
(バングラデシュ ダッカの交通渋滞 これはすでに道路の体をなしていません。
しかし、バングラデシュの道路に溢れているリキシャが全く見えないところを見ると、リキシャの乗り入れは禁止されているようです。“flickr”より By joiseyshowaa
http://www.flickr.com/photos/joiseyshowaa/2402764792/)
【頓挫した政治改革】
あまり、と言うより、災害以外のニュースが殆ど入らないバングラデシュですが、政情を窺わせる記事がありました。
****高級車売り上げ急増=汚職摘発失速背景に?-バングラ*****
2007年以来、政財界汚職の大規模な摘発が続いたバングラデシュで09年、高級外車の売り上げが大きく伸びた。高級車を持つだけで汚職の疑いを持たれかねなかったが、同年、摘発の勢いが急速にしぼみ、政治家や富裕層の間で当局への恐怖心が消えたことが背景にあるとみられている。
高級車の販売台数は07年から08年にかけ激減した。車を端緒に汚職をかぎつけられたりするのを恐れ、政治家らが購入を控えたり手放したりしたためだ。ところが首都ダッカでは09年に入ると、「見掛けなくなっていた高級車が一転して目立ち始めた」(観測筋)という。【1月3日 時事】
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バングラデシュでは本来は07年1月に総選挙が予定されていました。
しかし、社会全体に汚職体質が蔓延し、ジア前首相の与党バングラデシュ民族主義党(BNP)とハシナ元首相(当時 現在は首相に返り咲いています)率いる 野党のアワミ連盟(AL)の二大政党が、選挙になると互いに相手を激しく攻撃して社会混乱が生じる事態が繰り返されてきました。
ハシナ元首相は、軍将校に暗殺されたムジブル・ラーマン初代大統領の長女で、ジア前首相は、ムジブル・ラーマン暗殺後に陸軍参謀長に就任したジアウル・ラーマン氏の妻にあたります。ジア前首相の夫ジアウル・ラーマンは大統領に選ばれますが、やはり軍部の反対勢力により暗殺されてしまいます。
ともに、父親や夫をクーデターで失った女性政治家という共通点がありますが、それだけに、そのクーデターの責任をめぐっても両者間には激しい個人的確執があります。
07年1月の選挙にあたっても、少なくとも35人が死亡した数か月に及ぶ政情不安が生じ、2007年1月に軍を後ろ盾とする選挙管理内閣(暫定政府)が全権を掌握。イアジュディン・アハメド大統領は総選挙を延期し非常事態宣言を発令しました。
そして、非常事態宣言のもとで汚職・犯罪の一掃が強力に行われ、長年の政治・社会混乱の原因になっている二大政党についても、その両党首を汚職容疑で逮捕する形で、上からの“変革”が強権的に推し進められました。
この間、ノーベル平和賞受賞者でグラミン銀行総裁のユヌス氏が新党の立ち上げに動きましたが、盛り上がりを見せないまま5月には頓挫。
結局、ハシナ、ジア2人以外に新たな有力指導者は現れませんでした。
このため両氏は釈放され、上からの政治改革もしりすぼみに終わる形で、旧来の二大政党間での総選挙が08年12月に行われました。
勢力は拮抗しているとも見られていましたが、ハシナ元首相率いる 野党のアワミ連盟(AL)が全議席299議席中、230議席を獲得して圧勝しました。
直前まで政権を担っていたBNPの方が汚職で逮捕された者も多く、より強く汚職の負のイメージを国民に与えたことによる結果ではないかとも見られています。
ジア前政権は07年に予定されていた総選挙前、選挙戦を有利に進めるため、与党支持の選挙管理委員長を選出したり、有権者名簿を操作するなど、不公正な動きが目立っていました。
08年選挙では、有権者約8100万人全員に写真付き個人識別(ID)カードを配布。電子登録を進めた結果、発覚した約1270万人の「架空有権者」を排除するなど、不正防止に全力で臨んだとも報じられています。【08年12月29日 毎日】
