孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ  国連正式加盟は困難なものの、ファタハ・ハマスの協議の動き

2011-11-27 19:46:17 | 中東情勢

(2007年3月当時の写真 ファタハのアッバス議長(左)、ハマス指導者のメシャル氏(中央)、ハマスのハニヤ首相(右) 同年6月にはハマスがガザ地区を武力占拠し、ファタハとハマスの連立政権は崩壊しました。 “flickr”より By khilafaah1924 http://www.flickr.com/photos/7235645@N02/413556490/

【「今回、正式加盟が成功するとは期待していない」】
パレスチナ自治政府・アッバス議長は、一向に進展しないアメリカ主導のイスラエルとの交渉に一時見切りをつける形で、アメリカの強い制止を振り切って国連正式加盟を申請しています。

これにより、国際世論の目を改めてパレスチナの現状に向けさせることができ、また、ユネスコ正式加盟という結果も得られました。
しかし、国連正式加盟自体については、アメリカを拒否権発動という最終手段に追い込む、安全保障理事会(15カ国)での9カ国の支持獲得は難しい情勢です。11日に安保理審査委員会が議論を終え、今後の舞台は安保理本体に移る段階ですが、安保理での採決を求めるのかどうかはパレチチナの意思次第という状況です。

アッバス議長もこの難しい情勢を認めています。
****アッバス議長、「国連加盟、成功は期待していない****
パレスチナ自治政府のアッバス議長は11日、訪問先のチュニジアで会見し、国連安全保障理事会で審議が続く国連への正式加盟問題について「今回、正式加盟が成功するとは期待していない」と述べ、困難であることを認めた。パレスチナ解放通信が伝えた。

また、国連加盟を巡るパレスチナの動きは、イスラエルとの和平交渉を拒否するものだとの批判については「国連に加盟しても和平交渉には戻る。国連では我々とイスラエルの間の問題は解決できない。交渉のテーブルにつくしかない」と述べ、和平交渉に戻る意思を強調した。

一方で「米国には、真剣に我々とイスラエルの間に立つよう呼びかけたい」と述べ、国連加盟問題を巡ってもイスラエル寄りの姿勢を崩さないオバマ政権を批判した。【11月12日 朝日】
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次善の策 オブザーバー「国家」への格上げ
国連正式加盟に次ぐ次善の策としては、パレスチナが国連オブザーバーとしての地位を現在の「機構」から「国家」に格上げする国連総会決議案を提出するということが検討されています。
この決議は、国連正式加盟に伴う安保理での拒否権もなく、総会における過半数の支持で認められます。

現在、オブザーバー「国家」としてはバチカンがありますが、かつての正式加盟以前のスイスもオブザーバー「国家」でした。
オブザーバー「機構」としては、パレスチナの他、アラブ連盟、アフリカ連合、イギリス連邦のような組織、国際赤十字、国際オリンピック委員会のような団体があります。

余談ではありますが、このオブザーバー「機構」のひとつに、マルタ騎士団(聖ヨハネ騎士団)があります。
中世・十字軍時代の活躍は承知していますが、現在もその組織は存続しているようです。
ローマにある騎士団本部ビル内は、イタリアにより治外法権が認められているとか。

****パレスチナ「国家」扱いに…国連総会議長*****
ナシル・アブドルアジズ・ナセル国連総会議長は16日、都内で読売新聞と単独会見し、パレスチナが国連オブザーバーとしての地位を現在の「機構」から「国家」に格上げする国連総会決議案の提出を模索していることについて、「パレスチナは(採択に)十分な数の加盟国の支持を持つ。一歩前進になると思う」と述べ、肯定的な見解を示した。

パレスチナは先に国連加盟を申請したが、加盟を審査する国連安全保障理事会の常任委員会は一致した見解を出せず、安保理は申請を「門前払い」する見込みだ。オブザーバーは総会での投票権はないが、発言権は認められており、地位格上げは国連加盟断念の場合の次善の策となる。ナセル氏は、パレスチナは安保理の決定後、オブザーバーの地位格上げに関する総会決議案の提出について判断するとの見通しを語った。【11月17日 読売】
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ハマス指導者と会談 「パレスチナの歴史に新しいページを開いた」】
アッバス議長は今後について、「(米国に)拒否権を行使されても、改めて申請する」と述べ、国連正式加盟はあきらめない考えを語っています。

****国連加盟、拒否権行使されても再申請 アッバス議長会見*****
パレスチナ自治政府のマハムード・アッバス議長(76)は19日、ヨルダン川西岸ラマラの議長府で朝日新聞記者との単独インタビューに応じた。焦点の国連正式加盟問題で「(米国に)拒否権を行使されても、改めて申請する」と述べ、あくまでも正式加盟を目指す考えを示した。
アッバス氏が外国メディアとの単独会見に応じるのは極めて異例。

