孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

北朝鮮  “中国バブルに沸く平壌”と “生活苦で自殺”

2011-11-16 21:27:10 | 東アジア

(今年2月 金正日(キム・ジョンイル)総書記誕生祝賀式典で映し出された、後継者で三男の正恩(ジョンウン)氏の映像 このところの金正日総書記の健康回復で、正恩氏への権力移譲はペースダウンしているとの見方があるようです。 “flickr”より By yinfei2222 http://www.flickr.com/photos/59588273@N03/5452087044/

【「わが人民に鼓舞する力と喜びを与えた」】
サッカーW杯ブラジル大会アジア3次予選第の日本-北朝鮮の試合は、0-1で北朝鮮が勝利しました。
政治的に日本との確執がある北朝鮮にとっては、この試合は単なるサッカーではなく、どうしても勝ちたい試合だったようで、勝利の喜びに沸いているとか。

****サッカーW杯予選日本戦勝利 喜びに沸く北朝鮮****
サッカーのワールドカップ(W杯)ブラジル大会アジア3次予選第5戦が各地で行われた15日、C組の北朝鮮は日本と対戦し、1-0で勝った。勝利から一夜明けても、興奮は冷めない様子だ。

朝鮮中央放送と平壌放送は16日、試合の結果について、「今年の戦闘を勝利で終わらせるため力強く闘争に乗り出したわが人民に鼓舞する力と喜びを与えた」と報じた。
また、「わが選手らのシュートやヘディングなどにより、相手のゴール前で混戦となるたびに観衆は興奮を抑えることができず熱狂的な歓呼の声を上げた」と、住民の熱のこもった応援の様子も伝えた。
朝鮮中央テレビも15日午後8時30分ごろから1時間40分にわたり試合を録画中継した。【11月16日 聯合ニュース】
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W杯出場を決めている日本としては、控え選手を多く起用して臨んだ試合ですが、敗北には違いありません。
まあ、北朝鮮が惨敗して、責任者が粛清される・・・なんてことになるのも困りますが。

中国から多額の投資が平壌に流れ込み建設ラッシュ
その“不思議の国”北朝鮮は、厳重な情報統制によってなかなか実情が伝わりません。
一部漏れてくる情報も断片的・一面的なものになりますので、それで全体を推測するのは難しいところもあります。

一昨日、“バブルに沸く平壌”という記事と、“生活苦で自殺”という記事があり、どちらが現在の北朝鮮の実情を反映しているのか?と訝しく感じました。
もちろん平壌と地方、一部恵まれた立場の者と多数の人々・・・といった、異なる側面を併せ持つものなのでしょうが。

****中国バブルに沸く平壌=輸入品扱う百貨店、ホテルも―北朝鮮****
サッカーワールドカップ(W杯)アジア3次予選の日朝戦が15日に行われる北朝鮮の平壌では、中国資本による百貨店やホテルの建設などが急ピッチで進められている。
11月上旬に平壌を訪問した北京在住の東アジア学研究者、荒巻正行氏は「人民元バブルの様相を呈している」と指摘、中国から多額の投資が平壌に流れ込み、来年の故金日成主席生誕100年を見据えた首都での建設ラッシュを後押ししているとの見方を示した。

荒巻氏によると、平壌市内では約半年間の突貫工事で「光復百貨店」ビルが完成。ビルの外壁にはハングルなどのほか、中国の漢字で「光復百貨」の店名が掲げられた。北朝鮮で外国資本の百貨店が開業するのは初めてで、来年初めに営業開始予定。これまで外貨でしか買えなかった外国製品だが、同百貨店では北朝鮮ウォンで中国からの輸入製品を購入できるようになるという。
中心部にある高麗ホテルの裏手には中国資本によるホテルの建設が始まり、昼夜を問わず作業が行われている。多くの建築現場では軍人が駆り出され、国家を挙げた建設事業となっている。

訪朝経験の豊富な荒巻氏は「今年に入り、中国による首都への投資が許可されたようだ。市民の購買力も高まっており、急激な変化を感じた」と指摘。昨年以降の度重なる金正日労働党総書記の訪中の際に、平壌への投資容認についても中朝が合意した可能性があると推測している。
平壌では約3年前にサービスを開始した携帯電話の普及も急速に拡大しており、今では大学生の8割が保有。「女子高生が街頭で携帯メールをする光景も珍しくない」(荒巻氏)という。【11月14日 時事】
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増加する携帯電話利用
北朝鮮の携帯電話普及は急速に進んでいるようです。
****北朝鮮の携帯電話加入者数 80万人突破****
北朝鮮の携帯電話加入者数が80万人を超えた。米国営放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が15日、北朝鮮で携帯電話事業を展開しているエジプトの通信大手オラスコム・テレコムの報告書の内容を報じた。

9月末現在、北朝鮮の携帯電話加入者数は80万9000人。6月末(約66万人)に比べ13万人以上増えた。報告書は、この勢いが続けば年末には90万人を超え、100万人に迫ると予想した。
北朝鮮では、同社が北朝鮮と合弁で設立した「高麗リンク」の453か所の基地局を通じ、平壌と14の主要都市、86の小都市、22の主要道路などで携帯電話を使用できる。

報告書は、北朝鮮住民の94.0%が携帯電話網を利用できる地域に居住しており、昨年7~9月期からサービスが始まったテレビ電話機能の使用量も今年6月に4倍に増加したと説明した。【11月15日 聯合ニュース】
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正規のルート以外にも、中朝国境で闇取引される携帯電話も多いようです。
携帯電話のような情報入手手段が普及によって、情報に接する機会が増加することは、将来的には北朝鮮のような情報管理・閉鎖社会を揺るがす面もあるのではないでしょうか。

