孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

モルドバ  議会選で親EU派が辛勝  EU、ロシアの綱引きを背景に、国論が二分した状態が続く

2014-12-01 23:04:58 | 欧州情勢

(首都キシナウのルーマニア大使館に並ぶ人々 想像ですが、出稼ぎのためのビザ申請ではないでしょうか。 “flickr”より By rbnpress redactia https://www.flickr.com/photos/124966268@N08/15777663876/in/photolist-q3dDMw-q59jDH-----------q5s127-pMTxtK-q5rZFC-q5iXdv-pMTx9g-pXDgoN-picZDo-q5Eds8-q47P2q-pikZ25-q1TkAf-q9A5A1-pBG3Zy-peTbMm-pFsj8J-pNRJ4t-pNT9ym-pNTzEJ-p9rMeQ-p9tW7p-pNRYX6-pNP1Sr-pNT5ZN-pFahLQ-pF4Xbg-pXCCY5-pF7hs7-pF7hub-pXuFTc-pF4Xc8-paVtXc-q18miL-pY6hqM-pQRZQr-q7z922-q5tXNQ-q7H8p1-pQbQEm)

EU加盟路線は継続されるとみられる
旧ソ連構成国モルドバは北及び東をウクライナ、西をルーマニアにはさまれたような位置にあり、人口約348万人、面積は九州ほどの小国です。

経済的には、「欧州最貧国」とも言われるモルドバは極めて厳しい状況にあり、出稼ぎのために出国した親に見捨てられた孤児が大きな社会問題ともなっており、欧州のなかにあって絶対的貧困に喘ぐ国でもあります。
(2011年12月29日ブログ「ソ連崩壊から20年 経済崩壊モルドバで深刻化する孤児問題 コソボのセルビア系住民は・・・」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20111229

モルドバは民族的にはルーマニア系が多く、独立時には、“将来的にはルーマニアとの統合”ということがモルドバ・ルーマニア双方に想定されていました。

一方、モルドバの東部ドニエストル川東岸のウクライナ国境に接する細長い帯状の地域はロシア系住民も多く(民族構成は、ルーマニア(モルドバ)系が31.9%、ウクライナ系が28.8%、ロシア系が30.4%)、1990年に一方的に「沿ドニエストル共和国」(人口55万人)として独立を宣言しています。

91~92年の内戦を経て、ロシアの支援を受けた親ロシア派住民が実効支配していますが、国際的には独立は承認されていません。

「沿ドニエストル共和国」はロシア編入を求めていますが、ロシアは対外的な配慮もあってこれに応じてはいません。

この欧州からもロシアからも見捨てられたようなモルドバですが、ウクライナの緊張及び欧州とロシアの対立に伴って、その微妙な状況に目が向けられています。

欧米とロシアのどちらとの関係を重視するかで揺れてきたモルドバは、2009年、EUへの加盟方針を明確に打ち出し、ことし6月にはウクライナなどとともに、EUへの加盟の前提となる自由貿易協定(FTA)を柱とする「連合協定」に署名しました。

これに対しロシアは、7月にモルドバからの主要産品のワインや青果の輸入を制限する措置をとるなど、欧米との関係強化を図るモルドバに揺さぶりをかけています。また、モルドバはウクライナ同様にエネルギー的にもロシアに依存しています。

そのモルドバで11月30日に議会選挙が行われ、親EU派と親ロシア派のいずれが多数を制するかが注目されましたが、結果的には親EU派がかろうじて勝利し、現在の親EU路線が継続されることになりました。

****親EU派が辛勝=加盟路線は継続か―モルドバ****
将来の欧州連合(EU)加盟を視野に入れる旧ソ連モルドバで30日、議会選(定数101、任期4年)が行われた。1日までの開票で、連立を組む親EU派各党が得票率計44%で、親ロシア派各党(同計40%)に辛勝した。

親EU派が連立を維持し、リャンカ首相のEU加盟路線は継続されるとみられる。

一方で、親ロ派各党が反対票の受け皿となった格好で、自らの経済圏に引き込もうとするEU、ロシアの綱引きを背景に、国論が二分した状態が続くことになる。

中央選管の暫定結果(開票率85%)によると、得票率はリャンカ首相の自由民主党が19%、民主党が16%、自由党が9%と、親EU派で計44%。親ロ派は、ロシアとの協調を鮮明にした社会党が22%で、最大野党だった共産党の18%をしのいだ。【12月1日 時事】
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選挙を巡っては、親EU派、親ロシア派双方が激しく動いたようにも報じられています。

“モルドバは隣国、ウクライナと同様に東部に親露分離派地域「沿ドニエストル」を抱える。報道によると、この地域の住民は、従来は行っていなかった有権者登録をしたとされ、親露派政党の得票が上積みされる可能性がある。”【11月29日 産経】
 
“ロイター通信によると、事前の世論調査では親露派勢力がややリードしていた。だが、裁判所は27日、親露派3政党の一つの「祖国」に対し、違法行為による選挙参加禁止を決定。親欧米派に有利な状況となった。”【11月29日 毎日】