約1270万人の「架空有権者」がいたことが、これまでの腐敗状況を物語っています。
そんな08年12月の総選挙で権力の座に返り咲いたハシナ首相ですが、汚職・腐敗一掃にどこまで取り組めるかが注目されていました。
その疑問に対する答えが、冒頭記事です。
政治改革への道は遠かったようです。
【盗賊が跋扈し、監督官庁には汚職が蔓延】
バングラデシュ関連の比較的最近の記事としては、次のようなものも。
****船員ストで水上交通まひ=賃上げ、盗賊対策求める-バングラ****
川や運河が縦横に走るバングラデシュで、民間の客船、貨物船の船員が賃上げや航路の治安確保を求めて8日から一斉ストに突入し、物資輸送の要である水上交通がまひした。船が頼りの行商人らは閑散とした船着き場で途方に暮れている。
船員の平均月給は約25ドル(2250円)相当と他業種に比べ少ない上、盗賊の出没などで水上の治安が悪化している。
船員らでつくる河川船舶労働者連盟は、船会社と、治安を担う政府の両者を相手にこれら問題点の改善を求めて交渉を持ったが、折り合わなかった。船員側は水路の十分なしゅんせつや、監督官庁にはびこる腐敗の防止も求めている。【09年11月9日 時事】
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盗賊が跋扈し、監督官庁には汚職が蔓延・・・この記事からも“相変わらず”の感が窺えます。
【携帯で英語レッスン】
しかし、新たな動きを感じさせるものも。
****携帯電話で英語レッスン、バングラデシュで大人気****
英語を話せることが、よりよい生活を得るための1つの手だてとなっているバングラデシュで、電話1本で受講できる英語レッスンが大ヒットとなっている。
携帯電話から3000番に電話をかければ受講できる英語のレッスンは1回3分と短いが、繊維貿易を学ぶラーマンさん(21)は、このレッスンが英語学習として早くも成果を上げていると述べる。バングラデシュでは、ダッカに拠点を置く外国企業から実入りの良い仕事をもらうために英語がとても重要なのだ。
携帯電話による英語レッスン「Janala(窓)」は、英国放送協会(BBC)の慈善事業部門が前月開始したばかりだが、バングラデシュでは早くも数万人の若者がこのサービスを利用している。事業の目標は2011年までに600万人に英語を教えることだという。
ラーマンさんは「とても簡単で効果的」とレッスンを評価する。1レッスンあたりの受講料は3タカ(約4円)。ラーマンさんによれば、「バングラデシュで英語を覚える最も安価な手段」だという。「(バングラデシュには)たくさんの英語教室があるが、そのほとんどはぼったくりで低品質だ」
「Janala(窓)」は、会話、発音、基礎的な英語を録音レッスンで毎週5日、18か月間で教えるというもの。バングラデシュではすでにヒットビジネスとして人気を博している。(中略)
もっとも初歩的な「エッセンシャル・イングリッシュ」のコースはレッスン78回分。1日につき1レッスンずつで、英語で相手に話しかける方法を学ぶ。【12月20日 AFP】
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私が2006年9月にバングラデシュを観光した際は、すでに選挙前の混乱が始っていましたが、他の東南アジア諸国と比べても、英語が殆ど通じないという印象がありました。
外国からの観光客も多くない国ですから、仕方ないことでしょう。
その後、TV番組でも首都ダッカが“沸騰都市”として取り上げられるほどの経済状況から、外国企業などとの関係も深まり、昨今の英語学習熱となっているようです。
英語が使えることがビジネスチャンスに直結している社会、生活のために英語が必要な社会では、日本などのように何のために英語を学ぶのかはっきりしない国に比べ、学習意欲が違います。
逆に言えば、英語がわからなくても社会生活に支障のない日本は、ある意味恵まれた国でもあるのでしょう。
英語が苦手な自分自身の弁解でもありますが。