575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

父、竹中 皆ニの短歌から ~「 湖北遊草 」② ~ 竹中敬一

2018年11月10日 | Weblog


父の第三歌集 「 しらぎの鐘 」( 昭和 57年 ) より


 金色 ( こんじき ) に輝く琵琶のみづうみなりき 今暮れゆく

  余呉のみづうみ


 寂かなる余呉のみづうみ渚まで 下りてゆかん此の昏れぐれを


 余呉のうみ深く湛へてしづまれり この寂しさは我を往かしむ


余呉湖は木之本に近い長浜市余呉町にあります。案内書によりますと、

余呉湖は南の賤ヶ岳によって、琵琶湖とは隔てられた周囲6キロ余り

の陥没湖。透明度が高く湖面が静かなため、鏡湖ともいわれている

そうで、今回 はじめて行ってみまましたが、確かにこの日も湖面は

穏やかで、鄙びた湖畔の風景を映し出していました。

羽衣伝説もあり、しばし時が止まったようでした。


「 永遠と木草 」( 昭和59年 ) より


 すぎし日の夏の旱に水位下り 暗くたたふる余呉のみづうみ


 現はれし水際の砂を踏みて歩む 余呉のみづうみ暗く妖しく


 曼珠沙華ひときは深きくれなゐが草むらに見ゆ曇天の下


父はこの曼珠沙華の他にも鶏頭、仏桑華、百日紅 、夾竹桃 、柘榴 など

赤色の花がどの歌集にも異常なまで出てきます。


 傾ける或は土に倒れ伏し 班班 ( はんぱん )として赤き鶏頭

「 しらぎの鐘 」

 倒れたるけいとうの花乱れつつ いま西の日をあまねく浴びつ

「しらぎの鐘 」

 仏桑華原色の花にして梅雨の曇りを払ふが如し
 
「木草と共に 」

 琉球の花 仏桑華うちつづく酷暑の日々に鮮やかに咲く

「 木草と共に 」

 あかあかと暑き光は照らしたり この一本のさるすべりの花

「 木草と共に 」

 この我の最も好む赤き花 梢高く咲く柘榴ならんか

「 永遠と木草 」

 もみじ葵 夾竹桃又百日紅のち道の辺に曼珠沙華咲く

「木草と共に 」



  写真は滋賀県長浜市余呉町の余呉湖 筆者 撮影


            



 曼珠沙華ひときは深きくれなゐが草むらに見ゆ曇天の下

曇天の下、という最後の七。最近の異常気象を思い重ねてしまいます。

そんな危機の迫った時ほど、美しいものはより美しく見えるのでしょうね。(遅足)

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする