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(ネパール・カトマンズ 人身売買業者から救出され、施設で読み書きや手仕事を習う少女たち ネパールの貧しい地域の親から買われた少女の多くはインドへ送られ、売春を強要されます。“flickr”より By Peace Gospel https://www.flickr.com/photos/peacegospel/14206563167/in/photolist-ifQcET-nTTmDv-7Se7Zx-fQeqB2-4f5qeH-oHqyu1-mRpEwV-mRpVig-7vT9zt-8yAPSE-4vFxZG-7ciTkC-mLv3pn-7ciLXG-7ceUiH-7ceWmR-nDomhg-mmxt8E-dHP6v6-6v24SS-7n42Tu-bBRZKJ-7omWDr-7oqQNE-3SVZh-9PvFFv-otQbcW-48WfAH-3mwUVY-bANfRV-ehGtEj-4UcHbz-4bHERE-4UcHbx-daKc6q-dpx4RK-8MzDub-4KBKAf-VfbH7-kQczVi-7SFA6x-pQEhBK-b35X5K-4UcHbp-b2dkrr-4Uckw2-4UcHbF-4UcHbv-2VmeMy-aWxC6D)
【「経済が発展したというが、貧しい者はいっそう貧しくなっている」】
昨日ブログで取り上げたマララさんとともにノーベル平和賞を受賞したのが、インドの児童人権活動家、カイラシュ・サティアルティ氏(60)。
サティアルティ氏は1980年以降、インドの農場などで労働を強いられていた子供約8万人を救出してきたました。
授賞式では「すべての子供たちに生きる権利、自由になる権利、健康になる権利、教育を受ける権利を与えるのはきょうだ」と語り、政府や企業、宗教指導者らに子供への暴力を終わらせる努力に取り組むよう求めています。
****世界で1億6800万人****
国際労働機関(ILO)が2013年に発表した報告書によると、働かされている18歳未満の子供は世界で1億6800万人。子供全体の11%にあたる。
最も多いのは、アジア太平洋地域の7770万人。次いでサハラ以南アフリカの5900万人。
最も多い産業は農業で58.6%、サービス業25%、工業7.2%、家事労働(メイドなど)6.9%となっている。全体の68.4%が、家族の所有する畑での耕作や放牧など、現金の支払われない労働だ。
ILOは児童労働のうち、(1)人身売買、徴兵を含む強制労働や奴隷労働(2)売春やポルノ関連(3)薬物関連(4)児童の健康、道徳を害するおそれのある労働を「最悪の形態の児童労働」と位置づけ、16年までに根絶することを目標としている。【12月11日 朝日】
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インドでは、サティヤルティさんをはじめとする各NGOや政府の取り組みもあり、労働を強いられている5~14歳の子供の数は統計上、2001年の1266万人から11年には売春を除き435万人に減ったとされていますが、“実態はもっと多いというのが通説で、国連児童基金(ユニセフ)の推計では2800万人に上る。09年には120万人が児童売春を強要されたとの別の政府調査もある。”【12月12日 産経】とも。
ILOが「最悪の形態の児童労働」と位置づける児童買春については、売春で働く母親(多くは不可触民やカースト制下位層の出身者)の娘もまた売春でしか生きていけない・・・という連鎖があります。
****インドの貧困層地域、児童売春いまだ深刻 救出活動のNGO「ノーベル賞励み」****
働かされる子供たちの救出に尽くしてノーベル平和賞を受賞したインドの人権活動家カイラシュ・サトヤルティさん(60)の母国インドでは、児童労働が深刻だ。
なかでも、貧困層が多い北部ウッタルプラデシュ州では、児童売春を強いられる少女が少なくない。
ガンジス川を抱く仏教とヒンズー教の聖地、バラナシにある州最大の売春街では、ここで働く女性の娘を母親と同じ職に就かせないための努力が続けられていた。
その売春地帯は町の中心バラナシ駅からわずか2・5キロのところにあった。1・5キロほどの路地沿いで約350人の女性が働いている。入り口近くに、児童売春・労働から子供を救う活動をしている非政府組織(NGO)「グリア」のビルが建つ。
売春女性の子供50~60人が、広間で黙想を始めた。すると、施設に通って4年になる少女、シャシさん(13)が涙を流し出した。
「子供たちは日ごろ、学校や地域で売春婦の子供だとののしられ、傷ついている。ほとんどみな、父親が誰なのかわからない。心に闇を抱えている」
