インターセックス帚木 蓬生集英社このアイテムの詳細を見る |
【一口紹介】
◆出版社からの内容紹介◆
性の尊厳を巡る書き下ろし医学サスペンス
「ひとは男女である前に人間だ」
インターセックス(男女どちらでもない性器官をもっていること)の人々の魂の叫び。
高度医療の聖地のような病院を舞台に、医療の錯誤と人間の尊厳を問う書き下ろし長編。
◆「BOOK」データベースより◆
生殖と移植では「神の手を持つ名医」と評判の岸川卓也院長が率いる、贅沢な施設と高度な医療を誇るサンビーチ病院。
泌尿婦人科医の秋野翔子は岸川に請われてこの病院に勤務することになった。
そこでは性同一性障害やインターセックスの患者たちへの性転換手術やさまざまな治療が行われていた。
翔子は「人は男女である前に人間だ」と主張し、人知れず悩み、絶望の淵にいた患者達のために奔走する。
やがて翔子は、彼女に理解を示す岸川の周辺に不可解な変死が続いていることに気づく…。
神が創り出した少数派の人間たちの魂の叫び、身体と魂の尊厳。医学の錯誤を見据える世界初テーマに挑む、衝撃と感動のサスペンス大作。
【読んだ理由】
帚木 蓬生作品
【印象に残った一行】
先生がいつか言われたように、この世にいるのはまず人間であって、男と女ではないのです。男と女は便宜上の色分けであり、画然と区別されるものではありません。色分けもできない中間の色の部分があっても何らおかしくないのです。それは人間の肌の色と同じでしょう。人の皮膚色が、黒と白しか認められないのであれば、ぼくら黄色人種は、どちらかに強制的に近づけるため、何度も皮膚をはがされたり、肌を染色したり脱色されなければなりません。そうした理不尽なことを、医学と医療はインターセックスの人々に強いてきたといえます。
要するに、人間の知性は<偶然>を受け入れられないのだ。すべてに因果関係を求めるこの傾向こそが、ヒトをその他の動物から抜きん出させた原因とさえ言える。
インターセックスの患者たちも、初めは例外なくこの、偶然に戸惑う。確かに遺伝子の組み合わせの妙によってある種のインターセックスは生じるが、その組み合わせとて、<偶然>に過ぎない。
しかし、患者とその家族は偶然を偶然として放置できずに、母親の何らかの過誤が、あるいは何かに対する<天罰。とえいて受け取りやすい。
わたしは人と人との関係で気が滅入ったとき、よく樹木を見上げます。松ノ木でも杉の木でもあるいは樫の大木でもいいです。どれひとつとして同じ形の木はありません。それぞれが独自の形をしています。もし同じ形の木があったとしたら、それは人間が勝手に手を加えたものです。
横に這ったまつ、上に伸びた松、曲がりくねった松。斜めにかしいだ松、そのどれもどれもが松ノ木であることは変わりがありません。人間それでいいと思うのです。斜めになった松を真直ぐに立てる必要もなければ、高く伸びた木を縮める必要もありません。ありのままで、育っていっていいはずなのです。
【コメント】
「インターセックス」というのは、
『古くは半陰陽、両性具有と称されたが、外性器の形状や生殖器、染色体が曖昧で
男女の一方に分類できない人々。広義に見ると100人に一人の出生頻度で出現する。』と帯に書かれています。
私も知らない世界でショックを感じる部分もあったが、一気に読ませる。
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