後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

「江戸幕府の遺産、玉川上水の樹々の新緑」

2021年04月07日 | 日記・エッセイ・コラム
新緑が美しい季節になりました。近所で樹々の新緑が見事なところは小金井公園と玉川上水沿いの樹林帯です。
今日は朝から青空の穏やかな日和です。さきほどカメラを手にとって玉川上水沿いの樹林帯の新緑の写真を撮って来ました。
玉川上水は江戸初期に江戸へ生活用水を送るため、多摩川上流の羽村から取水し四ツ谷まで作った43Kmの送水用の堀のことです。飲み水にも使ったので上水と言います。江戸幕府から委託され、工事を完成させた玉川兄弟の銅像は羽村の堰の岸辺に立っています。
現在も玉川上水はよく手入れされ大きな樹々が繁っています。江戸時代の自然がそのまま残っているようです。
それでは先程撮って来た新緑の写真をお楽しみ下さい。









ここに示した5枚の写真の最後の写真は小金井橋から見下ろした現在の玉川上です。その他4枚の写真は小金井橋の上流の玉川上水の樹々の新緑です。

大月 雄喜章著「もうひとつの上高地」

2021年04月07日 | 日記・エッセイ・コラム
はじめに
3月31日に『随筆、大月 雄喜章著、「落水ーヘリコプターが神様に見えた」』という記事を掲載しました。大変面白い内容でしたの再度何か書いてくれませんかと頼みました。そうしたら快くこの記事を送って下さいました。この記事は雑誌ヘリコプタージャパン2008年11月号に掲載されたものだそうです。大月 雄喜章さんへ感謝しつつ以下にお送りいたします。後藤和弘
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大月 雄喜章著「もうひとつの上高地」

新緑にはまだ早い、4月半ばの上高地は残雪が豊富だった。落葉松の新芽はまだ初々しく、盛夏には混雑する河童橋あたりも人影は少ない。連休を控えて、冬の間閉ざしていた旅館も山小屋も、客を迎える準備に忙しい。
学生時代山登りに熱中していた私は、井上靖の山岳小説「氷壁」に刺激され、北アルプスの穂高は憧れの山だった。しかし、上高地を玄関にした穂高連峰は3000m級の峰が連なり、登山技術のみならず貧しい学生にとって、費用も日数もかかり山行するのは容易な事ではない。

1番目の写真は上高地の風景です。梓川の向こうに聳えているのが穂高連峰です。
社会人となってから7年、憧れの上高地に出張で来ていた。仕事は点在する山小屋への荷揚げである。山男たちの旺盛な食欲を満たすため、膨大な食料燃料などの運搬は、それまでボッカという運搬のプロたちの人力に頼っていた。しかし苛酷な労働で後継者がいなく、高齢化している。昭和40年代後半のころであった。
今回、散在する山小屋が共同でヘリコプターをチャーターして、一気に輸送してしまおう、という計画が立てられた。車の入れる最奥の徳沢に臨時のヘリポートを設けて、標高2800m付近の穂高岳山荘や、他の4箇所の山小屋に輸送する。
上高地の標高は1500mだから、毎回およそ1500mを上昇降下する。一般にジェットヘリは、高温と高地に弱い。機体にも乗員にとっても、かなりハードな仕事である。

2番目の写真は穂高の主峰にある山小屋の「穂高山荘」です。

世の中は高度経済成長の真っ只中で、仕事はいくらでもあるから、このような“小さな仕事”に会社は最初、あまり乗り気ではなかったという。まして使用機の富士ベル204Bは当時の最新鋭機で、輸送能力が高く各現場で引っ張りだこだった。
入念な準備と打合せの後、作業開始。
クルーは機長のKと私、国家試験合格直後で実務訓練中のS、新入社員のTの4人。私はこの仕事の責任者で確認整備士、それにSやTの訓練教官と営業部員の役割も兼ねる。顧客側はヘリを使うのは初めてだ。
ヘリの飛行料金は高価で、時間当たり60万円以上もする。片道輸送のみでは勿体無いし、昨年来のゴミや不要品も山に捨てられないから、帰りに吊り降ろす。
天候に恵まれ、モッコに入れた食料燃料、水や生活用品を吊って、北アルプス上空に舞い上がった。ボッカが1日がかりの行程を、ヘリは10数分で到達する。登山者のみに許された憧れの穂高岳の大展望を、ヘリの副操縦席から楽しんだ。

