575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

おもしろうてやがて悲しき鵜舟かな  芭蕉 

2015年12月13日 | Weblog
この句は芭蕉が長良川の鵜飼を見物して詠んだもの。

一緒だった弟子の落梧と荷兮も句を詠んでいます。
 
  鵜の頬に篝こぼれてあはれなり    荷兮

  篝火に見おぼえのある鵜匠かな    落梧

芭蕉の句は、見物人の立場で詠んだものと思っていました。
しかし、謡曲の「鵜飼」を習って少し読み方を変えなくてはと。

「鵜飼」の舞台は、甲斐の国・石和の里。
例によって旅の僧が登場。非業の死を遂げた鵜使いの亡霊に出会います。
そして僧の願いに応じて、鵜を使って鮎を捕える様子が謡われます。
以下は、鵜飼の様子を謡う地謡の大意です。

 篝火に驚く鮎を鵜が追い回す面白さよ・・・
 やがて月が出ると、鵜飼も終りである。悲しいことよ。
 鵜舟の篝火が消えて、私は、また闇路に帰らねばならない。

「おもしろうて」「かなしき」「鵜舟」というキーワードが
3つとも出てきています。
芭蕉を始め弟子たちは能を熟知していました。
弟子たちも、この句に「鵜飼」を重ねあわせて読んだはずです。

鵜飼が果てて、シテは再び闇路へ帰らなくてはと歎きます。
楽しい時間はあっという間に過ぎてゆく。
生あるものは皆、死の闇路へ帰っていく。
そんなメッセージが裏に込められた句でもあったのでは?

                     (遅足)



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