後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

「ヘリコプターのいろいろと整備にまつわる話」

2021年04月21日 | 日記・エッセイ・コラム
現在ヘリコプターはきわめて広い用途で利用されています。山岳遭難や海洋遭難での救助だけではありません。災害発生時には被災者の救助や安全な場所への移送、被災地への救援物資の運搬 等々に用いられます。
その他、患者の病院への移送や救急搬送(ドクターヘリ)、報道機関による空中からの取材、重要な人の移動、遊覧飛行、また森林火災の消火活動、逃亡する犯人の追跡、 等々にも利用されていいます。
そして軍事目的では、第二次世界大戦末期に実戦投入され本格的な運用としてはベトナム戦争でした。以後、ヘリは航空戦力として必要不可欠な存在となっています。このようなさまざまな用途については、https://www.aero.jaxa.jp/spsite/helicopter/001.html をご覧下さい。

さて飛行機はエンジンが故障してもグライダーのように滑空して地上に降りることが出来ます。しかしヘリコプターはエンジンが止まれば滑空は飛行機ほど容易ではありません。しかしヘリコプターの整備が完璧なら安全で便利至極な乗り物なのです。整備が非常に重要なのです。
今日はヘリコプターのいろいろと整備にまつわる話を書いてみたいと思います。
そこで長年ヘリコプターの整備をしてきた大月 雄喜章さんに頼んでヘリコプターとその整備についていろいろ教えて貰いました。大月さんは素人の私に分るように何度も丁寧に教えてくれました。
なお大月さんについては次の2つの記事をご参照下さい。
大月 雄喜章著「もうひとつの上高地」(2021年04月07日 掲載)と、随筆、大月 雄喜章著、「落水ーヘリコプターが神様に見えた」(2021年03月31日 掲載)。

まずいろいろなヘリコプターをご紹介します。写真は、「いろいろなヘリコプターの写真」を検索して転載したものです。
ヘリコプターは空中に停止するホバリングして静止できますし、前後・左右・上下方向に自由度の高い飛行が可能なのです。こんな便利な乗り物はありません。
日本では航空機全体に占めるヘリコプターの割合は他国に比べて高くなっています。国内で登録されている航空機の約3割がヘリコプターなのです。さまざまな用途に使われています。

1番目の写真はよく見る一般的なヘリコプターです。

2番目の写真は車を吊っている重量物運搬用ヘリコプターです。装甲車のように見える重そうな車を運んでいます。

3番目の写真は自衛隊の軍用ヘリコプターです。アメリカ軍がベトナム戦争で多数の攻撃用ヘリコプターを使ってから軍用ヘリコプターが普及したのです。

4番目の写真は高速で飛ぶヘリコプターです。ヘリコプターの弱点は航続距離が短いことです。これを改良したのがこれです。

さてヘリコプターの飛ぶ原理はどうなっているのでしょうか?

5番目の写真はヘリコプターの飛ぶ原理を説明した図面です。ヘリコプターは上部にメインローター(回転翼)があります。ホバリング中はそれを高速に回転させて生じる推力で機体の重量を支えています。
飛行機は前進する事で、翼に風が当たり揚力が発生し浮かびますが、ヘリコプターはメインローターと呼ばれる「主回転翼」をグルグル回して揚力を発生させます。ですから、垂直に離陸することが可能なのです。
前後左右に飛ぶためにはメインローター(回転翼)の傾きを前後左右に傾けて飛びます。
それから上昇速度を上げるためにはメインローター(回転翼)の角度(ピッチ)を変えて登っていきます。回転翼の角度をより上向きにしてより多量の風を掴むようにします。同時に燃料供給を増やしエンジンの出力も上げます。
ヘリコプターで重要なのは 5番目の写真に示したテールローダーです。ヘリコプター自身がメインローター(回転翼)の反作用で回ってしまうのを防いでいます。テールローダーの故障は命取りになるのです。
ですからこそヘリコプタ―の整備は完璧でなければなりません。
整備は全ての部品を注意深く行います。しかしメインローター(回転翼)の整備はヘリコプター特有でとても重要です。そこでメインローター(回転翼)の整備の様子を写真で示します。写真の出典は、http://www.jgas-aircraft.co.jp/blog/2018/02/13/391 です。

6番目の写真はメインローター(回転翼)の整備をしている光景です。整備士が持っている「バー」みたいな棒はトルクレンチです。ちょうど、「MUST NUT」と呼ばれる部品のトルクチェック中の光景です。

7番目の写真はスワッシュプレートの点検です。操縦桿の動きをこのスワッシュプレートがメインローターのピッチチエンジに替え、ローター回転面を傾けます。

8番目の写真はメインローターハブ(ヘッドとも呼びます)の主要部分のトルクチェックをしているところでしょう。
このようにヘリコプターは機体の構造も飛行機とは大きく異なります。そのため、整備士の資格も飛行機とは別に設定されています。
ヘリコプタ―の整備には航空力学の知識だけでなく名人技が必要です。例えば整備終了後の機体の振動の防止などでは整備名人の勘働きが必要なのです。勘と経験による振動調整はさらに最新のバイブレーションアナライザー(振動調整器)の助けで見事に収まることもあるそうです。

こうしてヘリコプタ―は安全で信頼出来る乗り物になるのです。新聞やテレビで報じられるヘリコプタ―の事故は一般の飛行機事故の数より少ないのです。
ヘリコプタ―は精密機械です。ですから飛ぶ時は操縦士の隣に整備した責任整備士が乗って操縦士を補佐します。
世の中には目立たないが非常に重要な役割を黙々としているプロがいっぱい居るのです。そんな存在を考えて頂きたいと思いこの記事を書きました。

それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)