昭和50年代、愛知県津島市文化財専門委員の樋田 豊 氏 ( 故人 ) が津島祭礼
屏風八点について比較研究したもとは、アメリカの美術史家ロバート シンガー
氏の研究によるものであることがわかりました 。
そのロバート シンガー氏の研究論文が京都大学文学部の図書館にあることを知り、
お願いしたところ、閲覧を許されました 。
1986( 昭和61年 )「 国際交流美術史研究会 」主催のシンポジウムでシンガー氏が
「 東洋美術における風俗表現 」と題して発表した中に 「 祭礼風俗図について
〜 津島祭礼図を中心に 〜 」がありました 。
ロバート シンガー氏は 1947年生まれ、京大の研究員を経てロサンゼルスのカウン
ティ美術館の初代 館長 ( 「20世紀西洋美術人名事典 」インターネット )
シンガー氏は津島天王祭屏風 の現在、確認されている八点について比較研究して
います 。
彼は実物を一番多く見ているものと思われ、構図法によって三つのタイプに分けて
整理しています 。
それによりますと、
( A )Aの四点は 右隻( 対になっているものの右 )に十四日の宵祭り、左隻に十五日の
朝祭り 。右隻にのみ天王橋を描く 。( 大英博物館蔵の屏風絵はこのA 類に属する )
( B )B の三点はAとは逆で、右隻に朝祭り、左隻に宵祭り 。両隻に天王橋を描く 。
( C )Cの一点 ( 徳川美術館蔵 )はA、Bと異なり、左隻に宵祭りと朝祭り様子を同時に
描く。 右隻にのみ天王橋を描く 。
シンガー氏はこの三つのタイプを比べて
「 A ( 大英博物館蔵など四点 )が最初で、江戸初期から中期までの作 、Bがそれに
次いで江戸中期から後期まで、そして最後にCは江戸後半期と思われる 。」
としています 。 つづく
写真は、「 津島祭礼図屏風 」大英博物館蔵
「 綴プロジェクト 」高精細複製品より
「 宵祭り 」の津島5か村側に描かれている女歌舞伎 。
江戸時代の初期肉筆画を代表する風俗画といえば、「 彦根屏風 」が挙げられ
ますが、そこに描かれている見事な遊女の姿にも通じる描写力です 。
女歌舞伎は江戸初期の寛永6年 ( 1629 )に禁止されています 。
「 彦根屏風 」は禁止されつつある情景を追慕して描かれたと言われていますが、
「 津島祭礼図屏風 」は禁止されたのを追慕して描かれてたのかもしれません 。