575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

「聖書と俳句」

2020年10月31日 | Weblog



稲畑汀子<いなはたていこ> 1931年横浜生
まれ。幼少期は鎌倉で過ごし祖父である高
浜虚子より俳句を学びます。聖心女子の専
攻科を病いにより中退したことを機に、虚
子の秘書のような仕事を始め、俳人として
の道を歩み始めます。

1979年に「ホトトギス」の主宰を父親で俳
人「高濱利尾」<たかはまとしお>をより継
承。1987年、日本伝統俳句協会を設立し会
長に就任。「ホトトギス」の主宰を「稲畑廣
太郎」<いなはたこうたろう>に譲ります。ち
なみに、廣太郎は汀子の息子で虚子の曾孫に
あたります。

汀子は虚子より幼少より俳句を学んでいます。
しかし、虚子の指導法はいつも漠然と褒める
のみ。結局、作句に近道はなく、感性を磨き
自らの力で道を切り開くしかないようです。

汀子は敬虔なカトリック信徒。あくまで私見
ですが、聖書や福音書の影響を受けたと思わ
れる視点が散見される気がします。また、世
界的な自然保護活動にも従事していたことか
ら、日本の自然風土に捉われない俳句を国際
俳句シンポジュウなどで提唱しています。

「神みそな はせたまへとて 風薫る」<汀子>

現在、89歳となった汀子の居宅は、芦屋の平
田町にある「稲畑邸」。75年の時を経た重厚
な洋館で「虚子記念文学館」に隣接していま
す。敗戦後にカトリックの教会となり古い祭
壇が残されています。

「咲き満ちし 花に祈りの 深かりし」<汀子>

「虚子記念文学館」阪神芦屋駅から徒歩15分。
眼前には芦屋の海が望めます。汀子は幼い頃
過ごした鎌倉の海を思い出すのでしょうか。


写真と文<殿>





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「心のさざ波」

2020年10月31日 | Weblog



宇田喜代子<うだきよこ> 1935年山口県生
まれ。武庫川の短大を卒業後、子規に師事
した石井露月<いしいろげつ>の門下生より
俳句を学びます。前田正治<まえだまさはる>
が主宰する「獅林」に入会。1970年「草苑」
の創刊に参加したこと機に「日野草城」<ひ
のそうじょう>の弟子「桂信子」<かつらの
ぶこ>に師事します。正岡子規の研究で知ら
れる「坪内稔典」<つぼうちとしのり>編集
の「現代俳句」の同人となり、1981年には
「未定」に参加するなど、当時の著名人たち
との交流を通しオリジナリティーあふれる作
風を確立していきます。

喜代子は、2002年紫綬褒章を受賞。2014
年には現代俳句大賞を受賞。2016年には日
本芸術院賞を受賞するなど、その功績は国
際的にも高く賞賛されています。

「深呼吸 止めると この秋も終る」<喜代子>

喜代子は「獅林」で俳句の基本を学び「草
苑」で新興俳句に親しんでいます。そうし
たことを背景に、古典的な俳句と前衛的な
俳句を自由に詠みあげる翼を得た気がしま
す。ちなみに、日本の伝統的な農事や歳時
への造詣も深く俳句の題材として多く取り
上げています。

宇田喜代子。現在85歳。喜代子は作句の心
得を述べています。「身の回りの自然の変化
を見つめます。すると心が動きます。このさ
さやかな心のさざ波を文字で表します」

「秋の風 石に目鼻の 見えはじむ」<喜代子>


写真と文<殿>
コメント (1)
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