飛花落花。桜の花が盛りを過ぎて散ること。
よく似た季語に花吹雪がありますが、
吹雪のように花びらがいっせいに舞い散ること。
作者は一斉に散る桜の花にこころを奪われています。
桜は荘川桜。
日差しも傾き夕暮れが近づいてくる頃でしょうか。
目の前が白一色に。
それは闇のように感じられました。
「白の闇」をどう読み取ったら良いのでしょうか?
ヒントは「荘川桜」にあるようです。
荘川桜(しょうかわざくら)は、岐阜県高山市荘川町(旧荘川村)の
御母衣ダムの湖岸に咲く2本のエドヒガンの古木。
樹齢はおよそ500年、淡いピンク色の花とごつごつした幹が特徴です。
敗戦後まもないころのお話。
日本復興のため、国策として電源開発の必要性が叫ばれ、
開発計画の白羽の矢が立ったが、庄川最上流の荘川村でした。
東洋一といわれたロックフィルダムが完成すれば、
荘川村内の中野全域と白川村の一部が湖底に沈むことになり、
先祖伝来の土地を奪われる村民は強く反対しました。
国のためという電発総裁・高碕達之助氏の説得の前についに建設に合意。
ダムは昭和36年に完成しました。
湖底に沈む運命にあった2本の桜。
何度も村を訪れていた高碕達之助氏は、この桜を救おうと決心。
湖岸に移植させました。昭和35年のことでした。
一時は枯死してしまうのでは、と心配された「荘川桜」ですが、
見事によみがえり、毎年美しい花を咲かせています。
湖底に沈んだ村の人たちが年に一回、この花の下で再会。
(そんなニュース、最近では見かけませんが・・・)
このエピソードから何を読み取るのか?
それによって白い闇の感じ方が違うのかも知れません。(遅足)