孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ハイチ大地震  孤児の国際養子縁組に感じる欧米と日本の差異

2010-01-29 11:42:11 | 世相

(“flickr”より By IFRC http://www.flickr.com/photos/ifrc/4298150392/)

【混乱の中の養子縁組の危険】
ハイチの首都ポルトープランスでは、おなかをすかせて住む家もなく路上をさまよう子どもの姿は日常的な光景となっているようです。
そこでよく目にするのが、震災で孤児となった子供の国際養子縁組の話題です。
多いのは、国際養子縁組の形を借りた誘拐・孤児連れ去り・人身売買の危険を訴えるものです。

*****欧米でハイチ被災児の縁組拡大…人身売買恐れも*****
ハイチ大地震で被災した児童を、養子縁組の形で引き取る動きが欧米諸国で広がっている。
被災地の厳しい環境から救う人道目的だが、一歩間違えば本人や家族の意思に反する一家離散につながりかねない。組織的な人身売買に利用される恐れも指摘される。

オランダ南部アイントホーフェンの軍用空港に21日、ハイチで被災した子供106人を乗せたチャーター機が着陸した。国際的な養子縁組を支援する複数の民間団体とオランダ外務省が手配した。子供はオランダとルクセンブルクの里親に引き取られる。
米欧メディアによると、これまでに米国が53人、フランスが33人の子供を受け入れた。いずれも震災前から準備されていた縁組予定を前倒ししたケースで、5歳以下の幼児が中心という。
ハイチにはもともと約38万人の孤児がおり、今回の地震で両親を失った児童は数万人に上るとされる。被災して運営を続けられない孤児施設もある。養子縁組はこうした児童の救済が目的だ。米国やオランダは通常の査証発給要件を緩和した。子供の受け入れは今後、加速するとみられる。

問題は、震災後の混乱の中で、子供の身元確認が十分にできないことだ。米国の国際児童奉仕連合評議会は、今の状況下での養子縁組は「不正、虐待、人身売買に道を開く」と警告する。
欧米で国外からの養子縁組は珍しくない。英ニューカッスル大学のピーター・セルマン社会学教授によると、米国は2001~08年に16万4294人、フランスは2万9265人を受け入れた。多くは、政府の認可を受けた民間の専門機関が仲介した。だが、養子を送り出す国のチェック体制が不備だと、犯罪組織が仲介団体を装って、子供を国外に連れ出す恐れが大きくなる。臓器売買や児童売春目的の国際的な人身売買ネットワークが摘発された例もある。
震災で心に傷を負った子供にとり、慣れ親しんだ土地を離れるストレスは大きい。国連児童基金(ユニセフ)のベネマン事務局長は19日、声明で、「子供を家族と再会させる努力を尽くし、それが困難と判明したときだけ、養子縁組が検討されるべきだ」と訴えた。【1月23日 読売】
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“ユニセフのケント・ページ広報官は、「子どもがさらわれ国外に連れ去られているという報告が増えており非常に懸念している」と語った。また、たとえ合法的な救援団体でも、行方不明の親を探す努力を尽くさずに養子縁組で海外へ送り出してしまったケースも心配されており、ハイチ政府は先週、こうした養子縁組の中止を決定した。”【1月26日 ロイター】とも報じられています。

2007年12月に起きた、スーダン・ダルフール地方の孤児だとしてチャドの子ども103人を フランスに密出国させようとしたとして、チャドの裁判所から誘拐未遂罪で重労働 8年が言い渡されたフランス援助団体「ゾエの箱舟(Arche de Zoe)」の事件も記憶に新しいところです。

【キリスト教の寛容、慈悲、共和国の自由・・・・】
ただ、困窮する孤児を養子という形で引き取り育てる行為自体は素晴らしいことです。
****ハイチの孤児、養子で救え*****
・・・・そんな中、明るいニュースとして伝えられているのが、孤児を養子に迎えるという話題だ。フランスではキリスト教の寛容、慈悲、共和国の自由、平等、博愛の精神からか、孤児などを養子にするという伝統がある。シラク前大統領はボート・ピープルのベトナム人少女を養女にし、知人の独身女性記者もやはりベトナム人を養子にしている。
子供が授からないとか、実子の子育てが終わったからなどと理由はさまざまながら、肌の色が異なる子供を養子にすることにも、何ら抵抗がないようだ。
2008年にもハリケーンで500人以上が死亡したハイチでは孤児も多い。フランスには、今回の大地震の前の時点で、養子縁組の法的手続きを終えていない養父や養母がすでに約700人いた。地震を機に、米国や欧州諸国は養子の入国手続きを緩和中で、フランスも130人を早急に受け入れる予定だという。
ただ、クシュネル仏外相は「子供を救うという良い理由のためでも、誘拐と非難されることはあってはならない」と忠告している。07年には、戦火のアフリカ中部チャドでNGO(非政府組織)が孤児でない子供を含め約100人を国外に連れ出そうとして、チャド当局に拘束されている。
緒方貞子氏は国連難民高等弁務官時代、「援助とは援助される人のそばにいることだ」という至言を吐いたが、孤児を養子にすることはまさに、その具現化だと思う。だが、なかなかできることではないので、私としてはささやかな寄付をするほかないのである。【1月27日 山口昌子 産経】
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こうした欧米の国際養子縁組に対する姿勢が、キリスト教を含めた欧米の文化的土壌とどう関わるのか、そこに何か問題はないのか・・・そのあたりはよくわかりませんが、日本では国際養子縁組はほとんど見かけません。
同じアジアの国々の子供ですら難しいでしょう。
まして肌の色が黒い子供を養子に・・・という人はなかなか。

これもまた、いろいろ日本の文化的土壌があるのでしょうが、やはり日本社会の閉鎖性は指摘せざるを得ないところでしょう。
孤児の養子縁組だけでなく、難民や移民の受け入れにも通じる問題です。
日本には、“キリスト教の寛容、慈悲、共和国の自由・・・”に相当するものはないのか?

孤児の問題、難民・移民の問題は、それぞれ多くの問題に関わり、社会的に大きな負担を強いる面もあるでしょう。ただ、そうしたことを論じる際に、根底に日本社会の閉鎖性があるのではないかという自問、それをどう考えるのかという問いかけは必要なことかと思われます。
ハイチの孤児のニュースを見聞きして、そんなことを感じた次第です。

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