<ドイツと中国の研究チームによって、気候や地形といった環境障壁をもとに人類の移動ルートが変化するのかどうか、シミュレーションが行われた>
人類は、12万5000年前から1万2000年前までの後期更新世に、アフリカ大陸からユーラシア大陸へ広く拡散していったと考えられている。
その経路については、インドから東南アジアを経由してシベリアまで北上する「南ルート」が有力視されてきた一方、アルタイ山脈やゴビ砂漠を通る中央アジアから北アジアの「北ルート」はこれまであまり注目されてこなかった。しかしこのほど、「北ルート」が人類の拡散にとって重要な経路のひとつであった可能性を示すシミュレーション結果が明らかとなった。
最小コスト経路分析によるシミュレーション
独マックス・プランク研究所と中国科学院古脊椎動物・古人類研究所の共同研究チームは、氷河時代の氷期と間氷期における気象記録や地理的特徴を盛り込んだ地理情報システム(GIS)を開発し、最小コスト経路分析によって、気候や地形といった環境障壁をもとに人類の移動ルートが変化するのかどうか、シミュレーションを行った。
その結果、氷期には砂漠地帯を避けて北側に弧を描く進路を選ばざるを得ない一方、間氷期は、ゴビ砂漠を横断するものを含め、いくつかの経路がありうることが示された。一連の研究成果は、2019年5月29日、オープンアクセスジャーナル「プロスワン」で公開されている。 引用元。