
(集団レイプ事件が起きた少数民族サンタールの伝統舞踊 その伝統文化には興味深いものがありますが・・・・ “flickr”より By Shibaditya Ray http://www.flickr.com/photos/64191350@N07/7719075150/in/photolist-cL7h7A-a9g49V-jinEFH-dgoayn-8eEYjx-j7fu5p-dHZ6u8-cZusWm-8xtwb5-jiqhK5-d1WdBu-8GBKue-8TzGBp-hoeTA3-dQbQiZ-bnzZ3K-c9vqM1-b6wPAz-8tRT9f)
【“変わらぬインド”】
新興国インド社会に根深く存在する因習の弊害については、
年末12月28日ブログ「“変わるインド” “変わらぬインド”」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20131228)
2013年9月22日ブログ「インド社会の負の側面 「名誉殺人」、カースト制、そしてレイプ犯罪」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130922)
など、しばしば取り上げていますが、最近もこの種の話題をよく目にします。
****汚物を素手で清掃=カースト呪縛、130万世帯―禁止法にも抜け道・インド****
ラジュ・ラジョリアさん(45)は「私の手は汚れている」とつぶやいた。
インド古来の身分制度カースト制の底辺「不可触民」出身で、父も祖父も代々、くみ取り式トイレや下水管を素手で清掃する仕事が生業だった。1日の稼ぎは200ルピー(約320円)程度。ヒンズー教の神々の像に手を触れることすら許されず、貧困と差別にまみれて生きてきた。
カースト制のどの階級からもはじき出された不可触民はインドの全人口12億人のうち約2億人とされる。身分差別廃止を定めた憲法施行から64年が過ぎた今も、その大半が過去の呪縛に縛られている。
◇「地獄」の悪臭
「この地獄から抜け出したい」。午前7時、首都ニューデリー南部にある高級住宅地の大家から仕事の依頼が入る。ラジョリアさんの仕事道具は長さ約1.5メートルの鉄製の棒だけ。下水管の中で四つんばいになり、詰まりの原因になった汚物を取り除く。
体に染みついた悪臭をぬぐい去ることはできず、仕事後は食事も喉を通らない。25年間、非衛生的な環境で働き続けたせいか「慢性的に体調が優れず、せきが止まらない」。仕事を終えてもコップ1杯の水すらもらえず、追い払われるように次の仕事場へ向かう。
生活は苦しい。4人の子供には「公務員になってほしい」と願っていたが、次女(16)と次男(14)は、家計を助けるために同じ仕事を始めた。「これ以外ならどんな仕事でもしたいが、『汚れた者』にそんな機会はほとんどない」。ラジョリアさんは肩を落とす。
◇「写真撮らないで」
インド国会は2013年9月、手作業によるトイレ・下水管清掃業の禁止と、それによって失業する職人の社会復帰を定めた法律を成立させた。同法はこうした職業を「非人道的」と断じ、「個人が尊厳を持って生活できるよう保証する」と規定した。
ただ、「『防護装備』を提供した場合は規制の対象外」とも記している。専門家は「マスクや手袋など簡易装備を与えるだけで合法と認められる恐れがある」と批判する。
11年の国勢調査によれば、代々手作業でトイレなどの清掃をしてきた職人の家庭は75万世帯。市民団体は、実際にはその数はもっと多く、130万世帯に上るとみている。
ラジョリアさんは法律施行後もマスクや手袋なしで排せつ物を処理し続ける。「写真だけは撮らないでほしい」。自らを恥じるように丸めた背に、いまだ解けぬカーストの呪縛が見えた。【1月19日 時事】
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一体いつの時代の話かと、耳を疑うような集団レイプ事件も報じられています。
****集団レイプの刑を命じたインドの村、自治組織「パンチャヤット」とは****
インド東部の西ベンガル州で、別の村の男性と一緒にいた未婚女性(20)が村の長老会議の命令で罰として集団レイプされた事件で、地元警察当局は23日、告訴された男13人全員を逮捕したと発表した。レイプを命じた長老会議の議長も、女性をレイプした容疑者に含まれているという。
