題詠 「霜月」
霜月や沖にタンカー伊良湖岬
霜月や眞珠の似合ふ老婦人
霜月に蛇さ迷いて優美かな
とりあえずマフラーをして霜月へ
霜月の祭りの鬼は大喰ひ
霜月や葱の白さに惑わされ
霜月や乾燥肌は虚をつかれ
霜月やパズルがふたつとけぬまま
霜月やシャッター通りに猫走る
風霜月砂糖醤油の匂いする
霜月の虫の宿なる父の鉢
霜月や酒飲むしぐさ父に似て
自由題
栗落ちて又三郎のやうな風
そぞろ寒部屋いっぱいにくしゃみする
返り花校舎の隅の暗きかな
小春日にカルボナーラの湯気あくび
愚にかえり抱けといふ母冬帽子
冬浪に次は没すや蟹漁船
冬の陽の斜交いに差し猫うたた
紅葉を訪ねて飛騨の足湯かな
霜月の京暖かく持て余す
俳句する女三人冬来る
廃寺跡ただ影となり秋の蝶
瞬けば行方知れずや蝶渡る
以上12句です。 遅足