孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イランの不可解な事件  ビンラディンの娘保護と核科学者爆殺

2010-01-20 23:25:15 | 国際情勢

(1年前の09年1月 イラン・テヘランの街を埋め尽くした人々 “flickr”より By 27389271
http://www.flickr.com/photos/arasmus/3629513240/)

【テロリストの娘は何を語るか?】
アルカイダ指導者ウサマ・ビンラディンの行方は相変わらず不明ですが、彼の子供たちはイランで軟禁状態にあり、そのひとり、娘のイマン(17歳)がサウジアラビア大使館に保護を求めたとか。

****イランに現れたビンラディンの娘*****
09年11月、イランの首都テヘランにあるサウジアラビア大使館を17歳の少女が訪れた。
彼女の名はイマン・ビント・ウサマ・ビンラディン。国際テロ組織アルカイダの創設者ウサマ・ビンラディンの娘だ。イマンは01年にアフガニスタンからイランに逃れて以来、5人の兄弟姉妹と共にイラン国内の施設で軟禁状態に置かれていたと語り、大使館に保護を求めた。
問題の施設はアルカイダの幹部も訪れている。サウジアラビア当局者の一部が、03年に同国の首都リヤドで起こった爆弾テロの首謀者とみている面々だ。
それらの幹部やテロ計画についてイマンが何かを知っているとすれば、テヘランはアメリカのアルカイダ掃討計画の中心地に躍り出ることになる。

この問題は、イラン当局とアルカイダの関係がいかに奥深く、複雑なものかを示唆している。
多くの米政府当局者は、シーア派のイラン政府とスンニ派のアルカイダが敵視し合っていると考えているが、それは違う。
9・11独立調査委員会の報告書は、01年の9・11テロの前に、ハイジャック犯たちがアフガニスタンに出入りするのをイランが手助けしていた「強力な証拠」があると示唆しており、両者のつながりについてさらなる調査を呼び掛けている。
「この問題はイランにとって、まさにパンドラの箱だ」と、問題に詳しいアラビア人の情報アナリストは言う。そしてイマンの登場によって、その箱のふたが開かれた。
ビンラディンの娘はイランで軟禁されていたという。【1月20日号 Newsweek】
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確かに、イランとアルカイダのつながりが明らかになれば話は大事になりますが、“それらの幹部やテロ計画についてイマンが何かを知っているとすれば”という話でので、どうでしょうか・・・。
ただ、イランはなんのためにウサマ・ビンラディンの子供たちを軟禁しているのでしょうか?

【イランとタリバン】
それと、アルカイダだけでなく、スンニ派タリバンとイランの関係も不透明です。
確かに、以前より隣国の異宗派タリバン政権とは対立がありますし、国境を越えて持ち込まれる麻薬も問題となっています。また、タリバンと関係の深いパキスタンともイランは利害が反するという側面もあります。

ただ、共通の敵アメリカの敵は・・・ということで、07年頃、チェイニー元副大統領に近いとみられる米政府「高官」筋が、タリバンに対してイランが武器支援をしているとの説を各種メディアに流していたこともありました。

“アフガニスタンに駐留する北大西洋条約機構(NATO)が指揮する国際治安支援部隊(ISAF)が、イランからイスラム原理主義組織タリバンに向けた武器の輸送を阻止していたことが明らかになった。16日付の米ワシントン・ポスト紙が伝えた。【07年9月17日 AFP】といった報道もありました。

これらについては、イラン政府が積極的に武器供与に関与しているよりも、武器ブラックマーケットのディーラー、麻薬密売人、あるいはアルカイダの資金提供者が、イランの下級軍人から違法に仕入れた武器がイランからアフガニスタンへ、アフガニスタンからはヘロインがその見返りにイランに流れる・・・という、民間ベースの麻薬・武器の密輸がイランとアフガン間にあるということではないかとも言われています。
イラン政府は明確にタリバンとの関係を否定しています。

【見せしめ】
首都テヘランで12日朝、テヘラン大学教授で核科学者のマスード・モハマディ氏が遠隔操作の爆弾の爆発により死亡した事件がありました。
同教授は原子力分野で多くの論文を発表する研究者。爆弾は自宅のオートバイに仕掛けられていました。
イラン国営放送は「シオニスト(イスラエル)と米国の工作員が爆弾を仕掛けた」と報道、西側勢力が事件に関与したとの見方を伝えています。
また、イラン革命防衛隊系のファルス通信は反体制派グループが犯行を認めたと報じ、殺されたモハマディ氏は信心深い男で、6年前まで革命防衛隊に協力していたとも伝えています。

アメリカ国務省は「ばかばかしい」と一蹴、英紙フィナンシャル・タイムズは「(同教授が)核開発にかかわっていたとするいかなる可能性よりも、改革派の支援者だった事実の方が教授の死を説明できるだろう」と、同教授が昨年6月の大統領選後、学生の抗議運動を支援していたため、見せしめとして暗殺された疑いが強いと指摘しています。

複数の反政府系ウェブサイトはモハマディ氏が、昨年6月の大統領選で改革派のムサビ元首相への支持を表明したテヘラン大学の教員420人に名前を連ねていたと指摘。
また、反政府デモに参加するよう学生たちに呼び掛け、小型バスまで用意したとも。【1月27日号 Newsweekより】

モハマディ氏の専門は素粒子物理学と理論物理学で、核爆弾の製造につながるものではないそうですが、同誌は、“それでも、もしモハマディが核計画に関わっていたとしたら、彼の暗殺はイランの核計画関係者に情報を漏らすなという警告になったはずだ”“モハマディの死にテヘラン大学の教員たちは青ざめている。テヘラン大学ではモハマディが死ぬ1週間前、教授88人が最高指導者アリ・ハメネイ師に対し、反政府デモへの暴力的な弾圧をやめるよう求める公開書簡を反政府系サイトに投稿していた。今回の暗殺事件を受けて、同じような書簡が出されることはなくなるだろう。”とも報じています。

【追加制裁】
イランに対する追加制裁の協議は難航しているようです。
****イラン追加制裁合意できず NYで6カ国の高官会合*****
イラン核問題への対応を協議する国連安全保障理事会の5常任理事国とドイツの6カ国による高官会合が16日、ニューヨークで開かれたが、米国が求めるイランへの追加制裁で合意できなかった。会合に参加した欧州連合(EU)やロシアの高官が明らかにした。会合は、米欧が同問題で設定した昨年末の交渉期限後は初めて。外交努力の継続を求める中国を除く5カ国からは高官が参加した。【1月17日 共同】
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