孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ナイジェリア  石油をめぐる争い、宗教対立、原理主義、警官の不正 資源大国の惨状

2010-01-22 22:11:39 | 世相

(ナイジェリア南部で石油施設破壊活動をする反政府武装組織 昨年10月に“休戦”が報じられていますが、ナイジェリアの抱える問題は他にも多数あるようです。
“flickr”より By Pan-African News Wire File Photos
http://www.flickr.com/photos/53911892@N00/3769874480/)

【原油に蝕まれる国】
西アフリカのナイジェリアは、アフリカ最大の人口(サハラ以南アフリカの約20%)及び最大の軍事力を有する地域大国であり、南部のニジェール川デルタでは豊富に石油を産出する資源大国(原油輸出量は04年で世界第5位、埋蔵量では07年末で世界第8位、アフリカ最大)でもあります。

しかし、この石油を巡って内戦や内紛が繰り返されるなど、国内対立の原因ともなっています。
“パイプラインから漏れ出た石油は、土壌や水を汚染し、石油利権はうまい汁を吸う政治家や軍人の手を汚す。目先のお金に目がくらんだ若者は、オイルマネーの分け前にあずかるためなら、銃撃、パイプラインの破壊、外国人の誘拐など手段を選ばない。”【ナショナルジオグラフィック07年2月号「豊かな原油に蝕まれるナイジェリア」】

【繰り返される宗教衝突】
南部の産油地帯で石油施設への攻撃を繰り返してきた主要武装勢力「ニジェールデルタ解放運動(MEND)」は09年10月25日、無期限の休戦を宣言しましたが、ナイジェリアは宗教対立でも大きな問題を抱えています。

ナイジェリアでは、北部にはキャラバン貿易を通じてイスラム教が広がったのに対し、アニミズム信仰の南部にはヨーロッパの影響でキリスト教が広がり、イスラム教とキリスト教は独立後頻繁に衝突を繰り返してきました。
08年11月には中部ジョスで、十数年ぶりに実施された地方選挙の結果発表が遅れたことから、キリスト教系の国民民主党(PDP)とイスラム教系の全ナイジェリア国民党(ANPP)支持者らが対立陣営の不正を疑い、銃などで武装して衝突、380人を超える死者を出しています。
(08年12月1日ブログ「ナイジェリア 選挙結果をめぐる宗教衝突で数百人が死亡」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20081201

最近、同様の宗教対立が起きています。場所も同じジョスです。
****ナイジェリア:200人死亡 イスラムとキリスト宗教衝突****
ナイジェリア中部プラトー州の州都ジョスで17日以降、イスラム教徒とキリスト教徒が衝突し、200人以上が死亡、多数の負傷者が出ている。AP通信によると20日、治安当局は24時間の外出禁止令を出したが、衝突は周辺にも拡大。事態は収束していない。
今回の衝突は、一昨年の宗教衝突の際に破壊された住宅の再建を巡り、イスラム教徒とキリスト教徒間で争いが生じたことが発端とされるが詳細は不明。一般民家や通行人への暴力に加え、イスラム教徒による教会への放火、キリスト教徒によるモスク(イスラム礼拝所)への焼き打ちなどが頻発し、緊張状態が続いている。
同国は主に北部中心にイスラム教徒、南部にキリスト教徒が住むが中間地点に位置するジョスは、両宗教間の衝突が繰り返されてきた。08年11月にも地方選挙後に両教徒の一部が暴徒化し、300人以上が死亡した。【1月21日 毎日】
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【イスラム過激派】
南部の石油をめぐる争い、南北間の宗教対立・・・まだ他にもあります。

****イスラム勢力と治安当局衝突、68人死亡 ナイジェリア****
ナイジェリアからの報道によると、北部の町バウチで12月28日、イスラム強硬派勢力の内部抗争が起き、鎮圧に当たった治安当局も巻き込んだ戦闘に発展した。AFP通信によると68人が死亡した。
欧米流の教育や医薬品、テレビ、ラジオを否定する勢力「カラ・カト」が内部分裂し、双方が敵対派指導者を重病に陥れようとしたと非難しあったこと が衝突の原因だという。イスラム教徒が集中する北部では、貧困や失政を背景にイスラム強硬派が勢力を拡大。昨年7月にはカラ・カトと同様の集団が警察と衝突し、約700人が死んだ。【09年12月31日 朝日】
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【腐敗する警察】
うした住民間の対立を抑え治安維持に当たるべき警察官自体が市民を超法規的に殺害しているという問題も指摘されています。

****薄給の警察官、市民数百人規模で殺害か ナイジェリア*****
ナイジェリアで、警官にわいろを払わなかったなどとして毎年、市民数百人が超法規的に殺害されていると、国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」が昨年末に出した報告書で指摘した。警官の薄給や訓練不足が原因だとして改善を求めている。
2007~09年の現地調査に基づいた報告書によると、09年5月、検問所の警官にわいろを渡さなかったバイクの運転手が「武装強盗」として射殺された。南部の遺体安置所には8~10月に、「身元不明の強盗犯の遺体」として約150体が警察から届いた。逮捕後に行方不明になる市民も多いが、違法行為で訴追される警官はまれだという。
警察統計によると毎年、警官100人以上が殉職する一方、03~08年には計3014人の容疑者が警官に殺害された。だが、警察幹部のひとりは別の国際NGOに「03年だけで約3100人の強盗を殺害した」と証言しており、死者数は統計よりはるかに多いとみられる。
警察職員の4割は過去7年間に採用され、満足な訓練ができていないという。ナイジェリアはアフリカ有数の産油国だが、警官の月給は安く、08年まで巡査は52ドル(約4700円)だった。【1月6日 朝日】
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石油資源に恵まれながら、それがあだとなって政治が腐敗、富は偏在して貧困が蔓延するなかで人々は相争う・・・悪い見本のような国と言ったら言い過ぎでしょうが、気が重くなる現状ではあります。

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