(写真は【2月4日号 newsweek日本版】より 正確なところはわかりませんが、記事本文との関係からすれば、イスラム教徒住民への報復行為に走っているキリスト教系の武装勢力ではないでしょうか。
中央人物が手にしている“ナタ”・・・・アフリカの住民虐殺で頻繁に使用されるものですが、個人的には“ナタ”で切り刻まれるぐらいなら、銃で撃ち殺してほしい・・・と思います。怖いです。
画像が不鮮明ですが、写真左の人物が手にしているのは“弓”・・・これもアフリカの住民レベルの衝突ではよく使用されるようです。)
【止まない暴力の応酬】
中央アフリカ共和国では、再三取り上げているように、イスラム教系武装勢力「セレカ」が権力奪取し、その指導者ジョトディア氏が暫定大統領に就任するも混乱を収めきれず、周辺国の圧力もあって辞任。
1月20日には、キリスト教徒である首都バンギの女性市長カトリーヌ・サンバパンザ氏(59)が新たに暫定大統領に選出されました。
(1月22日ブログ「混乱が続く中央アフリカと南スーダン」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140122)
昨年来の一連の混乱で、殺りくやレイプ、略奪行為が横行し、人口約460万人の約2割が国内避難民や難民となっていると言われています。
今年に入っても、統制を失ったイスラム教系武装勢力「セレカ」兵士による暴力行為、キリスト教系武装組織との抗争、キリスト教系住民によるイスラム系住民への報復行為・・・・宗教間対立の様相を呈した住民同士の暴力は収まっていません。
現地を訪れた国連人道問題調整事務所(OCHA)のジョン・ギング氏は1月16日、「ルワンダやボスニアなどで見られたあらゆる要素が備わっている。ジェノサイドの要素があることに疑いはない」と警告。残虐行為が日常化し、全国民に恐怖がまん延していると訴えています。
****女性大統領と止まらない殺戮*****
未曽有の人道危機が行している中央アフリカ共和国で先週、首都バンギの女性市長カトリーヌ・サンバパンザが暫定大統領に就任した。この国では初の女性大統領だ。
中央アフリカでは、昨年3月のクーデターでイスラム教徒の民兵組織「セレカ」の最高指導者ミシェル・ジョトディアが大統領に就任。
その後、イスラム教徒と人目の半数以上を占めるキリスト教徒との間で対立が激化した。ジョトディアは宗教対立を鎮めることができず、今月10日に辞任して、国を去った。
対立の激しさを見れば、新大統領の前途は多難だ。バンギでは昨年12月だけで1000人以上が死亡し、100万人近くが家を追われて避難生活を余儀なくされている。
サンバパンザは選出後すぐに両勢力に武器を手放すよう求めたが、その直後にナタなどで武装したキリスト教徒の武装組織「反バラカ」がバンギのイスラム教徒居住地域を襲撃。女性や子供を含む数百人が放火や略奪を行った。
アフリカ連合と旧宗主国フランスは部隊派遣で沈静化を目指すが、暴力の応酬はやむ気配がない。
サンバパンザはさらなる外国部隊の介入を求めているが、両勢力の憎悪は既に手を付けられないレベルに達している。【2月4日号 newsweek日本版】
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また、アフリカの紛争でしばしば見られるように、中央アフリカでも少年兵が問題となっています。
****中央アフリカに少年兵6000人=「前例のない残虐さ」―国連代表****
子供と武力紛争に関する国連特使を務めるゼルーギ事務総長特別代表は22日、宗教間の武力抗争が続く中央アフリカ共和国情勢について安保理で報告し、最大で推定約6000人の子供が兵士として駆り出されていると明らかにし、「紛争は前例のない残虐さを伴っており、子供に与える影響は著しい」と指摘した。
中央アフリカでは、少数派イスラム教徒主体の武装勢力「セレカ」の旧戦闘員と、多数派キリスト教徒中心の民兵の抗争が激化の一途をたどっている。特別代表は「子供が宗教に沿って分断され、それぞれの武装勢力に操られている」と述べた。子供を標的にした攻撃、殺害も起きているという。【1月23日 時事】
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【国際社会の関与】
これまで旧宗主国フランスが兵士1600人を派遣してAU(アフリカ連合)部隊を支援して治安維持にあたっていますが、直接介入には消極的だったEUも500人規模の部隊派遣を決め、その武力行使について国連安保理が容認する決定を下しています。
****安保理、EU部隊の武力行使容認 中央アフリカ情勢****
無政府状態が続くアフリカ中部の中央アフリカ情勢で、国連の安全保障理事会は30日までに、平和維持部隊の活動継続と共に欧州連合(EU)派遣の部隊に武力行使を認める決議を全会一致で採択した。
