日本男道記

ある日本男子の生き様

長屋の花見

2007年09月13日 | 私の好きな落語
【まくら】
この噺は大阪での噺「貧乏花見」を明治時代に焼き直したものである。

【あらすじ】
家賃も払えない様な貧乏店子を連れて、上野の山に大家が酒肴付きで花見に連れて行くという。
みんなは大喜びで付いて行くというので、大家が酒肴の説明をすると、
大家「ラベルが違うが1升瓶の中身は皆同じで、”煮出した番茶”で水で割ったがいい色をしているだろう」
店子 「えぇ?! みんなどうする。おちゃけだそ ~だよ」
店子 「肴を聞いて本物なら・・」
大家 「肴が本物なら酒に回すよ」
店子 「ところで、卵焼きにかまぼこは?」
大家「ご覧の通り、”たくあん”は黄色いところで卵焼き、”大根のこうこ”は月形に切ってあるところからかまぼこ、だな」
店子 「しょうがないから行くか」。
大家 「月番は幹事になって働いてもらうよ」
店子 「幹事は胸に何か付ける物はないのですか」
大家 「サイダーの口金が有るがどうだ」
店子 「子供でも有るまいし」
大家 「出かけるから、そこの毛氈を持っておくれ」
店子 「毛氈って、もしかしてこの”むしろ”」
店子 「これじゃ~、ともらいだ」
大家 「さ~、出かけるぞ。私の音頭で景気良く『さ~、花見だ、花見だ!』」
店子 「夜逃げだ、夜逃げだ!」。
    ワイワイ、ガヤガヤ言いながらすり鉢山に着いた。
大家 「枝振りの良い下に毛氈を広げて、陣を取ろう・・」
店子 「この枝はイイ。丈夫で5人ぐらいいっぺんに首をくくっても平気ですよ」
大家 「山の上の方が見晴らしがいいのに、何で山の下なのだ」
店子「上で宴会をやっている連中が何かを落とすと、転がって来るので拾いやすい」
大家 「何で毛氈を細長くひくのだ」
店子 「みんなで頭を下げれば”乞食”が出来る」
大家 「今日はご馳走になったと思うと気が詰まるだろうから、無礼講でやれ」
店子 「・・・」
店子「しょうがないから注いでくれ。ちょっとで良いから。おいおい、そんなに押さえつけて注ぐやつがあるか、うっ! おぼえてろ」
店子 「次はおまえだ」
店子「そっくりな色をしているのだがな~、お茶からアルコール成分が取れる訳はないよな。(まずくて)ブッ~」
店子「大家さん、みんなで飲まなくてはいけないんですよね。予防注射みたいに。」
大家 「変な言い方はおやめ。ところで、おまえは飲んでいないな。」
店子 「はい、私は下戸ですから」
大家 「だったら、何かお摘み」
店子「その白いかまぼこ。私はこれが好きで毎朝おつけの身にしています。千六本に刻んでいいですよ。また、胃の悪い時はかまぼこおろしにして・・。最近は練馬のかまぼこ畑も少なくなって、どちらかというと葉のほうが好きなんですよ」
店子 「俺もかまぼこ食うぞ!・・・うっ、(すっぱい)付けすぎだ」
店子 「(大声で)大家さん、卵焼き取ってください」
大家 「回りの者がこっちを向いたぞ」
店子 「う~ん、しっぽで無いところ」
大家 「ところで、誰も酔わないな。おまえ、酔いな」
店子 「恩返しのつもりで、(台詞調で)酔った」
店子 「それじゃだめだよ。『さ~酔った!』」
大家 「ずいぶん早いな」
店子 「酔うのも早いが、醒めるのも早い」
大家 「嬉しいな、おまえだけが酔ってくれた。吟味した灘の生一本だぞ」
店子 「宇治かと思った」
店子「こぼしても惜しくはない。 ・・ん!大家さん近々長屋に良い事がありますよ」
大家 「どうして?」
店子 「酒柱が立っている !」。

出典: 落語の舞台を歩く

【オチ・サゲ】
逆さ落ち(物事や立場が入れ替わるもの )

【語句豆辞典】
【長屋】通りに面しているのが表長屋、木戸内にあるのが裏長屋。噺に登場するのは後者であり、別名裏店(うらだな)という。
【月番】江戸時代、同じ大家が管理する長屋では店子(たなこ)が順番に月番となり、大家との交渉、吉凶慶弔をはじめ、各種の雑事を処理した。

【噺の中の川柳・譬(たとえ)】
『銭湯で上野の桜(はな)の噂かな』
『長屋中歯をくいしばる花見かな』
『佃育ちの白魚でさえも花に浮かれて隅田川』

【この噺を得意とした落語家】
・八代目 三遊亭可楽
・三代目 三遊亭金馬
・五代目 柳家小さん
・五代目 三遊亭圓楽

【落語豆知識】 追い出し
1.終演の太鼓 2.終演
 




Daily Vocabulary(2007/09/13)

2007年09月13日 | Daily Vocabulary
4551.high-handed(高圧的な、強圧的な、高飛車な、強引な、横暴な)
I think the problem is pur high-ended manager.
4552.exemplary(他の模範となる、称賛すべき)
She was an exemplary employee and won several awards.
4553.cross out(線を引いて消す、削除する、カットする)
He crossed out the people on the list he wanted fired.
4554.politically incorrect(政治家が使う言葉として不適切な、不公正な、道徳的に不正な、差別的な)
The proofreader first crossed out one phrase because she thought it might be politically incorrect.
4555.arbitrary(自由裁量による、気ままな、気まぐれの、勝手な)
He now has plenty of arbitrary income to spend for traveling all over the world.
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