(イラン側もイスラエルなどの攻撃に備えて、核関連施設を防御する地対空ミサイルを用意しています。写真は4月16日に行われたミサイル試験の様子 “flickr”より By DTN News http://www.flickr.com/photos/dtnnews/5625522532/ )
【ネタニヤフ首相がイランへの軍事攻撃に向け、閣僚を説得】
イランの核兵器開発疑惑に対し、イスラエルあるいはアメリカが関連施設攻撃を行うのでは・・・という話は今に始まったものではなく、以前からあるものです。
実際に行われたら、イランは面子をかけて反撃すると思われますので、中東情勢は一気に不安定化し、原油などの世界経済は大混乱します。そういうこともあって、今までのところは“話”で終わっています。
ただ、最近、イスラエルのネタニヤフ首相がこの問題で強気の姿勢を見せていることが話題になっています。
ネタニヤフ首相は、イランに核開発を放棄させるには「確かな軍事的選択肢」による圧力が必要だと繰り返し強調しています。
****イランの核問題 イスラエル“暴走”懸念 いらだつオバマ政権****
オバマ米政権は、イスラエルが単独でイラン核施設の攻撃に乗り出す可能性に懸念を強めている。
イランが核施設攻撃の報復に打って出れば、原油高騰など世界経済に悪影響を及ぼすのは確実。一方で大統領選をちょうど1年後に控え、米国内のユダヤ票の行方には神経質にならざるを得ない。イランの核問題はオバマ大統領の再選戦略を揺るがしかねない。
米メディアはここ数日、イスラエルのネタニヤフ首相がイランへの軍事攻撃に向け、閣僚を説得しているとのイスラエル国内の報道を相次いで報じている。イスラエルは今月2日、イランを牽制(けんせい)するように弾道ミサイルの発射実験を実施。報道によると、大半の閣僚の反対をよそに、バラク国防相ら有力閣僚が軍事作戦を排除しない方針を示しているという。
イランは今年6月、ウラン製造施設を地下施設に移動することを表明したが、事実とすれば、偵察衛星での核施設の監視が困難になるとの焦燥感が強硬姿勢の呼び水となっている。
さらに英紙ガーディアン(電子版)は2日付で、米国自らもイランにミサイル攻撃を行う可能性が高まっており、英国が支援準備を進めていると伝えた。しかし財政問題やユーロ危機に苦しむ米欧が軍事行動をとるのは非現実的との見方が一般的だ。
一方、専門家によると、イランは空爆を予想し、あえて都市部周辺に核施設を建設しているという。市民に犠牲が出れば、イスラム諸国に反イスラエルや反米感情が吹き荒れかねない。
オバマ大統領は3日、サルコジ仏大統領との会談後に「イランに義務を果たさせるため、前例のない圧力を維持する必要性」で合意したと強調した。
国際的な枠組みでの経済制裁により、イラン封じ込めを強めていく姿勢を打ち出している。【11月7日 産経】
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市民に犠牲がでるように“あえて都市部周辺に核施設を建設”というのも、“そこまでやるかな・・・”という凄い話です。
【8日のIAEA報告書が「決定的な影響」】
なお、ネタニヤフ首相だけでなく、かつてオスロ合意の功績でノーベル平和賞を受賞したこともあるペレス大統領も、「イランを攻撃する可能性はますます高まった」と発言しています。
***イスラエル大統領、「イラン攻撃の可能性高まった」****
イスラエルのシモン・ペレス大統領は現地時間5日夜、イスラエルや他の国々が「イランを攻撃する可能性はますます高まった」と語った。
ペレス大統領はイスラエルの民放チャンネル2に対し、「イランを監視している複数国の情報機関が、イランは核兵器を獲得する準備ができていると懸念し、自国首脳らに警告している」と語った。さらにペレス氏は「これらの国々が責任を果たすよう、われわれは働きかけなければならない」と述べ、「選択肢はたくさんある」と語った。
イスラエルでは3日、通常兵器及び非通常兵器のミサイル攻撃があった場合に備えた大規模な民間人防衛訓練が、テルアビブ(Tel Aviv)地域で完了したところ。また地元メディアは、イスラエルが「弾道ミサイル」の試験にも成功したと報じている。イスラエル国防省高官はAFPの取材に、この試験はかなり前から計画されていた「ロケット推進システムの試験発射」だと説明した。
■8日のIAEA報告書に注目
イスラエルのヘブライ語日刊紙ハーレツは2日、ベンヤミン・ネタニヤフ首相とエフド・バラク国防相が、イラン攻撃について閣内の支持を取り付けようとしていると伝えた。
同紙によると、軍事攻撃についての決定はまだなされておらず、8日の国際原子力機関(IAEA)の報告書が意思決定プロセスに「決定的な影響」を及ぼすことになるという。
IAEAのこれまでの評価は、イランの核分裂性物質(ウランやプルトニウム)の生産状況を中心としていた。ウランやプルトニウムは発電などの平和利用もできるが、核爆弾の製造にも使える。
だが8日の報告書は、イランが行っていると疑われている放射性物質の弾頭への搭載や、核弾頭を運搬するミサイルの開発などに焦点をあてるという。外交官らは、8日か9日には報告書が外交関係者の間に出回るとみている。
ハーレツ紙が3日に発表した世論調査によると、イランの核関連施設への攻撃を支持すると回答した人は41%、攻撃に反対する人は39%、態度未定は20%だった。イランは、自国領内への攻撃があった場合にはイスラエルを「罰する」と宣言している。【11月6日 AFP】
