相撲は日本の伝統文化です。その文化を誠実に伝承しようとすれば古い体質も伝承しなけらばなりません。
私は「古い体質」が悪いと主張しているのではありません。新しい考え方と古い体質を比較すれば今回の日馬富士問題も明快に理解できるので便宜上、「古い体質」という表現を用いたのです。
新しい考え方の主は貴乃花親方とその弟子の貴ノ岩関です。
古い体質の主は日馬富士です。そして古い考え方の主は貴乃花親方以外の理事のメンバーです。
白鳳は古い体質と自分勝手な新しい考えを持っています。
今回、日馬富士が貴ノ岩関の頭を固いリモコンで殴り裂傷を負せた背景には次のようなことがあったようです。
(1)相撲界では伝統的に星の譲り合いがありました。負け越す相手に負けて上げるのです。弱い相手に情けをかけてやるです。これが古い体質なのです。美しい日本の義理人情です。
一方、ガチンコ勝負と言って情け無用の相撲に徹する力士もいます。これはスポーツ精神に徹した新しい考えかたです。
(2)貴乃花親方は現役の頃からこの古い体質を改めようとしました。親方になってからは相撲界の他のいろいろな古い体質を一掃しようとします。
(3)貴乃花親方は弟子の貴ノ岩関が星の譲り合いをしないように他の部屋の力士との交際を一切厳禁して来たのです。
(4)モンゴル力士同士は日本の伝統の星の譲り合いを忠実に伝承し、お互いに星の譲り合いを黙認し厳禁はしませんでした。
(5)そのモンゴル力士会に反発していたのが貴ノ岩関です。酒席に呼び出して白鳳が説教しました。その後の二次会で反抗的な態度をとった貴ノ岩関にカッとなった日馬富士が暴力を振るったのです。
(6)和解しもみ消そうとした日馬富士の親方や理事会を信用していなかった貴乃花親方は、事件の起きた土地の鳥取県警に被害届を出しました。
(7)その貴乃花親方のやり方を厳しく批判する他の理事やマスコミの一部は古い体質の伝統文化としての相撲が好きなのです。その気持ちも私はよく分かります。
さて一般的に何か事件が起きたら仲間内だけの秘密にしてもみ消そうというのが「古い体質」なのです。
一方、すぐに警察に届けるのが近代社会の市民として正しい行為です。
正直に言えば私は両方が好きです。そうです。人間なので矛盾しているのです。
矛盾していると言えば白鳳横綱も矛盾しています。
モンゴル力士同士の星の譲り合いでは、古い考えかたを支持しています。
しかし力士自身が行司の判断に異議を示したり、万歳三唱を指導したりするのは新しい考え方です。
他の近代的なスポーツでは審判の判定に対して選手自身が意見を言うのは別に批判されません。それは選手の基本的人権の一部です。しかし立ち合いに対する白鳳の抗議はしつっこ過ぎました。
最後に万歳三唱を指導した気持ちは分かります。モンゴル力士会に反発していた貴ノ岩関を日馬富士が殴って、自分が引退に追い込まれたのです。白鳳は悔しくてやるせなかったのです。しかし万歳三唱は勝手な行いでした。白鳳は横綱です。自分の感情はグッと呑み込んで我慢すべきだったのです。
私はどちらが正しく、どちらが悪いとは絶対に言えません。人それぞれ、どちらが好きか、嫌いかという問題です。
しかし今回の日馬富士の問題で私が相撲界の実態が少し理解出来ました。
伝統文化も時代の流れに従って変わっていく宿命にあるのかと考え込んでいます。何か淋しいです。
写真は順に貴乃花親方、日馬富士、白鳳の写真です。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)