国連は報道発表文で、同国における暴力と報復の循環が増大し、治安状況が悪化の一途をたどっていると指摘。
決議で、国連の平和維持活動は来年1月31日まで継続されるとし、一部の紛争当事者の渡航禁止や資産凍結、武器禁輸の継続も盛り込んだ。
中央アフリカでは現在、アフリカ連合(AU)主導の平和維持部隊約4000人が活動。EUでは、同国の旧宗主国フランスが1600人を派遣してAU部隊を支援などしている。(後略)【1月30日 CNN】
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“内向き”の姿勢を強めているアメリカは、このところアフリカへの直接関与は控えているように見えます
****中央アフリカの抗争で制裁も=米****
ケリー米国務長官は26日、声明を出し、中央アフリカ共和国で続く宗教抗争に対して「米国は深く懸念している」と表明した。
その上で、情勢を一段と不安定化させたり、自己の目的のために暴力を増長させたりする者への制裁を検討していると述べた。【1月27日 時事】
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【滞る難民支援】
治安が改善しない状況で、国連WFPなどによる難民への食糧支援も滞っています。
下記は、 国連世界食糧計(WFP)による報告です。
****中央アフリカ共和国 食糧輸送ルートの安全確保が問題****
紛争が続く中央アフリカ共和国では治安悪化のため物資の供給が滞り、支援用の食糧が枯渇寸前となっていました。
が、27日、アフリカ主導中央アフリカ国際支援ミッション(MISCA)が護衛する中、カメルーンとの国境で止まってしまっていたトラック60台が支援物資等を載せ、武装勢力の検問所を越えて600キロの道のりを首都バンギまでやってきました。
うち10台は国連WFPの食糧を積んだトラックで、250トンの米とトウモロコシ粉が到着しました。
しかし、増え続ける避難民に対して命綱である食糧支援を続けるには輸送ルートの安全確保が喫緊の問題となっています。
デニス・ブラウン国連WFP西アフリカ局長は、「中央アフリカ支援ミッションおよびカメルーン・中央アフリカ政府担当者の良好な協力関係により、備蓄食糧が枯渇する前に貴重な食糧がとどきました。しかし、今回届いた食糧は中央アフリカで1ヶ月に必要となる支援用穀物の5パーセントに過ぎず、輸送に当たっては引き続き護衛が必要です。」と述べました。
カメルーンとの国境にはまだ国連WFPの支援用穀物を積んだトラック41台が止まったままです。他にも国境には数百台の車両が止まっています。
首都バンギまで護衛をするという申し出はあるものの、運転手たちは国境を越えることに不安を感じています。
同国への食糧供給は大きく停滞しています。ブラウン国連WFP西アフリカ局長は、「紛争で避難を余儀なくされている人たちは食糧支援に頼っています。そんな中で食糧の供給を止めることはできません。国連WFPは国境で止まってしまっている物資が流れるようすべての勢力と協力すると同時に、最後の手段としてはカメルーンからの食糧の空輸も視野に入れています。しかし、空輸はコストが大変高くつくことになります」と話しています。
国連WFPはまず、バンギ国際空港に避難している人たちに対する食糧支援を優先的に行うとともに、北西部の街ボサンゴア付近で4万人への食糧配布を始めました。
バンギへの安全な物資輸送が確立されるまで、他の地域への食糧支援は実行できません。すべての勢力に対し、人道支援関係者および物資が安全かつ自由に通行し、困っている人々に支援を届けられるよう求めています。
今年初めから今までに国連WFPはバンギや北西部の町ボサンゴアおよびボアで19万3千人に食糧を届けました。この中には、バンギ国際空港に避難している5万人も含まれているほか、首都各所にある小規模の避難民キャンプでも2万5千人に食糧を配りました。
国連WFPは今後6ヶ月間で中央アフリカの125万人に食糧支援を行うため、1億700万ドルを必要としています。
12月末にバンギおよびボサンゴアの86ヶ所で行った調査では、260万人が人道支援を必要としており、特に女性は保護と食糧を必要としているという結果が出ています。【1月29日 PR TIMES】
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政府軍がどうなったのか定かではありませんが、おそらく機能しない状況でしょう。
暴力の応酬を止めるには国際社会の直接的な介入を拡大するしかないでしょう。