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注目されているIAEAが8日に配布する予定の報告書は、これまでより踏み込んだ内容になるとの見方がされています。
****イラン、核起爆実験着手か 欧米メディア「IAEAが報告書」****
イランの核兵器開発疑惑をめぐり、核起爆装置の実験に使用できる施設がテヘラン郊外に建設されたとの新たな情報が流れた。イスラエルによるイラン核施設への軍事攻撃も取り沙汰される中、緊張が高まりつつある。強硬姿勢を続けるイランを前に、大統領選まで1年に迫ったオバマ米大統領は対応に苦慮している。
国際原子力機関(IAEA)が8日にも理事国に配布するイラン核問題報告書に、核兵器開発の最後の難関とされる核起爆装置の実験に使用できる施設がテヘラン郊外に建設されたとの情報が盛り込まれると欧米メディアが一斉に報じた。IAEAがイランの核兵器開発疑惑を具体的に告発する情報を示すのは初めて。
IAEAが入手した衛星写真によると、イランはテヘラン郊外のパルチン軍事施設に鋼鉄製大型コンテナを設置。施設は核爆発を引き起こす高性能爆薬の爆破試験に使用できるという。
さらに周囲の爆弾を同時に爆発させて、中心の核物質に圧力をかけ核分裂反応を起こさせるコンピューター実験を行っていることを示す証拠もあるという。
IAEAの天野之弥事務局長は昨年2月、「イランがミサイル搭載用核弾頭開発につながる活動を極秘裏に進めている疑いがある」と指摘。今年9月、疑惑に関する詳細を「近く示したい」と述べていた。
IAEAによると、イランは4・5トンの低濃縮ウランを保有。核爆弾3~4個分の高濃縮ウランを製造するのに十分な量だが、イランは「平和利用のため」とウラン濃縮活動の停止を拒否してきた。しかし、核起爆装置の実験への着手が証明されればイランの言い逃れはもはや通じなくなる。
ただ、ロイター通信は「コンテナがいつ設置されたのか、実際に核起爆装置の実験に使われるのか不明」と報じており、報告書は、イランが核兵器を開発しているとの結論にまでは踏み込まないとみられている。
イランの核開発をめぐっては2002年8月、中部ナタンツにウラン濃縮施設を建設中と反体制派が暴露。イランは09年9月、テヘラン南方のコム郊外に新たな濃縮施設を建設中とIAEAに通告している。【11月7日 産経】
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【イランには経済制裁による経済疲弊も】
「核開発はあくまでも平和利用目的」と主張するイラン側では、アフマディネジャド大統領周辺だけでなく、「核開発は自国固有の権利」というコンセンサスが広く国内にあり、核開発中止の動きはありません。
しかし、経済制裁による経済疲弊から、国際的対立を望まない空気もあるようです。
****強気のイラン…本音は対決回避 核兵器開発疑惑****
米欧がイランの核兵器開発への疑惑を深める中、イランは「核開発はあくまでも平和利用目的」と主張、今後も核開発を推し進める強気の構えを崩していない。
イランでは近年、最高指導者ハメネイ師とアフマディネジャド大統領との間での権力闘争も取り沙汰されるが、核開発そのものの是非について大きな溝はないとみられる。
国内世論も、政府が主張する通り「核開発は自国固有の権利」だとみる向きが多く、核開発をめぐる外交問題が政権にとって大きな不安定材料とはなっていない状況だ。
その一方でイランは、国連の4度にわたる経済制裁を受けて生活必需品への補助金カットなどに着手、それによって物価が上昇するなど、国内経済に疲弊の色が見え始めているともいわれる。
それだけに米国との全面対決は何としても避けたいのが本音でもある。
イランのサレヒ外相は今月に入り、「米国は、イランとの衝突の道を進む前に(対イラン政策のあり方を)再考すべきだ」などと発言。対立回避を模索しているともとれるメッセージを送っている。【11月7日 産経】
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ネタニヤフ首相の強硬な姿勢も、“対イラン経済制裁の強化に向けた国際世論を形成したいとの思惑”との指摘もあります。
****イスラエル:制裁強化狙い首相ら強硬論****
イランの核兵器開発疑惑に関するIAEAの報告を前に、イスラエル軍による対イラン空爆の可能性に言及する報道が相次いでいる。ネタニヤフ首相は「先制攻撃」を示唆することで、対イラン経済制裁の強化に向けた国際世論を形成したいとの思惑がありそうだ。
バラク国防相は1日、ラジオの取材に「(イラン攻撃を含む)あらゆる選択肢を排除しない」と述べた。ただ、軍や情報機関は単独攻撃には反対で、閣内でも賛否は分かれている。複数の核関連施設への有効な空爆は困難▽核兵器入手までに2、3年はかかる▽大規模な報復が予想される--との分析からだ。【11月4日 毎日】
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ネタニヤフ首相の“本気度”はよくわかりませんが、もし狙いが制裁強化にあるとのことであれば、核関連施設攻撃を云々するといった“危険なゲーム”は止めてほしいものです。
最初は“ゲーム”“駆け引き”のつもりが、“勢い”や“流れ”で実際に・・・というのは、よくある話ですから。