日本男道記

ある日本男子の生き様

禁酒番屋

2008年12月07日 | 私の好きな落語
【まくら】
汚い噺の一つだが、結構客はこの手の噺が好きだ。
その物が目に見えないという話芸の性質がいい形で出た噺。
聞き所は何とか目先を変えて、禁止されている酒を届けようとする酒屋の面々が、どうしてもばれて飲まれてしまうの、逆手を取り飲まれるために小便を持ち込むところ。

【あらすじ】
きっかけは、とある武家の家中の事件。
『月見の宴』というものの最中、泥酔した二人のお侍がチャンバラを始め、一人がもう片方をバッサリ。
斬った方はそのまま帰って酔いつぶれ寝込んでしまったが、翌朝目覚めて我に返るや、「主君に申し訳ない」とこちらも切腹をしてしまった。
その話を聞いた主君、「酒が災いしての無益な斬り合い、何とも嘆かわしい事じゃ。今後、わが藩では藩士が酒を飲む事を禁ずる。余も飲まぬからみなも飲むな」。
殿様自ら『余も飲まぬ』とのお達しがあれば、藩士一同否応なく禁酒するしかない。
こうして家中一党禁酒、となったが……何しろものが酒である。そう簡単にやめられるわけがない。なかなか禁令が行き届かず、隠れてチビリチビリやる者が続出。
また騒動になることを恐れた重役が会議をした結果、屋敷の門に番屋を設け、出入りの商人の持ち込む物まで厳しく取り締まる事になった。人呼んで「禁酒番屋」。
番屋ができてしばしのち……
家中の侍でも大酒飲みの筆頭である近藤、酒屋にやって来てグイッと一気に三升。『禁酒なんど糞くらえ』で、すっかりいい心持ち。
「いい酒であった。小屋でも飲みたいから、今晩中に一升届けてくれ」
つっと帰ってしまった。太い奴もいたものである。
もとより上得意、亭主も無下には断れないが、近藤の長屋は武家屋敷の門内、配達が露見すれば酒屋は営業停止もの。しかも入口には例の「禁酒番屋」が控えている。どうやれば突破できるのか……
亭主が頭を抱えていると、小僧の定吉、恐る恐る手を上げる。
「正直に酒徳利を持って関所を通ろうとしたら止められます。菓子屋の梅月堂で南蛮菓子のカステラを売り出したとか。そいつに見せかけたらどうです」
もとよりお菓子は御法度の外である。酒屋ではカステラを買ってきて中身を抜き、五合徳利を二本、菓子折りに詰めてきれいに包装する。定吉、菓子屋の小僧に衣装を借りて禁酒番屋へ……
「お頼み申します」
「通れ……そのほうは何じゃ?」
「向こう横丁の菓子屋です。近藤様に、カステラのお届け」
近藤は家中屈指のウワバミ、そこに菓子屋からカステラ……あ奴いつ甘党になった、おかしい、と指摘する番人もいたが、『進物の菓子』を止める理由もない。「よし、通れ」ということになった、ところまでは良かったが……
「有難うございます……ドッコイショ!」
「待てい!! 菓子折り一つで『どっこいしょ』とは何だ!?」
抗議の声も聞かばこそ、折りを改められて「この徳利は何じゃ?」。
「えー、それはその、先ごろ出ました、『水カステラ』という新製品で……」
「たわけたことを申すな! そこに控えおれ。中身を改める」
一升すっかり飲まれてしまった。
「かようなカステラがあるか。この偽り者!!」
飲まれて追い出され、見事に失敗。
カステラで失敗したので、今度は油だとごまかそうとしたが、これも失敗。
酒屋から酒を巻き上げた番屋の藩士、もとより酒は嫌いでない。「次はどうやって来るだろう」と待ち構えているから酷い話で……
都合二升もただでのまれ、酒屋の一同は怒り心頭。
店の若い衆、「この際突破は諦めて、仕返ししてやりましょうや」
「どうする」「番屋の連中に小便を飲ませます」
「小便?飲むか!?」「初めから『小便です』と言えばいい。嘘はついてないでしょう」
話は決まった。店の一同、大徳利を取り囲んでジャァジャァ……
「お頼み申します!」
「とォ~れェィ!」
番人たち、もうベロベロに酔っていて、何を言ってるんだがわからない。
「向こう横丁の植木屋でございます、近藤様が植木の肥やしにする……との事で、『小便』のご注文で……」
内心『また呑める!』とほくそ笑む番人、「馬鹿ァ!! 出せ!!」と徳利を供出させる。
「おお、これはまた、ヒック……ぬる燗がついておるな……まったくけしからん……小便などと偽って……」
徳利の中身を湯飲みに注ぐ。
「……だいぶ黄色い……古酒だな。それも、またよし……まったく、けしからんな……」
おもむろに一口……ぶーっと吹き出す。
「ウグッ!? これは小便ではないか! 何とけしからん奴だ!! かような物を持参しおって!」
「ですから、初めに小便と申し上げました」
「うーん……あの、ここな……正直者めが」

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

【オチ・サゲ】
ぶっつけ落ち(おたがいに相手の言っていることが通じないで、食い違ったままで落ちになるもの)

【噺の中の川柳・譬(たとえ)】
『酒は百薬の長』

【語句豆辞典】
【番屋】番人のいる小屋。番所。

【この噺を得意とした落語家】
・五代目 柳家 小さん
・十代目 桂文治 

【落語豆知識】
【天狗連(てんぐれん)】素人芸人を指す。

 



Daily Vocabulary(2008/12/07)

2008年12月07日 | Daily Vocabulary
6731.trek(徒歩で・苦労して旅行する)
Many thanks for trekking all the way here today.
6732.all the way(はるばる、遠いところ、わざわざ)
This is what I ordered all the wayfrom Japan.
6733.follow up on (徹底的に~を追究する、~を実行に移す)
I'm very interested in following up on the swiching-device issue.
6734.move up(予定を繰り上げる、前倒しする、出世する)
He is planning to move up again to another position.
6735.imperative(必須の、急を要する)
It's imperative that we move up the shipping schedule.
今日の英語ニュースを聞こう!NHK WORLD Daily News

iタウンページ