孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

映画「アバター」大ヒット 脛に傷ある中国・アメリカの反応 ロシアは・・・

2010-01-31 19:16:27 | 身辺雑記・その他

(“flickr”より By rxau
http://www.flickr.com/photos/a3696467/4082315400/in/set-72157622549368687/)

昨日から、タイ北部のチェンライを旅行中です。
こちらの衛星TVだかケーブルTVだかの英語放送を流していると(全く理解できませんので“流している”だけですが)、一番頻繁に取り上げられているのが、アメリカの台湾へのパトリオットなどの武器譲渡に関する米中関係の話題です。

今日は、それとは無関係に、映画「アバター」に関する米中、そしてロシアの反応の話題。
3Dで話題の「アバター」は、私はまだ見ていませんが、興奮のあまりの(?)死人まで出るほどの世界的大ヒットになっています。

【中国:住宅地の強制収用を連想させる】
面白いのは、この映画に対する各国の反応です。
先ず中国。
****中国で「アバター」上映縮小、「孔子」に切り替え*****
中国の国際問題専門紙「環球時報」(英語版)は21日、世界的に大ヒット中の米SF映画「アバター」の上映規模が中国で大幅縮小され、22日以降は国産映画「孔子」に切り替えられる、と報じた。
共産党が文化宣伝に利用する思想家・孔子を描く愛国的な国策映画を優先しようと、中国当局の意向が働いたとみられる。

中国で1月4日に上映が始まった「アバター」は、これまで5億元(約70億円)を超える興行収入を記録。計2500か所の映画館で2月末まで上映予定だった。しかし、当局に監督される映画配給各社は「客足が順調なのは3D(立体)版のみ」として、全体の3分の2に及ぶ通常版の21日上映打ち切りを決めたという。
同紙は「配給を突然変更するのは異例」とする配給会社幹部の見解を紹介。地方都市では3D版の上映がない映画館も多いため、不満を抱く市民がネットで「孔子ボイコット」を呼びかけた、と伝えている。

「アバター」は鉱物資源獲得を狙う地球人の侵略に異星人が抵抗するという物語。「中国各地で頻発する住宅地の強制収用を連想させ、反発をあおるのではないか、と当局が懸念している」という指摘も出ている。【1月21日 読売】
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アメリカ・インターネット検索大手グーグルが中国からの撤退検討を表明したため、「米国に対する仕返しではないか」との指摘もあるとか。【1月20日 共同より】

個人的に感心が持たれるのは、「アバター」公開中止になった理由よりも、差し替えられた映画「孔子」の方です。
文化大革命では否定された孔子の教えですが、現在の中国でどのような位置づけなのか?
モラルなき拝金主義が横行する現代中国社会にあって、孔子の説く礼節が尊重されるのであれば、大変喜ばしいことです。「アバター」など全部中止してもいいぐらい・・・と言うと、言い過ぎでしょうか。

以前、中国の映画産業における熾烈な競争を扱ったTV番組でも映画「孔子」は取り上げられていましたが、映画資本と結託した一部政府権力者の意向などもあるのでは・・・とも邪推されます。孔子の世界とは全く異なりますが。

【米:反米・反軍映画】
次にアメリカの反応。
****「アバターは反米・反軍映画」保守派いら立ち****
世界興行収入の記録を更新中の米映画「アバター」(ジェームズ・キャメロン監督)について、米国の保守層などから「反米、反軍の映画だ」といった批判が相次いでいる。
3D(立体)技術を駆使した娯楽大作が思わぬ論争を巻き起こした底流には、アフガニスタンやイラクでの長引く戦争に対する米国民の 厭戦 ( えんせん ) 気分と、それに対する保守派のいら立ちがある。