【「1990年代後半の「苦難の行軍」の時よりも苦しい」】
一方で、北朝鮮の困窮を伝える情報は、比較的多く目にします。

****生活苦で自殺、麻薬」=北朝鮮住民が証言*****
北朝鮮では2009年末に実施されたデノミネーション(通貨呼称単位の変更)で生活苦が深刻になり、麻薬が広く流通されているようだ。

韓国保守団体の先進統一連合と社団法人の北韓民主化委員会は14日、ソウル市内で記者会見を行い、北朝鮮脱出住民(脱北者)を含む北朝鮮住民の統一認識調査の結果とともに、8月に実施した住民14人との対面調査の映像を公開した。
インタビューである住民は、「市場や商店は困難に陥り、多くの人が自殺した」と証言。デノミ以降の生活苦は、数百万人が餓死したとされる1990年代後半の「苦難の行軍」の時よりも苦しいと話した。

別の住民は、北朝鮮全域で麻薬が流通されているとし、新義州地域の幹部の子どもは皆所持していると伝えた。
幹部や警察などにだけ食糧が配給されているとの証言もあった。これまで韓国から大量のコメが支援されたが、住民には配給されなかったと明らかにした。また、金正日(キム・ジョンイル)総書記の実妹・金敬姫(キム・ギョンヒ)朝鮮労働党軽工業部長は、韓国が北朝鮮の子どもために送った服を、幹部らに売りさばくよう指示したという。

脱北者524人を対象に実施した統一認識調査では、38.7%が統一の障害要因として「北朝鮮の世襲体制」を挙げ、56.7%は「中国の反対」と答えた。【11月14日 聯合ニュース】
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ユニセフは国際社会に緊急資金援助を呼び掛けています。
****北朝鮮で栄養失調が深刻=国際援助を緊急要請―ユニセフ****
国連児童基金(ユニセフ)は1日、北朝鮮で子どもや妊婦の栄養失調が深刻化していると懸念を表明、国際社会に緊急資金援助を呼び掛けた。食料支援などに2040万ドル(約16億円)を要請しているが、これまでに確保したのは460万ドルにとどまっているという。

ユニセフによると、特に子どもが深刻な状態にあり、食料支援が継続できなければ成長と発育に悪影響が出ると指摘。また、15~49歳の女性の約4分の1が栄養不足になっており、病気にかかりやすい低体重児が生まれるリスクが高いとしている。【11月1日 時事】
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国際社会に挑戦的態度をとり続ける北朝鮮支援は、国民感情的には難しいところもありますが、困窮する住民を放置もできません。

進む軽水炉建設
国際的に大きな問題となっているのが、北朝鮮の核開発ですが、核爆弾に使うプルトニウム製造も可能な軽水炉の建設も進んでいるようです。

****北朝鮮の軽水炉、建屋が完成間近か…衛星で分析****
米デジタルグローブ社は15日、北朝鮮北部寧辺で今月3日に撮影した実験用軽水炉の建設現場の衛星写真を公表した。
元米政府高官らが運営する北朝鮮研究サイト「38ノース」は写真を分析し、原子炉を格納する建屋が完成に近づいているとみられると指摘した。

同サイトによると、北朝鮮が昨年11月、建設中であると明らかにした軽水炉は今年5月以降、建屋の工事に拍車がかかり、11月3日撮影の写真で、建屋脇にドーム状の屋根が準備されているのが確認された。冷却用設備やタービン建屋の建設も進んでいる。ただ、原子炉用建屋は空の状態で、原子炉などの重要設備は現場では確認できないという。
建屋などは6か月~1年で完成する可能性がある一方、原子炉が設置され稼働するには、その上2~3年が必要だという。【11月16日 読売】
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アメリカ国務省のトナー副報道官は、この軽水炉建設に関して「米国は懸念している」と表明し、北朝鮮のウラン濃縮計画と軽水炉建設が国連安全保障理事会決議と、2005年9月の6カ国協議共同声明で約束した北朝鮮が履行すべき義務事項に違反していると指摘しています。

追記
平壌の建設ラッシュについては、下記の記事もありました。
****北朝鮮:平壌建設ラッシュ 故金日成主席生誕100年控え****
北朝鮮の首都・平壌(ピョンヤン)で建設ラッシュが続いている。朝鮮労働党機関紙「労働新聞」(電子版)は16日、「平壌を雄壮華麗に整えよう」と題した社説を掲載。14日にサッカー応援のために平壌を訪れた日本人サポーターも工事が進む様子を目撃した。ただ、資金や資材の不足は深刻で、北朝鮮の当局者は頭を悩ませているようだ。
サッカー応援の公式ツアーに参加した秋田県横手市の会社経営、林博樹さん(41)は、バスの窓越しに工事の様子を見て「経済制裁の中でよくこれだけやっているな」と感じたという。

建設が進むのは主に中層、高層のアパートだ。この時期に工事を急ぐのは、来年4月の故金日成(キム・イルソン)主席生誕100周年までに現代的な都市の景観を完成したいためだ。工事がストップする厳寒期に入る前に一定のめどをつける必要がある。「労働新聞」の社説は国民総動員を呼びかけるが、すでに平壌などの大学生は今春から1年間、休学して工事現場に配置されている。

問題は資金や資材の手当てだ。貿易のために中国を訪れた平壌市民は10月、朝鮮労働党の中堅幹部が「国庫は空に近く、重点プロジェクトに回す資金も足りない」とこぼすのを聞いた。党幹部らは「8万ウォン(約620万円)程度上納すれば、誰でも(特権である)平壌の中心区域に住ませ、しかるべき機関に就職させる」とのアイデアで資金不足を解決しようとしているという。韓国の聯合ニュースは、両親が資材を提供すれば大学生の子供の動員を免除していると伝えている。【1月16日 毎日】
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