アメリカは競争社会だとよく言われます。競争社会だから発展するとも言われます。しかし日本人にとって「競争社会」とはどういう社会なのか分かりません。
そこで今日はアメリカの会社の厳しい人事管理と大学の強制退学を具体的に説明しようと思います。アメリカの競争社会の実態を明快に説明したと思います。4年間の在米生活で得た競争社会の実態を書きます。
まず始めにアメリカから入って来たスーパーマーケットのことを考えてみます。スーパーには広い駐車場があります。あらゆる食品をはじめ日常生活に必要な品が一店舗に揃っています。またコンビニエンスストアでは商品が実に新しい発想で開発されていて店内を見ているだけで楽しい店です。商品は日常使う物や食品が全てそろっているのです。文房具や香典袋からローソクなどの日用雑貨、各種の酒類、菓子、卵から野菜、そして多種多様な弁当類がそろっているのです。
日本全国に仏教のお寺が7万5千軒あるそうですが、コンビニの数は同じくらいあるそうです。
コンビニはアメリカで生まれた便利な文化です。気がついてみると生活を便利にするアメリカのものは全て日本を占領してしまっています。
マックやケンタやスタバのようなファストフードの店もお寺の数に迫っているそうです。
こうしてキーボードを叩いているパーソナル・コンピューターもアメリカ発祥のアメリカ文化の産物です。
郊外の大型量販店もアメリカ発祥です。この狭い日本の国内旅行に飛行機を使うのもアメリカの風習です。その上、その旅客機はほとんど全てアメリカ製なのです
上に書いたようなアメリカ文化は自由に日本に入って来ます。日本人の生活を豊かにしてくれます。有難いことです。
しかしアメリカ文化のなかの一部には日本には絶対に入らないものがあるのです。輸入が不可能なのです。それはアメリカ社会や会社の中の厳しい人事管理と大学などの学校において行われているの強制的な退学命令です。
さてアメリカの会社の人事管理から始めます。
アメリカでは能力主義の人事管理をします。成果で評価します。成果を挙げないと情け容赦なくクビにします。クビにした後は成果を挙げそうな人を他の会社から引き抜いてきます。
その人事管理はトランプ前大統領の側近のクビの仕方と同じなのです。トランプ前大統領の人事管理はアメリカでは普通のことで驚いている人はいません。日本人が驚いているのです。
アメリカ社会や会社の中の人事管理を深く考えると、それはキリスト教を下敷きにしているのです。
アメリカの文化の特徴はキリスト教に対する強い信仰があることです。
アメリカ人の80%がキリスト教を信じています。
アメリカは弱肉強食の社会で、貧富の差が大きいので人間関係は殺伐としていると誤解しがちです。しかしアメリカに4年間暮らしてみると助け合いの精神が溢れていて、実に暖かい人間関係があるのです。殺伐とした社会というより人間的で温かい社会なのです。
ですからアメリカ文化を万遍無く公平に理解しようとしたら、彼らのキリスト教への帰依を理解しなければなりません。
勿論、アメリカにはイスラム教徒もユダヤ教徒も仏教徒も数多くいます。しかし話を簡明にするために今日はキリスト教だけを取り上げています。
さてアメリカでは従業員や側近を簡単にクビにします。仕事で成果が上がらないのは神の業なのです。しかし神はその従業員や側近を深く愛しているのです。
クビにする上司は、「神が君に与えた才能はこの仕事に合わないので辞めてたほうが君の幸になる。君の才能に合った仕事に就いた方が幸になるよ」と言ってクビにします。
アメリカで転職が多いのはこの考え方が強く存在しているからです。
上司は絶対に、「君は悪い人間だからクビ」だとは言いません。神が与えた才能がこの仕事に合わないとだけ言っているのです。
辞めさせられた人も傷つきません。人格が悪いから辞めさせられた訳ではないのです。
キリスト教の共通価値観の無い日本ではアメリカ流の人事管理は不可能なのです。
蛇足を書きます。アメリカでも気に食わない部下を上司が感情的にクビにすることはあります。しかし周囲の目が厳しいのです。そんな人事管理を続けていればその上司もクビになります。そこが日本と違うところです。
次に大学の強制退学を具体的に説明します。オハイオ州立大学の大学院を例にします。
履修した全ての課目の平均点が2学期続けて80点以下になると強制的に退学させられます。
大学の新入生の約半分しか卒業出来ません。学年ごとに強制的に退学させられて学生数が減っていくのです。
退学した学生はレベルの低い大学へ転校します。例えばオハイオ州立大学から私立のオハイオ大学や他のカレッジへ転校します。こうしてアメリカの大学のレベルを世界一しているのです。
以上は約60年前の私の見聞ですがアメリカ社会は本質的には変わっていません。いろいろなアメリカについての本を読むと本質的には変わっていません。
今日はアメリカの競争社会の実態を説明しました。アメリカの会社の厳しい人事管理と大学の強制退学を例にました。2つとも絶対に日本へ輸入不可能なものなのです。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
今日の挿し絵代わりの写真は私が留学したオハイオ州立大学の懐かしい風景写真です。
1番目の写真はオハイオ州立大学の構内にあるミラーレイクです。
2番目の写真はオハイオ州立大学の中央にある広場です。
3番目の写真はオハイオ州立大学のアメリカンフットボールの競技場です。」
4番目の写真は私が実験装置を作ったロードホールです。
5番目の写真は学科主任のフォンタナ先生の部屋のあった建物です。