575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

「 津島祭礼図屏風 」13 〜 大英博物館蔵について 〜 竹中敬一

2019年07月06日 | Weblog


天王祭について書かれた書物はかなりありますが、天王祭の様子を描いた屏風絵に

ついて美術史、風俗史、郷土史などを総合した本格的な研究は少ないようです。

津島市と愛西市の教育委員会に聞いてみたところ、昭和50年代に津島市文化財専門委員

をしていた樋田 豊 氏 ( 大正10年のお生まれ、10年位 前に他界 ) が江戸時代に描かれた

と思われる津島祭礼屏風八点について、それぞれの特徴を比較研究した小論文がある

ことを知りました 。

ハ点の中には、ギメ国立美術館 ( 仏 )蔵、徳川美術館蔵、個人蔵などが含まれていますが、

大英博物館蔵については「 詳細未見 」とあります 。

私がその後、調べたところでは、この八点の屏風絵を紹介しているのは、「 秘蔵日本美術

大観 」( 全12巻 講談社 刊 )と「 秘蔵 浮世絵大観 」( 講談社 昭和62年 刊 ) 。

いずれも、カラーの図録に美術史や歌舞伎の研究家が短い解説を載せています。


いつ頃、大英博物館蔵となったのでしょうか 。

おそらく津島近辺の裕福な町方衆が持っていたものか。歴代、天王祭を見物していた尾張

藩主への献上品 だったものが、明治の頃、画商を通じて流出したものと思われます 。

「秘蔵 浮世絵大観ー大英博物館 」の中で、大英博物館蔵のものについてアメリカの

美術史家ロバート シンガー氏がその成立年代などについて短い解説を載せています 。

それによりますと、津島天王祭屏風は1881年 ( 明治14年 )大英博物館に収まったとのこと 。

同じタイプのものにアメリカ ボストンの個人蔵のものがあるといいます。

「 図中の景物から判断される景観年代はボストンのものより大英博物館本の方が若干 古く

寛文頃の制作になるものであろう 。… ともあれ本品は、一双が揃ったものとしては、最も

古く、津島神社祭礼図の代表作として挙げるに足る作品である 。

「 図中の景物 」 について詳しい説明はありませんが、シンガー氏の説では江戸時代初期

の寛文年間 ( 1661 〜 1673 )ということになります 。

津島市文化財専門委員の樋田 豊氏の小論文もこのシンガー氏の研究がもとになっている

ことがわかりました 。

いずれにしても 、津島天王祭を描いた屏風絵八点の中でも最も古い例で江戸時代の優れた

風俗画には違いありません 。

尚、「 秘蔵 浮世絵大観 ー 大英博物館 1 」の中で大英博物館日本美術部長のローレンス

スミス氏は 「蒐集の基礎となったのは、1881年に購入したウイリアム アンダーソンの

日本絵画コレクション」からとして、その中に浮世絵版画だけではなく、「 津島祭礼図

屏風 」などの肉筆浮世絵も含まれていたと言っています。

アンダーソン氏はスコットランドの医師で1853年 ( 明治6 )、医学校設立についての

助言を乞われて来日 。浮世絵版画を中心に蒐集、1881年、約三千五百点の日本絵画を

博物館に譲渡したそうです。 つづく


写真は「 綴プロジェクト 」高精細複製品より
大英博物館蔵 平成30年に愛知県の津島市と愛西市に共有で寄贈された 。




絵の中のこの人物はどういう職業なのでしょうね?
髷はありませんが、お供を連れて案内されています。(遅足)


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