辻桃子<つじももこ>1945年神奈川県横浜生まれ。
子ども時代から文学に興味を持ち詩作に没頭して
います。しかし、画家の父親から学んだ描写力を
活かし早稲田大学の美術学部に入学。大学1年の時
に母親の影響で俳句を始め、俳人で随筆家の楠本
憲吉に師事することになります。
余談となりますが、友人のデザインスタジオが赤坂
で、彼の隣のマンションに楠本憲吉の仕事場があり
ました。友人は顔見知りらしく書籍などの貸し借り
をしていましたが、氏の部屋には昼夜を問わずあか
りが灯り執筆業の厳しさを垣間見た気がします。い
ま思えば、俳句の話などお伺いしておけばと悔やま
れます。
「虫鳴いて 裏町の闇 やはらかし」<憲吉>
話を桃子に戻します。桃子は憲吉の主宰する「野の
会」の同人となり1967年に大学を中退。染色の仕事
で糊口を凌ぎながら「花椿」「現代詩手帳」などに
詩の掲載を続けます。やがて、金子兜太らと前衛俳
句を提唱していた高柳重信の「俳句評論」の競作に
入選。金子兜太の主宰する「海程」に入会したこと
を機に、1975年から本格的に俳諧師としての活動を
スタートします。
「右ブーツ 左ブーツに もたれをり」<桃子>
1979年に水原秋桜子に師事した藤田湘子の「鷹」に
入会。編集部員を経て同人となります。1983年に鷹
賞を受賞。「虚子の忌の大浴場に泳ぐなり」が高浜虚
子の弟子であった波多野爽波に評価され、広く知られ
るようになります。1987年「鷹」を辞し「童子」を
創刊し自らが主宰者となります。
「うららやかや カレーを積んで 宇宙船」<桃子>
2003年に句集「饑童子」<ひだるどうじ>で俳諧評論
で知られる加藤郁乎賞を受賞。「桃」「雪童子」「津
軽」など句集の他に、エッセイや歳時記、そして人気
のハウツー本など精力的な執筆活動を続けています。
変わったところでは、大学時代から現代舞踊のシナリ
オの執筆を続けていて「唐人お吉の場合」は芸術祭賞
を受賞しています。
「小祠の 切子硝子や 春立てる」<桃子>
辻桃子<つじももこ> 現在76歳。著作「あなたの俳句
はなぜ佳作どまりなのか」新潮社刊は必見。わかりや
すく楽しい俳句を提唱するトップランナーといった感。
*パソコン閲覧用に作成しています。スマホ・タブレッ
トでは表記が異なる場合があります。
写真と文<殿>