この町を東西に流れる川がある。
東は、奥吉野の、山々から流れくる水を集めた吉野川で、西は県境を越えると紀ノ川になる。
朝の冷え込みの強い日は、雨戸を開けると吉野川に沿って、帯のような霧が目に飛び込んでくる。
もっと早い時間には、町全体が霧のベール包まれて太陽もベールの向こうに、朧な姿である。
この、朧な太陽が、川面を温めて町が霧に覆われるのだ。
霧は、山の手の方から消えて行き、やがて、川筋に沿った帯のようになる。
こんな日は、快晴が期待できる。
寒いなあと思いながらも、雨戸を開けて、朧な太陽を見る時、わくわくする瞬間である。