陽炎。春になると温められた地面から水蒸気が立ち上り、
空気が乱れることで、風景やものが揺らめいて見える現象。
春に限りませんが、のどかな感じのすることから
春の季語として親しまれてきました。
東の野にかぎろひの立つ見えて返り見すれば月かたぶきぬ
教科書にあった柿本人麻呂の歌。『万葉集』の時代、ひろびろとした野の陽炎。
こころが解放されるようでした。
ちらちらと陽炎立ちぬ猫の塚
こちらは夏目漱石の句。吾輩は猫であるの猫の塚でしょうか。
この猫の最後を思い出せば、苦いユーモアが感じられます。
そして、ご老体が陽炎にもつまずく超高齢社会の日本。行く末はいかに?
かぎろへば来し方行く末定かならず 静荷
未来は陽炎のなか。誰にも分らないようです。(遅足)