
(模型飛行機を楽しむ人々・・・ではなく、カタパルトにセットされた無人偵察機RQ-7(shadow)、国家の戦略すら変える先端軍事技術のひとつです。“”より By cbane
http://www.flickr.com/photos/cbane/2644568157/)
【パキスタンに掃討作戦拡大を要請するアメリカ】
アフガニスタンに米兵3万人以上を増派する一方で、11年から駐留部隊の撤退を開始すると発表しているアメリカ・オバマ政権は、パキスタンとアフガニスタンの国境地帯がアフガニスタンのタリバンの「聖域」となっており、この地域を抑えられるかどうかが戦略成否のカギとなると判断しており、パキスタンに対しては国境地帯でのイスラム過激派「パキスタンタリバン運動(TTP)」やアルカイダ系武装組織の掃討作戦を強く要請しています。
****「武装勢力の聖域を壊滅すべき」、米国防長官が警告****
ゲーツ米国防長官は2日間の日程でパキスタンを訪問中だが、その初日にあたる21日のパキスタン紙ニュースへの寄稿で、パキスタンに対する米政府の関与を強調すると同時に、パキスタン国内で活動するタリバン系イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」に対する最近の軍事作戦を評価した。
しかし米側は、同国領内に進入しているアフガニスタンのタリバン勢力や、北西部の部族地域で攻撃を計画し、仕掛けてくる国際テロ組織アルカイダ系の武装勢力などについても、パキスタン政府が攻撃を徹底するよう明確に、強く要請してきた。
ゲーツ長官は「パキスタンのタリバン運動は、アフガニスタン領内のタリバン、アルカイダの両方と結託して動いている点を忘れてはならない。これらの集団を個別にすることは不可能だ」と記し、「歴史に従うならば、国境の両側にある両方のタリバンにとっての聖域は長期間のうちに、現在よりももっと致命的な、もっとふてぶてしい攻撃につながるだろう」と警戒を呼びかけた。
またさまざまな原理主義勢力をひとつひとつ個々のものとして区別することは「非生産的」だとも述べ、「アフガニスタンとパキスタン国境の両側からこれらの勢力すべてに圧力をかけ、両国内外でテロ行為を広める者たちを破滅させてこそ、両国ともこの災いから逃れられる」と主張した。【1月21日 AFP】
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【パキスタン「新たな地域で作戦を実施できない」】
アメリカ自体も無人機を使った空爆を強化していますが、空爆は民間人犠牲者も増加させ、イスラム過激派側の報復テロの連鎖を招き、パキスタン国民の反米感情を高めています。
パキスタン国軍は、米軍に協力する形で部族支配地域掃討作戦を続けていますが、タリバンやイスラム過激派との繋がりも指摘される軍部はもともとあまり積極的とは言えず、ゲーツ米国防長官のパキスタン訪問に合わせて、対米協力拡大を拒否する姿勢を示しています。
****パキスタン:軍が掃討拡大に反対 親米政権に先手****
パキスタン軍のアッバス広報官は21日、イスラマバードで記者団に「今後半年から1年間、新たな武装勢力掃討作戦に着手しない」と述べた。パキスタンに掃討作戦の拡大を強く求めている米国のゲーツ国防長官がイスラマバードを訪問中で、ザルダリ大統領との会談を予定。軍部が、米国に協力的な政権に先手を打つ形で、作戦拡大に「ノー」を突きつけた格好だ。
現地からの報道によると、広報官は「(昨年10月に開始した部族支配地域)南ワジリスタンでの掃討作戦を完遂するまで、新たな地域で作戦を実施できない」と明言した。
オバマ米大統領は昨年12月、アフガニスタンに米兵3万人以上を増派する一方で、11年から駐留部隊の撤退を開始すると発表。増派部隊はパキスタン国境に集中投入される予定で、軍部などは強く反発している。
これに対し、汚職体質などで政治危機にあるザルダリ氏は、米国のアフガン戦略に賛同することで政権維持を図っており、軍部などとの緊張が高まっている。
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【米:無人偵察機12機をパキスタンに提供】
パキスタン国軍をなだめるためか、ゲーツ米国防長官はパキスタンに非武装の無人偵察機を提供する準備があることを明らかにしています。
****パキスタン:無人偵察機12機を提供 米国防長官が表明*****
ゲーツ米国防長官は22日、米陸軍が保有する無人偵察機12機をパキスタンに提供する方針を示した。同国とアフガニスタンとの国境付近では、米中央情報局(CIA)が無人偵察機による空爆を拡大。パキスタン側は、情報の共有化や同様の無人機の提供を求めていた。米国側は今後、国境付近における戦闘への一層の協力を求める。
パキスタンを訪問中のゲーツ長官が、地元メディアの取材に明らかにした。米軍は、CIAが使用しているとされる大型の爆撃機能を持つ無人機(プレデター)ではなく、小型で空爆機能のないタイプ(シャドー)を提供するという。さらに米国は、アフガニスタンとの国境沿いの部族支配地域に使用を限定するよう求める方針。
パキスタン側はCIAによる空爆で民間人の被害が拡大していると批判。自国軍でより正確な攻撃をするとして無人機の提供などを求めていたが、米国側は、情報の漏えいやパキスタンが隣国インドに対して使用することを警戒し、応じていなかった。
オバマ大統領は昨年末、CIAによる空爆を従来の部族支配地域に加え、さらに南方のバルチスタン州にも拡大するよう指示。戦闘はさらに激化しているが、パキスタン陸軍幹部は「戦闘の長期化で部隊が疲弊している。今後少なくとも半年から1年は、大きな戦闘は行わない」と公言するなど、米軍への協力をしぶる姿勢を示していた。【1月23日 毎日】
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アメリカCIAに代わってパキスタン国軍が無人機を使って“より正確な攻撃”できるとは思えません。
技術的な問題もありますし、パキスタン国軍がアメリカより民間人への配慮において勝っているとは考えられないからです。
“小型で空爆機能のないタイプ(シャドー)”でパキスタン国軍側が満足するかどうかは不明です。
なお、RQ-7 シャドーは、専用のカタパルトから射出する形で離陸し、全長は3.41m、翼幅3.87m。
【先端軍事技術拡散】
戦場の無人化・ロボット化は急速に進行しており、米軍の使っている無人機、陸上軍用ロボットについては「米国の無人兵器、空・陸で導入」【1月15日 AFP】(http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2683088/5170500)に紹介されています。
どの国も無人機技術を欲しがっており、ロシアがイスラエルからの無人機偵察機を供与してもらうという“事実上のわいろ”の見返りに、従来ロシアが支援してきたイランに対してロシアが対空ミサイルS300を売却しないという“取引”も報じられています。
パキスタンが無人機を手にすれば、インドが「我が国にも・・・」という話にもなるのでは。
核拡散同様の先端軍事技術の懸念も。