![]() | 牛を屠る (シリーズ向う岸からの世界史)佐川 光晴解放出版社このアイテムの詳細を見る |
【一口紹介】
◆内容紹介◆
大学卒業後に務めた出版社を退社後、埼玉の食肉会社に入社した著者は、翌日から牛豚の解体を生業に働きはじめる。入社初日から「ここはお前なんかの来るところじゃねえっ!」と怒鳴られたものの、しだいにナイフ捌きをおぼえ、牛の皮剥きに熟達していく。牛を屠る喜びと、屠りの技術を後輩に伝えるまでの屠場での十年の日々。
「職業を選ぶ」「働き続ける」とは、自分の人生にとってどういうことなのか――。
屠畜解体従事者への世間の恥知らずな差別と偏見はあろうと「牛を屠る」仕事は続けるに値する仕事だー―。これから世の中に出て行こうとする若い人たちに向けて、著者最初の小説作品である『生活の設計』以来、一度も書かれなかった屠場仲間の生きざま、差別をめぐる闘い、両親・家族をめぐる葛藤をまじえて描く。芥川賞候補作家による渾身の書き下ろし。
◆内容(「BOOK」データベースより)◆
「ここはおめえみたいな奴の来る所じゃねえっ!」怒鳴られた初日そして…牛の上にも十年。牛を屠って働く悦びを、著者は得た。屠畜場イラスト付(巻末)。
【読んだ理由】
読売新聞(2/14)に紹介記事。
【印象に残った一行】
しかし、これまで書いてきたことからも明らかなように、場とは日々搬入されてくる牛や豚を解体する場所である。そこでは働く我々に求められるのは体調を整えて過酷な労働に耐えること、先輩から受け継いだ技術を後輩に伝えていくことである。具体的には、手を抜かずナイフを研いで、大怪我することなく解体作業を行い、家に帰ったあとは明日に備えて早くに眠る。
われわれにとってはナイフの切れ味がすべてであり、切れ味を保つためにいかにしてヤスリを掛けるのかの一点に心血が注がれる。
そうは言っても、毎日百頭を超える牛を枝肉へと変えてゆく作業は、独特の負担を心身に与えて、気持ちが弱ったときは無残な想像を呼び起こした。
【コメント】
美味しい肉を日々食しているが、今まで場に、の瞬間に思いを馳せたことはない。
衝撃であった。

