲いている感動的な風景をこのHPを開いてご覧になって下さい。シャーロック・ホームズに「ウイステリア荘」という話がありました。

それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)