ロシア編入を望む「沿ドニエストル共和国」】
モルドバは歴史的にもロシアとルーマニアの間で揺れ動いてきた地域です。

“ルーマニアとモルドバにあたる地域は14世紀からモルドバ公国として存在し、モルドバ語はルーマニア語の一方言。帝政ロシアが1812年、現在のモルドバ地域を併合したが、1918年にはルーマニアに編入された。ソ連は24年、現在の沿ドニエストルに自治共和国を創設した上で、40年には独ソ不可侵条約の秘密議定書に基づいてモルドバをソ連に組み入れた。”【3月30日 産経】

ウクライナ問題と並行して、「沿ドニエストル共和国」へのロシアの対応が注目されますが、ロシアのクリミア編入を受けて、先述のように「沿ドニエストル共和国」はロシア編入を表面化させています。

****ウクライナ:隣国「沿ドニエストル」も露編入を熱望****
・・・・欧州連合(EU)入りを目指すモルドバの首都・キシニョフから東へ車で1時間。検問所で「入国審査」を受けて沿ドニエストル域内に入った。

「首都」のティラスポリにはロシア語の看板が目立つ。独自通貨「沿ドニエストルルーブル」が流通し、軍や警察もある。国際的には承認されていないが、モルドバの施政権が及ばない「国家」だ。

90年にルーマニアとの関係強化を掲げたモルドバ政府にロシア系住民が反発し、内戦に発展した。ロシア軍は独立派を支援。停戦後も「平和維持部隊」として駐留している。

「我が国民約50万人の安全保障を1500人のロシア軍が守っている。まさに平和維持活動だ」。ティラスポリ市内で取材に応じたウラジーミル・ヤツレブチェク前「外相」(34)は、ロシア軍を手放しでたたえた。会社員のタチヤナさん(18)は「ウクライナ東部でも、ロシア系住民は必ずロシアが守ってくれる」と話した。

経済面でもロシアの支援は手厚い。「欧州最貧国」とされるモルドバのでこぼこ道は、沿ドニエストルに入ると整然とした舗装道路に変わる。
天然ガスなどの資源もロシアが供給し、高齢者の年金もロシアが一部を支給する。

ティラスポリ法律研究所のニコライ・モレンスキー教授(62)は「(ロシアへの編入で)クリミアもきっとよくなる」と語った。

2006年の住民投票では、将来のロシアへの編入を約97%の住民が支持。4月16日には議会で、ロシアに独立の承認を求める文書が採択された。

こうしたラブコールに、ロシアは「第二のクリミア」に向けた具体的行動は見せていない。親欧米派暫定政権に率いられるウクライナと、EU入りを目指すモルドバに囲まれた沿ドニエルトルと、ロシア軍の黒海艦隊基地を抱えるクリミアとは戦略的意味も異なる。ロシアは沿ドニエルトルを保護下に置いても、編入はリスクが大きすぎると判断しているようだ。

かつてモルドバ軍との激戦の地となったベンデルイ。ロシア軍を賛美する碑の近くにたたずんでいた農場勤務のアレクセイさん(55)は「ここは元々ソ連だったのだから、ロシアに入るのは当然。でも、すべてはロシア次第だ」と語った。【4月30日 毎日】
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なお、約97%の住民がロシア編入を支持したされる2006年の住民投票は、投票率・得票率ともに相当に怪しげなもので、欧米側はこの投票結果を認めてはいません。

5月には、ロシアへの編入を求めるロシア系住民の署名を巡る騒動も報じられています。

****ロ副首相に編入要請署名託す=「沿ドニエストル」3万人分****
ロシアのロゴジン副首相がこのほど、モルドバ東部で分離独立状態にある「沿ドニエストル共和国」を訪問した際、ロシアへの編入を求めるロシア系住民の署名約3万人分を託されたことが12日までに分かった。インタファクス通信などが伝えた。

ロゴジン副首相は、ウクライナ南部クリミア半島編入をめぐって欧米から制裁対象に指定されている。搭乗機は往復ともウクライナ上空の通過を拒否され、復路はモルドバの首都キシニョフに強制着陸させられた。ロシア系住民の署名はモルドバ当局に押収されたという。【5月12日 時事】 
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ロシア副首相搭乗機を強制着陸させ、署名を押収・・・・随分と思い切った対応のようにも思えます。

動いても、動かなくても・・・
今後について常識的に考えれば、ウクライナ問題での欧米による制裁と原油価格下落で苦境にあるロシアが、更にモルドバやグルジアなどで問題を拡大するというのは考えにくいところですが・・・・。

いずれにしても、選挙では親EU派が過半を制したものの、EUとロシアの綱引きを背景に国論が二分した状態が続き、今後とも進路には苦慮しそうです。

“「欧州最貧国」とされるモルドバは経済再生をかけて欧州連合(EU)への加盟を目指すが、ロシアとの経済的な結びつきも強い。「少しでも動けば必ずどこかに摩擦が生じる」(独立系新聞のカルク・ドミトリ副編集長)という困難な状況下にある。”【4月19日 毎日】

ただ、動かないと「欧州最貧国」の苦境から抜け出せません。
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