機長のKは、陸上自衛隊から最近入社したパイロットで、私よりかなり若い。自衛隊ではこのヘリの軍用型であるUH-1に乗っていたという。操縦は上手いが、良くも悪くも規定通りの飛び方で、まだ民間業務に慣れていない。さらにこの高度では、空気が薄くなるので、エンジン出力はかなり低下する。低下する出力を補うため、燃料を余計につぎ込むので燃費は悪くなる。
作業開始して間もなく、私は燃料消費が想定以上に多いのに気が付いた。飛行中エンジン計器の指示を無線で地上のSに伝え、燃料消費率を計算させた。
私はヘリの性能計算をして、搭載する荷物は1回分を800kgに制限している。顧客に再度確認してもらうようTに指示した。加えて、帰りにも荷を吊っているので、降下中も速度が出せない。必然的に飛行時間は多くなる。会社にとっては、確かに売上は伸びるのだが。
このままでは燃料が足りなくなる。

3番目の写真は松本空港に着陸している富士ベル204Bです。これから山奥の徳沢の臨時のヘリポートへ向かう準備をしています。
当時松本空港には給油施設は無く、燃料を追加配置するには、東京からドラム缶で運ばねばならない。当然費用は増すし、輸送には丸1日かかるだろう。
本社資材部の燃料担当者の計算では、足りるはずだった。初日の作業終了後改めて計算すると、足りるかどうかの判断に迷う微妙なところだ。東京までの帰りの分は確保しておかねばならない。機長は「こんな計算はしたことがない」という。自衛隊では、パイロットは操縦桿を動かすだけのもの、であるらしい。燃料など「欲しいだけあるもの」と思っていたそうだ。
この富士ベル204Bという中型機は、信頼性の高い優秀な機体だが、やたらと燃料を食う。満タンにすると約800ℓを搭載するが、強力な1100shp(馬力)のエンジンは、1時間にドラム缶2本半、500ℓを消費する。ちなみに最大出力1100馬力とは、D-51蒸気機関車やゼロ戦とほぼ等しい。しかしエンジンの重量は、およそ220㎏と小型軽量である。

4番目の写真は徳沢の臨時のヘリポートに着陸した富士ベル204Bです。
翌日も晴天が続き、南風が出てきた。これを利用しない手はない。機長と相談して飛行ルートを変えることにした。迂回コースになるが明神岳の南面をかすめて、西穂高の尾根沿いをたどり上昇気流に乗る。
ふわーっと持ち上げられる感じだ。はたして同じ上昇率を得るのにエンジン出力は少なくて済み、燃料消費は約5%減少した。自然に逆らってパワーで上昇するのではなく、気流を味方にする。大先輩から散々教え込まれた事だ。

5番目の写真は荷物を吊り下げて山小屋へ運んでいる富士ベル204Bです。
山頂にガスがかかったり、悪天候で作業が出来ない日もあったが、7日目にすべてが終了したときは、東京ヘリポートに帰投するのに充分な空輸燃料を確保できた。
ゴールデンウィークともなれば、北アルプスも元気な若者たちでにぎわう事だろう。上高地までなら、登山者でなくても誰でも気軽に楽しむ事が出来る。山登りでは誰でも、やたらと腹が減って食欲旺盛になるものだが、ヘリコプターも山に来ると大食漢になるものであるらしい。{終わり)

写真の出典、
1番目の写真の出典;後藤和弘のブログ、2014年05月13日 掲載記事
2番目の写真の出典; https://funq.jp/peaks/article/565429/
3番目の写真;大月 雄喜章 撮影
4番目の写真;大月 雄喜章 撮影
5番目の写真;㈱タクトワン提供