被害女性はテレビの取材に顔をスカーフで隠して応じ、「父と同じくらいの年齢の男たちにレイプされた」と訴えた。
事件は西ベンガル州の州都コルカタから約240キロ西方にある少数民族サンタールの村、スバルプルで起きた。
被害者の女性は、別の村出身のイスラム教徒の男性と関係を持ったとして、村の長老たちで構成された自治組織から2万5000ルピー(約4万円)の罰金を支払うよう命じられた。しかし女性の家は貧しく、両親が罰金を支払うことはできないと述べたところ、長老会議の議長がレイプを命じたという。
女性の母親によると、長老らは警察に訴え出ないよう女性の家族を脅し、さらに当初は女性を病院に連れていくことも認めなかった。母親はインド紙タイムズ・オブ・インディア に対し「犯罪を犯したのは同じ村の人々だ。彼らは私の娘をなぶり、深夜に家に放り込んでいった」と非難した。
逮捕された13人の男は、女性が名指ししたという。
■村を支配する「パンチャヤット」
インドでは北部を中心に、部族やカーストに基づく年配男性らによる合議制の自治機関「カップ・パンチャヤット」が村人の生活に強い影響力を持っており、非道徳的な行いなど地域社会において違反とみなされる行為に制裁を下すことも多い。
インドPTI通信によれば、西ベンガル州の村では4年前にも、10代の少女が男性との恋愛を理由に裸で村内を引き回される事件があった。
だが、インドにおける女性の権利向上を目指して活動する「全インド進歩的女性協会(AIPWA)」のカビタ・クリシュナン氏は、地方の村だけの問題ではないと指摘する。「同様の精神構造は首都デリーのような都会にも存在する。インド社会とカースト制度に深く根付いた問題だ」
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルの上級研究員ディビヤ・アイヤー氏は、村の長老会議による制裁は非合法にも関わらず続けられていると指摘。
「カップ・パンチャヤットは、女性に対して法の範囲を逸脱した非人間的で性暴力的な罰を命じることで悪名高い。『名誉殺人』もその1つだ」と声明で批判した。【1月24日 AFP】
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“インドの地方では、部族や出身地が異なる男女の結婚を認めないところが多く、おきて破りの男女が罰として裸で村を歩かされたり、殺害されたりするケースが相次いでいる。集団レイプの罰は極めて異例。
インドでは2012年に首都ニューデリーで起きた集団レイプ事件(女子学生が死亡)以降、レイプ根絶の声が高まったが、今月、首都中心部でデンマーク人女性観光客(51)が集団レイプの被害に遭うなど、レイプ事件が後を絶たない。”【1月23日 毎日】
【“やりすぎ”“暴走”か、変革か?】
こうした“変わらぬインド”に風穴を開ける可能性として、1月10日ブログ「インド政治に風穴をあけられるか・・・新党「一般人党」のケジリワル党首の挑戦」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140110)では、二大政党を押しのけてデリー首都圏(州)政府首相に就任した新党「一般人党」(AAP)のアービンド・ケジリワル党首(45)を取り上げました。
SNSを活用し、ボランティアに支えられたその活動は、これまでのインド政治にない新しさを感じさせます。
ただ、ケジリワル州政府首相の行動には、やや暴走気味というか、ポピュリスト的な危うさもつきまといます。
****インド:デリー州政府首相「私は無政府主義者」警察と対峙****
インド・デリー首都圏(州)のケジリワル州政府首相が、デリー警察を管轄する中央政府と対立している問題で、ケジリワル氏は20日、中央政府に抗議する無期限デモに入った。警察の管轄権が州政府に移行されるまで続けるという。
ケジリワル氏は首都ニューデリー中心部の鉄道省前に支持者約500人と共に居座り、20日は路上で毛布にくるまって夜を明かした。内務省はデモの広がりを防ぐため、警察官4000人を配備して周辺一帯を封鎖、地下鉄4駅を閉鎖して対抗している。現場では、21日もデモ隊と警察隊がにらみ合いを続けた。
首都行政トップの州政府首相がデモを率いて中央政府と対峙(たいじ)する異例の事態に、民放各局は「無政府状態」「やりすぎ」など批判的に報じた。これまで社会活動家として、政府の腐敗を批判するデモなどを繰り返してきたケジリワル氏は「私は無政府主義者」と開き直った。