パレスチナは9月に国連加盟を申請したが、米国が拒否権行使を明言し、絶望視されている。その一方で、10月には国連教育科学文化機関(ユネスコ)加盟を果たした。アッバス氏は「1月までは働きかけを差し控える」としたが、国連加盟へのステップとして、ほかの国際機関にも加盟を求める姿勢を示した。

一方、アッバス氏率いる主流派ファタハと、イスラム組織ハマスが今年5月の和解合意に基づき目指している新内閣発足について、「組閣より、選挙の実施を優先したい」と述べた。ハマスとの組閣に米国などが警戒感を示すなか、来年5月をめどに大統領(議長)選、自治評議会選挙を実施し、諸勢力の再統一を目指す意向を示したものだ。

新内閣を樹立する場合でも「ハマスとの連立内閣ではなく、無所属の実務者を私が任命する。過去の一連の合意を順守し、武力闘争の放棄など、従来の方針は変わらない」と説明した。【11月21日 朝日】
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最近動きが見られるのは、上記記事にあるハマスとの関係です。
アッバス議長としては、国連正式加盟問題はともかく、任期中(正確な任期はすでに終えていますが)にハマスとの関係に決着をつけたい意向のようです。

****アッバス議長、ハマス指導者と会談****
パレスチナ主要組織のファタハを率いるパレスチナ自治政府のアッバス議長と、イスラム組織ハマス政治部門最高指導者のメシャール氏が24日、エジプトの首都カイロで会談した。

アッバス氏は記者団に「われわれは、すべてのテーマについて議論をし、意見の違いは全くなかった」と述べ、「この日の合意の成果は近く表れるだろう」と説明。メシャール氏は「パレスチナの歴史に新しいページを開いた」と同調し、両者は、友好関係を深めていることを強調した。

穏健・和平派のファタハと、対イスラエル闘争を続けるハマスは、今年5月に和解案に最終合意。無所属の実務者による暫定内閣のもとで選挙をすることを決めたが、その人選が難航してきた。自治政府議長、自治評議会選の詳細を決めると目されていたが、両者とも詳しくは明らかにしなかった。【11月24日 朝日】
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パレスチナのメディアによると、両者は12月後半にパレスチナ各派を招いて和解に関する会合を開くことで合意したと報じられています。
また、自治政府議長、自治評議会選については、、来年5月までに実施することを確認したそうです。

****パレスチナ:議長と評議会選、来年5月までに実施****
パレスチナ自治政府のアッバス議長とイスラム原理主義組織ハマス指導者のメシャル氏は24日、カイロで会談し、来年5月までに自治政府議長と評議会(国会に相当)の選挙を実施することを確認した。AP通信によると、アッバス議長率いる穏健派ファタハとハマスの治安部隊を将来的に統合することでも合意したという。

パレスチナはヨルダン川西岸と、ハマスが実効支配するガザ地区で分裂状態が続いている。ファタハとハマスは今年5月に和解で合意したが、選挙までの暫定政府の首相人選を巡り意見が対立、和解の障害になってきた。今回の会談で首相選出で合意できたかどうかは不明だ。【11月25日 毎日】
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ハマス 「民衆による非暴力の抵抗」を重視
この会談を受けて、ハマスの最高幹部メシャル氏は、武装闘争路線の見直しをも示唆しています。
****「非暴力の抵抗」を重視=闘争放棄には言及せず―ハマス幹部*****
パレスチナ自治区のガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスの最高幹部メシャル氏は25日までにAFP通信のインタビューに答え、「民衆による非暴力の抵抗」を重視する考えを示した。ハマスの掲げる武装闘争路線の見直しを示唆した形だ。

ただ、メシャル氏は「武装闘争の正当性を信じている」とも発言。米欧が求める暴力放棄に応じたわけではなく、イスラエルとの和平交渉の進展に結び付くかは不透明だ。【11月25日 時事】 
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装闘争路線・イスラエル否定のままのハマスが政権に加わることは、イスラエルの反発を招き、和平交渉を更に困難にする恐れもありますが、ハマスが装闘争路線を一定に見直すということであれば、ヨルダン川西岸地区を支配するファタハとガザ地区を実効支配するハマスとの和解でパレスチナ側が一本化することで交渉の前進も期待できます。
ただ、2006年1月のパレスチナ評議会選挙でハマスが定数132の議席中で76議席を獲得して圧勝したような事態になれば、どうでしょうか・・・・。
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