575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

菊紅し

2020年10月03日 | Weblog


中村汀女<なかむらていじょ> 明治33年 熊本の裕福な
家庭の生まれ。本名は斉藤破魔子。星野立子、橋本多
佳子、三橋鷹子と並び「4T」といわれました。熊本高
等女学校の汀女は英文学を専攻する才女。近くにある
熊本大の男子学生たちの話題となり、付け文を送られ
たといわれています。18歳の汀女が詠んだ句。

「吾に返り 見直す隅に 寒菊紅し」<汀女>

女学校を卒業後、熊本日日新聞に投句。俳句への研鑽
を続けます。結婚後、しばらくの期間を経て、総合文
芸誌「ホトトギス」に初投句。度々、入選したことか
ら同人となり、高浜虚子より俳句を学ぶ機会を得ます。
汀女の息子は尾崎士郎の娘と結婚。長女の「小川濤美
子」<おがわなみこ>も、後年、ホトトギスの同人とな
ります。

汀女は、女性の暮らしを率直に詠んだ句が多く「台所
俳句」といわれました。「女性の職場は家庭。仕事の
中心は台所である。描写が台所になることはきわめて
自然である」と汀女は語っています。台所俳句という
どこか卑下したような呼称に汀女は毅然としています。
ちなみに、汀女の「春雪」と高浜虚子の娘である星野
立子の「鎌倉」は姉妹句集とされています。

「秋雨の 瓦斯が飛びつく 燐寸かな」<汀女>

汀女の熊本の生家近くにある「江津湖」の湖畔には熊
本近代文学館があり、汀女や夏目漱石、徳富蘆花、小
泉八雲など、熊本にゆかりのある作家や文学者の資料
が展示されています。数年前、江津湖に訪れたのは初
夏。熊大の漕艇の水しぶきが眩しく輝いていました。

「浮き草の 寄する汀や 阿蘇は雪」<汀女>

中村汀女。和菓子好きの女流俳人。享年88歳。

写真と文<殿>

コメント
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