たった一瞥なのに、こうして俳句に残すと
すっかりその人を忘れられないのである。
扇は黒っぽかった。きちんとととのえた胸もと。
かきあげた髪。それでいてとりすました感じも
冷やかさも見えなかった。
年のころは四十をいくつか越えた人。
私は、その人になんでこんなにはっきりと
母性を感じたものだろうかと、
今、思い返してみたら、戦時、男の子を持つ
母親の祈願、それをこの人に感じたのだった。
中村汀女・自句自注より
この句は昭和15年の作です。
日中戦争が始まって3年、次第に英霊となって
帰国する兵士が増えていきました。
私の叔父も、この頃、中支で戦死し
無言の帰国をしています。
今日、小泉総理が英霊を祀る靖国神社に参拝しました。
どうも困った人です。
個人としての参拝はともかく、総理の靖国参拝には反対です。
宗教的な行為ではなく、まったく政治的な行為ですから。
遅足