孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

香港 12年直接選挙を求めて民主派議員辞職  台湾 PAC3売却をめぐる米中のせめぎあい

2010-01-12 22:01:44 | 国際情勢

(今年元旦に行われた、香港の普通選挙12年実施を求めるデモ “flickr”より By chong head
http://www.flickr.com/photos/23553050@N00/4233713738/)

【直接選挙先送り】
中国にありながら「一国二制度」ということで独自の政治形態が維持されている香港ですが、12月22日ブログ“「一国二制度」の形骸化進むマカオ 直接選挙実施目指す香港”
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20091222)でも触れたように、行政長官選挙の投票権は各種業界や団体の代表800人で作る選挙委員会に限られ、また、立法会(議会)は定数60のうち半数が各種業界や団体の代表枠となっており、中国の意向を反映した人選がなされています。
香港の憲法に当たる基本法は全面的な直接選挙の実施を明記していますが、時期に定めがありません。
中国のコントロールに反発する“民主派”は行政長官及び立法会議員の直接選挙について、12年実施を求めています。

07年12月の中国全国人民代表大会(全人代)常務委員会は、香港行政長官(任期5年)の直接選挙について、香港側が要請していた12年の実施は認めず、17年には可能とする決定を出しています。立法会については触れていません。
これを受ける形で、香港特別行政区政府は昨年11月、12年の両選挙で行政長官を選ぶ選挙委員の増員、立法会の直接選挙と職能代表の両枠での定数増などを含む制度改革案を発表しています。

【民主派の反発】
しかし、12年の直接選挙実施を求める香港の民主派は、この「先送り」に強く反発しています。
1月1日には、行政長官と立法会の両選挙の全面的な普通選挙実施と中国の反体制作家、劉暁波氏の釈放などを求める民主派の大規模デモ(主催者発表で約3万人が参加)が行われました。

****香港の民主派政党、全5選挙区の議員辞職へ*****
香港立法会(議会)の民主派政党は11日、今月27日付で全5選挙区の議員を辞職させると発表した。
5選挙区で補欠選挙の一斉投票に持ち込むのが狙い。民主派は、2012年の行政長官選と立法会選の実施方法を定める香港政府の選挙制度改革案に「全面的な直接選挙への道筋が示されていない」と反発しており、補選を全面的な直接選挙導入の是非を問う、事実上の住民投票と位置づける構えだ。
香港の選挙制度は、直接選挙枠と、業界団体が選出する職能代表枠に分かれている。民主派の計画では、直接選挙枠の5選挙区で各1人ずつが辞職する。
ただ、補選で民主派が勝っても、選挙制度改革への効果は未知数。また、急進的な民主化の動きを警戒する中国政府との関係が決定的に悪化する懸念もあり、民主派の間にも今回の計画に慎重な意見が出ている。【1月12日 読売】
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相当に思い切った対応です。
香港でも中国の影響力・存在感が増しており、先の立法会選挙でも民主派は、大物議員引退もあって苦戦が予想されていました。結果的には、なんとか踏みとどまった形ですが、今回の賭けがどうでるか。
また、こうした“民主派”の動きに対し、中国がどこまで直接的な干渉を控えるのか注目されます。

【中国「断固たる反対」】
将来の“香港”になるのか、ならないのか・・・台湾の馬英九政権は中国との関係強化による経済浮揚を推し進めていますが、対中国防衛計画については、従来同様の強化を図っています。
台湾との合意履行に向けて、米国防総省は11日までに、08年にブッシュ前政権が決定した台湾への地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)売却に向け、ロッキード・マーチン社に発注しました。
これに対し、中国が猛反発しています。

****台湾向け米武器売却、中国が異例の猛反発****
オバマ政権が台湾向け武器売却の動きを進めていることについて、中国の胡錦濤政権は7日~9日の3日間で計5回にわたって「断固たる反対」を表明するなど異例の猛反発を見せている。
国防省は8日、「中国の核心的利益を尊重し、武器売却を撤回するよう」米国側に要求。その上で、「さらなる措置をとる権利を留保する」としており、昨秋本格的に再開したばかりの軍事交流を停止するなどの報復措置をとる構えだ。
中国は2008年の計画決定時に猛反発し、軍事交流を停止した経緯がある。
米国担当の何亜非・外務次官も9日、新華社通信を通じ、「オバマ政権発足以来続く、米中関係の安定した発展を維持していくのは容易でない」とクギを刺した。
一方、台湾の馬英九政権は、武器売却がブッシュ政権の決定通り履行されることに安堵している模様だ。【1月11日 読売】
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こうした動きを背景に、中国は地上配備型のミサイル迎撃技術の実験に成功したことを公式に認めています。
****中国:ミサイル迎撃実験の成功、公式に認める****
中国外務省は12日、中国が地上配備型のミサイル迎撃技術の実験に成功したことを公式に認めた。米国が台湾に地対空誘導弾パトリオット(PAC3)売却を決めたことをけん制する狙いがありそうだ。
中国が最新兵器の実験実施を公表するのは異例。中国国営・新華社通信も11日夜、ミサイル迎撃実験が「所期の目標を達成した」と報道し、ミサイル迎撃能力を誇示した。中国外務省の姜瑜副報道局長は12日の定例会見で「実験は防衛のためのものであり、いかなる国にも向けられていない」と述べた。【1月12日 毎日】
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アメリカにしても、中国にしても、相手を怒らせることは承知で、出方を窺いながらカードを切る・・・その外交の厳しさは日本などの全く及ばないところです。

【危険なカード】ついで、もうひとつ。
****イスラエルの武器備蓄倍増へ=イランに軍事圧力か-米国防総省****
米国防総省が、イスラエルに備蓄している米軍の武器や弾薬の備蓄量を倍増する計画を進めていることが12日までに分かった。AFP通信などが報じた。核開発問題でイランに軍事的圧力を掛ける狙いがあるとみられる。
備蓄の規模を4億ドル(約370億円)から8億ドル(約740億円)相当に倍増させる。イスラエルでの備蓄は協定に基づき1990年代から開始され、有事の際には米国の承認を得てイスラエル軍も使用できる。弾薬のほか装甲車やミサイルも保管されている。【1月12日 時事】
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これなども、ギリギリのカードですが、まかり間違うと暴発にも至る危険なカードにも思えます。

コメント
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