若い頃は趣味や道楽にふけることは悪いことだと信じていました。自分の専門の研究だけに集中し他のことには関心を持つべきではないと思っていました。
ところが36歳の時、スウェーデンの工科大学に行きました。招待してくれたエケトルプ教授は趣味の木造の古民家に住んでいて私を何日か泊めてくれたのです。そして海辺の別荘へも案内してくれたのです。
その上て趣味は人間の視野を広げ幸せにすると熱心に説いてくれたのです。あまり情熱的に趣味を薦めてくれたので私は2つの趣味を持つ決心をしました。
一つは甲斐駒岳の麓の山林の中に小屋を作りそこへ通う趣味です。もう一つはヨットの趣味です。
今日はこの二つの趣味で私の視野が非常に広がった話を書きます。視野が広がったお陰で幸福になったのです。
その詳しい説明をする前に山林の中の私の小屋の近所に咲く花々の写真をお送りします。
1番目の写真は蕎麦の花です。背景は八ヶ岳です。私の小屋は甲斐駒岳の麓の山林の中にありますがその山林を出ると八ヶ岳も見える場所にあります。
2番目の写真は甲斐駒岳を背景にした花畑の風景です。標高900mの寒冷地なのでスイセンや桃や桜が同時に咲きます。
3番目の写真は私の小屋の周りの山林に華やか咲く山ツツジの花です。
山林の中の小屋は1973年に、山林を100坪程買って作りました。 小屋の庭には小川が流ています。
この土地はある不動産屋が別荘地として売り出したものです。私の他に30人ほどの都会の人がその一画に別荘地を買いました。
早速この別荘地を買った30人と別荘地を管理をする組合を作り、清流園管理組合と名づけました。
毎年会費を集め清流園の草刈りと道路の補修の費用にあててきました。毎年一回親睦会も開いてきました。もう46年も続けています。別荘は7軒くらい建ちましたが、別荘を建てていない人々も山林の自分の土地によく遊びに来ます。
蝉や小鳥の鳴き声を聞きながら樹木を眺めて満足したように帰って行くのです。清流園管理組合の会員の職業は実にいろいろです。共通なことは人里離れた山林が大好きなことです。
この趣味のお陰で本当にいろいろな職業の人と友人になれたのです。清流園管理組合の組合員だけでなく周囲の別荘地の人々とも仲良くなりました。そして特に現地の酪農家や農家の人々には大変お世話になったのです。
こうして趣味のお陰で私の視野が広がりました。幸福感にも包まれたのです。
スウェーデンのエケトルプ教授が趣味は人間を幸せにすると言ったことは真理だったのです。
そのエケトルプ教授は随分前に亡くなりました。はるかに花束を贈って冥福を祈ったのものです。嗚呼。
私のもう一つの趣味はヨットでした。この趣味を25年間続けたおかげで私のものの見方が変わったのです。
大型ヨットは贅沢な趣味だと誤解していました。ところがこれが大変な間違いでした。ヨットの趣味は中古の格安のヨットを買えば手軽に出来るのです。
まずヨットの趣味とはどのようなものか写真で示します。
4番目の写真は駿河湾の沼津に近い漁港に舫っているHootaさんが艇長をつとめるハンスクリスチャン41です。この日私も駿河湾のセイリングを楽しむことが出来ました。2009年4月に初めて艇長のHootaさんと千葉県の保田魚港に係留してあったハンスクリスチャン41のヨットで一緒にビールを飲んだのです。その後この艇に何度も乗せてもらいました。
5番目の写真は「東京ベイヨットクラブ」の経営者だったOkumaさんのババリア39型のヨットです。三浦半島の突端の三崎港から東京の浜離宮わきの係留地までセイリングした時の写真です。背景は房総半島です。2009年の5月のことでした。当時、Hootaさんは「東京ベイヨットクラブ」の指導員でした。
6番目の写真は私が初めて買った中古のヤマハ19のクルーザーです。琵琶湖の雄琴の藤田マリーンで購入し霞ヶ浦まで大型トラックで陸送しました。このヨットには10年間乗りました。
7番目の写真は2番目に買った中古のアメリカ社設計のジョイラック26です。筑波大学病院のお医者さまから買いました。この船には13年間乗りました。
私のヨットの趣味は葉山や江の島で小型ヨットのディンギイで2年、霞が浦でYAMAHA-19での10年、Joyluck-26での13年間、合計25年間の趣味でした。50歳で始めて、2011年の75歳でヨットの趣味をやめました。
さてそれでは何故、ヨットの趣味で私の視野が広がったか理由を書きます。
それまでは金持ちの人を差別し、彼等の「金持ち趣味」を軽蔑していたのです。自分の金持ちへの嫉妬心です。世の中には金持ちと貧乏人しかいない。私は誇り高い貧乏人だと威張っていました。
しかし金持ちだけがしていると思っていたヨットの趣味には質素な暮らしをしながらお金を工面してヨットに乗っている人が大部分なのです。
趣味の世界ででは金持もそうでない人も完全に平等な世界なのです。
その上、海で豪華なヨットに乗っている人は小さなヨットに乗っている人をほとんど無償で豪華なヨットに招待してくれるのです。
海で豪華なヨットに乗っている人々は別世界の人だと思い込んでいた私の間違いを思い知ったのです。
Hootaさんが言ってました。「皆さん、普通の人々で生活の仕方を工夫してヨットに使うお金を作っていると思いますよ」「職業や年齢も色々です。皆さん、気持ちの良い方々で話がすぐ通じますよ」
Hootaさんは以前、法務省で国家公務員として働いていた人です。人間が純粋なようで、中央省庁のお役所仕事があまりお好きでなかったようです。安定した職業をサラリと止めて、ニコルさんのレンジャー養成学校の先生になりました。ヨットは16歳の時から素晴らしい師匠について練習したそうです。当時は「東京ベイヨットクラブ」の指導教官として働いていました。
そうして全ての人との出会いに感謝している様子なのです。ああ、こういう人をジェントルマンと言うのだと感じました。
それからヨットを止めた私をご自分のヨットにご招待して下さった方々もいました。
繁田 慎吾さんと 中村 文政さんです。もう7年も前のことです。このようにヨットの趣味を続けながら親切な人に沢山出会いました。
そのお陰で私の視野がすっかり広がり人間を見かけによって差別しないようになったのです。
他人を差別しなければ皆と仲良くなれます。それが幸せと感じるようになりました。趣味のお陰です。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)