映画の舞台は22世紀の星パンドラ。希少鉱物を狙う人間たちは、美しい自然と共生する先住民ナヴィと戦う。元米海兵隊員ら軍服の人間は、圧倒的な軍事力で自然破壊をいとわない悪役として登場、「先制攻撃が必要だ」「衝撃と 畏怖 ( いふ ) を与える」などと、ブッシュ前政権の戦略そのままのセリフを口にする。
保守派の論客ジョン・ポドホレッツ氏は自身のサイトで「観客は米兵の敗北に声援を送るようになる。強烈な反米的内容だ」と非難。現役海兵隊員のブライアン・サラス大佐は隊員向け新聞に「軍の未熟さや凶暴さが異常に強調され、誤解を与える。ひどい仕打ちだ」と記した。
保守派らの反発には、長期化する戦争から民意が離れている現状への焦りが読み取れる。CBSテレビなどの昨年末の世論調査では、アフガニスタンでの戦況が「良くない」と感じる人は60%に達した。

◆教会からも
自然の中に神が宿るという、キリスト教などの一神教とは相いれない信仰をナヴィが持っている点にも批判が出ている。
保守派コラムニスト、ロス・ドーサット氏はニューヨーク・タイムズ紙で、「映画は、神と世界が同一という汎神論的な考えに共鳴するキャメロン監督の長い弁明」と指摘。カトリック教会の一部からも汎神論の思想が広まることへの懸念の声が出ている。

◆監督は反論
近年のハリウッドの大ヒット作は、ヒーローが活躍する単純な作品が多かった。これに対し、アバターが戦争、宗教、環境など米国の国論を二分するようなテーマを含んでいるのは事実だ。
映画の脚本も担当したキャメロン監督は、ロサンゼルス・タイムズ紙のインタビューで、「この映画は我々が戦っている戦争を反映している。兵士は不当に戦場に送られている。この映画で目覚めてほしい」と語り、ふたつの戦争に反対するメッセージを込めたことは認めた。一方で、米軍批判との指摘には、「心外だ。私の弟は海兵隊員だが、彼らを心から尊敬している」とテレビ番組で反論した。
同紙の映画評論家、ケネス・トゥーラン氏は、「かえって映画の宣伝になり、キャメロン監督の思うつぼではないか」と皮肉っている。【1月31日 読売】
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強権政治批判とか反戦思想とか、中国にしても、アメリカにしても、自分の脛の傷が気になるようです。

【露:舞台芸術に取って代わることはない】
そんな中で、格調高く論評しているのが、ロシアのメドベージェフ大統領です。
****メドベージェフ大統領「『アバター』はチェーホフの代わりにはなれない」****
ロシアで29日、作家のアントン・チェーホフ生誕150周年を祝うイベントが開かれ、読書家として知られるドミトリー・メドベージェフロシア大統領は、「(大ヒット映画)『アバター(Avatar)』は、チェーホフの代わりにはなれない」と語った。

チェーホフは1860年1月29日、ロシア南部の港湾都市タガンログに生まれた。生誕150周年を記念して同市を訪問したメドベージェフ大統領は、ロシアを代表する舞台演出家らとの会合に出席。この模様はテレビで中継された。
メドベージェフ大統領は、「新技術を駆使した『アバター』はとても美しく緻密で、高額な予算がつぎ込まれた映画だ。しかし、決して舞台芸術に取って代わることはない」と述べた。
メドベージェフ氏は、舞台芸術がロシアで重要な役割を果たしていると指摘し、「舞台芸術は多くの困難に見舞われているが、いまもなお不滅なのだ」と語った。ロシア国内には600もの劇場があり、毎年計3000万人が足を運んでいる。
また、メドベージェフ氏は、チェーホフのファンであることを告白。10代の初めに強い関心を持つようになり、チェーホフの全著作を読破したと語った。
メドベージェフ氏は、チェーホフの誕生日が、自らの人生について考えるきっかけになった様子で、「きょう、チェーホフの人生の長さについて考え、わたし自身のことも考えた。チェーホフは44歳で死去した。(44歳までに)チェーホフは不朽の作品群を生みだし、人生を完成させたのだ。そしてわたしも今、44歳なのだ」と語った。【1月30日 AFP】
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メドベージェフ大統領は、彼の写真がプーチン首相の絵より高値で売れたということでも先日話題になりましたが、なかなかの芸術愛好家のようです。
それにしても、メドベージェフ大統領は44歳の若さだったのですね・・・知りませんでした。
その若い感性を、日本との関係改善にも生かしてもらいたいものです。取り巻きの頭が硬そうですが。


コメント (1)
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