老境にいたると静かに時が流れます。世間の騒ぎなど遠い世界のように感じます。
私は毎日静かな時を過ごすようにしています。静かに過ごすとは何もしないことではありません。
心がシーンと静まるような絵画を見たりします。時には広々した海辺の風景を見に行きます。昨日のように山の斜面に一面に咲いている梅林を見に行くこともあります。
今日は心が静かになる川瀬巴水の版画の写真をお送りいたします。詩的で美しい版画です。
川瀬巴水は大正・昭和期の浮世絵師、版画家です。江戸時代の葛飾北斎や歌川広重のように力強くありませんが胸を打つ静かな美しさがあるのです。
インターネットを検索すると川瀬巴水の版画が数多く掲載されています。その中から私の好きな5点の版画をお送り致します。
1番目の写真は明治期の東京湾の風景です。まだ帆船が運搬船として使われいました。
2番目の写真は芝の増上寺の前の雪の風景です。和服姿の女性が傘を斜めにして歩いている様子に詩情が感じられます。
3番目の写真は雪晴れの富士山の静かな風景です。忍野八海付近から見た風景でしょうか。
4番目の写真は雪晴れの農村風景です。除雪した道を一人の人間が歩いています。それだけの絵ですが郷愁を感じます。
5番目の写真は深川付近の木場の夕暮れ風景です。水に浸けた材木が波の無い水面に横たわっています。
さて川瀬巴水の版画は品が良く詩的な美くしさがると書きました。これは私の感想ですが彼の版画の特徴は次のようなものではないいでしょうか。
1、詩的な美を感じさせる版画です。
2、情景の一部だけの版画ですが、周囲の風景が見える版画です。
3、版画を見る人の心をある高いところへ連れていってくれる版画です。
このような版画を好む外国人も多いようです。
例えばアメリカの絵画評論家ロバート・ミューラーの紹介によって、川瀬巴水は欧米でも広く知られているそうです。
むしろ海外での評価が高く、浮世絵師の葛飾北斎や歌川広重等と並び称される程の人気があると言われいます。
川瀬 巴水は1883年、明治16年に生まれ 1957年、昭和32年に亡くなりました。享年74歳でした。
本名は川瀬 文治郎といい衰退した日本の浮世絵版画を復興すべく吉田博らとともに新しい浮世絵版画である新版画を確立した人物として知られています。
近代風景版画の第一人者であり日本各地を旅行し旅先で写生した絵を原画とした版画作品を数多く発表します。
日本的な美しい風景を叙情豊かに表現し「旅情詩人」「旅の版画家」「昭和の広重」などと呼ばれたそうです。
詳しくは、「https://ja.wikipedia.org/wiki/川瀬巴水」をご覧下さい。
皆様は川瀬巴水の版画についてどのような感想をお持ちでしょうか?是非ご感想をお送り下さい。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
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川瀬 巴水、の主な作品と制作の年代を示します。原画の写真は「https://ja.wikipedia.org/wiki/川瀬巴水」に掲載してあります。
「東京十二題」より『深川上の橋』
(大正9年)
「東京十二題」より『冬の月(戸山の原)』(大正9年)
「旅みやげ第二集」より『大阪 道とん掘の朝』(大正10年)
「旅みやげ第二集」より『甲州 梁川』(大正10年)
「日本風景選集」より『島原 九十九島』(大正11年)
「東京二十景」より 『芝 増上寺』
(大正14年)
木版画「日光街道」
(昭和5年)
「十和田湖 神代ヶ淵」紙本着色
(大正9年)