ケジリワル氏は、新党・一般人党を率いて昨年12月のデリー首都圏議会選に初出馬して当選し、州政府首相に就任した。それ以来、公約に掲げた電気・水道料金の大幅値下げ、外国小売り大手のインド進出のための規制緩和撤回などを次々と打ち出した。
警察改革も主張しており「麻薬販売人や売春婦を即時逮捕せよ」と命じたところ、警察側から「令状なしにはできない」と拒否され、今回の対立にエスカレートした。
首都中心部では26日に「共和国記念日」の軍事パレードなどの式典が開かれる。それまでに中央政府がデモの強制排除に動く可能性がある。共和国記念日式典は毎年、外国の首脳を迎えて開かれ、今年の主賓は安倍晋三首相。【1月21日 毎日】
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原因や背景、もたらす影響、手続きなどを考慮せず、一般国民にアピールする目に見える結果だけを即時に求める・・・といった風にも見えます。
現実社会の壁に風穴をあけるためには、そのぐらいの荒療治的な手法が必要なのかもしれませんが。
****インド:無期限デモ終了、ケジリワル州首相が「勝利」宣言****
インド・デリー首都圏(州)のケジリワル州政府首相が、デリー警察を管轄する中央政府と対立している問題で20日から中央政府に抗議する無期限デモを続けていたケジリワル氏は、中央政府側が21日、妥協姿勢を見せたため、2日間でデモを終結させた。
ケジリワル氏は警察の管轄権が州政府に移行されるまで続けると訴えていた。デリー州政府のジャング副総督が21日、ケジリワル氏が「命令を聞かない」として問題視していた警察官2人に休暇を取らせ、事実上の停職処分にしたため、ケジリワル氏は「我々の勝利だ」としてデモを終結させた。副総督はインド大統領が任命し、デリー州政府で中央政府を代表する人物。
首都行政トップの州政府首相がデモを率いて中央政府と対峙(たいじ)する異例の事態に、民放各局は「無政府状態」「やりすぎ」などと批判的に報じた。これまで社会活動家として、政府の腐敗を批判するデモなどを繰り返してきたケジリワル氏は、「私は無政府主義者」と開き直ったが、デモ参加者が1000人を超えなかったことや、世論の批判が高まったこともあり、中央政府側の妥協策に乗ったとみられる。
ケジリワル氏は、新党・一般人党を率いて昨年12月のデリー首都圏議会選に初出馬して当選し、州政府首相に就任した。【1月22日 毎日】
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ケジリワル州政府首相は「我々の勝利だ」としてしていますが、今回の件では世論の支持は得られなかったようです。
5月に予定されている総選挙及びその後の新首相については、地元州の経済成長を牽引した手腕が評価される一方で、原理主義者ともいわれ、過去のイスラム教徒虐殺問題との関係も指摘されるインド人民党(BJP)のモディ氏が本命とされていますが、劣勢と見られる国民会議派は名門ガンジー家の「プリンス」、ラルフ・ガンジー副総裁を温存するようです。
****ラフル・ガンジー氏、首相候補とせず****
PTI通信がインド最大与党、国民会議派筋の話として伝えたところによると、同党は16日に開いた会合で、今年5月までに行われる総選挙はラフル・ガンジー副総裁(43)を首相候補とせずに戦うことを決めた。
ガンジー氏が選挙戦を主導することは決まったものの、母親のソニア・ガンジー総裁は会合で「投票前に首相候補を指名するという伝統はない」と述べたという。
汚職問題や景気減速により現時点で劣勢とされる会議派がこのまま総選挙で負ければ、ラフル氏を首相候補にしたことで「ラフル・ブランド」を傷つけるとの見方が出ていた。
優勢が伝えられる最大野党、インド人民党(BJP)は、グジャラート州首相のナレンドラ・モディ氏を総選挙で首相候補に据えている。【1月17日 産経】
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負けそうだから・・・ということで、母親の指示で首相候補に立たないというのは、いかにも虚弱な印象があります。
負け戦の傷は政治家の勲章というぐらいの気概がなければ、インド社会の現実はとうてい変えられそうにないようにも思えます。