![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/af/f1f4c04df872937ffb81df421591a2cc.jpg?random=4d0cd41101820a75228f0985de8761eb)
(11月18日カイロで行われた反軍政デモ 批判の標的として掲げられたボードは、エジプト陸軍元帥、国防相として長年ムバラク政権を支えてきた人物でもある軍最高評議会議長のムハンマド・フセイン・タンタウィ氏 “flickr”より By tylerhuffmann http://www.flickr.com/photos/26319736@N03/6359507179/ )
【「軍事予算と軍の方針は、議会の承認を必要としない」】
「アラブの春」でムバラク政権が崩壊し、今月28日から人民議会(下院、定数498)選挙が始まるエジプトですが、暫定統治する軍最高評議会に対し、早期の民政移管を求める大規模デモが行われています。
****カイロで5万人デモ、早期の民政移管を要求****
エジプトのカイロ中心部にあるタハリール広場で18日、同国を暫定統治する軍最高評議会に対し、早期の民政移管を求める大規模デモがあり、ロイター通信によると、約5万人が集結した。イスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」の支持者などがデモを呼びかけた。ムスリム同胞団は、今年2月のムバラク政権崩壊前は弾圧されていた。
AP通信によると、新憲法の指針として、暫定内閣が軍に強力な権限を与える意向を示したため、イスラム主義勢力や世俗派らが反発、デモで軍部に圧力をかけた形だ。
エジプトでは、今月28日から人民議会(下院、定数498)選挙が始まる予定で、ムスリム同胞団が設立した「自由公正党」など、イスラム主義勢力が躍進するとみられている。【11月19日 読売】
***************************
こうした軍最高評議会批判の背景には、軍部の特権を維持しようとする動きがあります。
****エジプト軍の特権維持に抗議 カイロで大規模デモ****
2月に崩壊したムバラク政権に代わりエジプトの実権を握るエジプト軍最高評議会が、軍の特権を維持する動きを見せている。政党側は「『革命』がムバラクの首をすげ替えただけに終わってしまう」と危機感を強め、カイロ中心部タハリール広場で18日、数万人規模の抗議デモを開いた。
エジプトでは28日から人民議会選挙(総選挙)が行われ、新議会が中心となって憲法起草委員会(100人)をつくり、新憲法を起草することになっている。ところが今月1日、セルミ副首相が政党各派に「軍事予算と軍の方針は、議会の承認を必要としない」などとの「憲法の基本原則」を提示し、承認を求めた。
これが通れば、1952年の軍事クーデター以来、歴代の軍人大統領を通じて支配を続けてきたエジプト軍部が、新憲法下でも国民の監視を逃れ、特権的な地位を維持することが可能になる。このため、各派は一斉に反発していた。
「憲法原則」はもともと、ムスリム同胞団などのイスラム勢力が選挙で勝ち、イスラム法の導入強化などを憲法に盛り込むことを警戒した世俗イスラム派が「世俗的な市民国家の体裁を守る新憲法の原則を選挙前に決めておくべきだ」と導入を求めていた。軍部はこうした意見を逆手にとり、憲法原則の導入を通じて特権の維持を図ろうとしたとみられる。
デモでイスラム勢力は「選挙で選ばれた代表が憲法を起草するのが民主主義」として憲法原則そのものを拒否。世俗派勢力は「軍部の独裁維持だ」として原則の内容に反対。選挙で争う両派が「呉越同舟」で軍部への反発を合唱するかたちとなった。【11月19日 朝日】
*****************************
もともと人民議会選挙は9月にも予定されていましたが、組織・資金的にある程度の準備があるムスリム同胞団を警戒する、選挙準備態勢が整わない「アラブの春」を主導した若者グループの要求で延期された経緯があります。
「憲法原則」も、ムスリム同胞団などのイスラム勢力を警戒する世俗派の要求によるものですが、こうした世俗的若者グールプのイスラム勢力への警戒心を利用する形で軍部がその権力を既得権化しようとしているようにみえます。
【旧与党党員の立候補 最高裁認める】
軍部の権限維持の動きと並んで、民主化勢力が問題視しているのが旧与党・国民民主党(NDP)の元党員の立候補の動きです。
****エジプト最高裁、旧与党党員の立候補認める 議会選****
エジプトの最高行政裁判所は14日、ムバラク政権当時の与党で、その後解散した国民民主党(NDP)の元党員らが、今月28日から始まる人民議会(下院)選挙などに立候補することを認める判決を言い渡した。
NDPはムバラク政権崩壊後の4月、行政裁判所に解散と資産の没収を命じられた。ムバラク前大統領をはじめとする複数の党幹部が汚職容疑などで拘束される一方、地方の有力者を中心とする元党員らの多くは今回の選挙に無所属などとして立候補している。こうした中、北部マンスーラの地方裁判所は先週、元党員の立候補を禁ずる判決を出していた。14日の判決は、これを覆す判断を示した。旧野党や民主化団体などから、元党員の立候補禁止や公職追放を求める声が改めて高まりそうだ。
エジプト人民議会選は、28日から来年1月にかけて行われる。選挙活動は今月2日に解禁されたが、候補者リストはまだ発表されていない。今回の裁判も、発表の遅れに影響しているとみられる。【11月15日 朝日】
*******************************
28日に開始される選挙の候補者リストが11月中旬時点で発表されていないというのも、混乱ぶりが窺われます。
軍最高評議会は当初、小選挙区単純多数制の議席に立候補できるのは無所属の候補者だけとしていましたが、これでは資金や知名度のある旧与党勢力が有利になるとして、選挙ボイコットを主張する国民の批判を浴び、その後撤回しています。
しかし、多くの小規模グループからなる若者グループは、その後も旧与党関係者が立候補できることを批判して選挙ボイコットを主張していました。
一方、最大野党勢力のイスラム組織「ムスリム同胞団」は軍最高評議会の選挙法を評価。一時は若者グループとともに選挙ボイコットの姿勢も見せていましたが、「この方法で選挙に臨まねばならない」と受け入れ姿勢に転じています。【10月5日 朝日より】
このあたりは、勝てる自信と言うか、余裕の対応とみえます。
【選挙予測:ムスリム同胞団が優勢】
各メディアが報じているように、選挙の予測については、穏健派イスラム原理主義のムスリム同胞団が優勢とのことです。
****ムスリム同胞団が優勢=独裁崩壊後初の選挙戦開始―エジプト****
28日から段階的に実施されるエジプト人民議会(定数498)選挙の選挙戦が2日、始まった。国営テレビが伝えた。ムバラク独裁政権が2月に反体制運動で崩壊して以降、初の選挙となる。穏健派イスラム原理主義の最大勢力であるムスリム同胞団の優勢が予想される。
投票は28日の首都カイロなどを手始めに12月14日と来年1月3日の原則計3回、行政区単位で分割して行われ、選挙管理委員会が1月13日までに最終結果を発表する。【11月2日 時事】
**************************