グリアを運営するサントラ・マンジュさん(34)はこう話した。
ここでは黙想や工作、描画、授業を通じて子供に心のケアを行っている。
インドでは、大人の売春は売春宿を使ったり、斡旋(あっせん)業者を通じたりしなければ合法だが、18歳未満は違法。
かつてこの通りには少女があふれていたが、グリアの活動で約10年前に姿を消した。少女らは別の仕事に就くようになり、シャシさんも「将来は先生になりたい」と言う。
ただ依然として3~4割の少女は、別の場所を見つけて売春するようになるという。(中略)
マンジュさんの夫でグリア代表のアジート・シンさん(44)は「児童売春は増えているという印象だ。経済が発展したというが、貧しい者はいっそう貧しくなっている」と訴えた。
貧困家庭では、良い働き口があるとか、ダウリ(持参財)なしで娘の嫁ぎ先があるといった話に乗せられ、親が子供をわずかな金額で人身売買業者に売り渡してしまう。
「売春女性の大半はカースト制の不可触民やシュードラなど下位層の出身者。この世界に入った少女は稼ぎの8割を巻き上げられ、奴隷的労働を強いられる」
ウッタルプラデシュ州では、サトヤルティさんも数年前、れんが工場などで働かされる子供を救出した。シンさんは、今回の受賞について、「この地域の問題が注目され、私たちのようなNGOの活動にも日が当たった」と祝福している。【12月12日 産経】
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【「子供の仕事場が工場から自宅の土間に変わっただけだ。問題が地下に潜った」】
児童労働を単に法律で規制するだけでは、工場ではなく「内職」という各家庭における労働に形を変えるだけにすぎず、社会の目の届かないところに潜ってしまうという問題もあります。
****児童労働、絶てぬ悪習 インド、働く子供435万人 「内職」で規制くぐり抜け****
インドの児童労働問題活動家カイラシュ・サティヤルティさん(60)が10日、ノーベル平和賞を受賞した。インドでは400万人を超える子供たちが働かされている。児童労働の現場を歩いた。
「学校? 行ってみたいけど、働かないと」
首都ニューデリーから南東に車で4時間。ガラス細工で知られるフィロザバードのスラム街の軒先で、兄や妹と並んで半円状のガラスをバーナーであぶって腕輪にする作業をしていた少女(14)は言った。
「煙を吸い込むと胸が痛くなる。いつも炎を見ているから目も痛くなって、寝るときにしみてつらい」
得られる対価は、5人家族が一日働いて200ルピー(400円)程度。母親は学校に通ったことがない。自分の年齢も知らない。「子供たちを学校に行かせたら、みんな暮らしていけなくなる」
インドでは、サティヤルティさんをはじめとする各NGOや政府の取り組みもあり、働く子供の数は統計上、2001年の1266万人から11年には435万人に減った。
フィロザバードで児童労働問題に取り組むNGO「女性と子供の権利キャンペーン(CWCR)」のディリップ・セバルティ代表(42)によると、この十数年で、児童労働の温床だったガラス細工やじゅうたん織りの工場から、子供たちの姿が消えた。
しかし、工場主らは代わりに、「内職」を各家庭に発注するようになった。家庭内で親が子に何をさせようと、企業に児童の雇用を禁じた法律の対象外だからだ。セバルティさんは「子供の仕事場が工場から自宅の土間に変わっただけだ。問題が地下に潜った」と指摘する。
人口約60万人のフィロザバードでは、今も4万5千人の子供が働いているとセバルティさんはみる。子供を働かせる親の多くは学校で学んだことがない。その子供は働き続け、やがて教育を受けたことのない大人となる。「無知と貧困の悪循環だ」という。
そこで、スラム街に教室をつくり、子供たちに無料で読み書きを教える。母親たちの自助グループもつくり、手芸や酪農など、より割のいい仕事を教えて悪循環を絶つ道を探ろうとしている。
■だまされ売られた
「窓が開いていたから逃げたの。外に出たら警察の人に声をかけられて、ここに来ることになったの」
東部ジャールカンド州ランチ近郊。1カ月ほど前にニューデリーから逃げてきた少女(12)はか細い声で言った。
児童労働問題に取り組むNGO「インド農民委員会(BKS)」によると、少女は同州の山村で育ったが、1年ほど前に近所の男にだまされて連れ出され、メイドとして売られた。
警察に保護されて同州内まで戻ってきたが、文字が読めず自宅の住所を覚えていないため親元に帰れず、BKSが運営する保護施設で暮らす。
BKSのサンジェイ・ミシュラ理事長は「こうした子をニューデリーの中流・富裕層が人身売買と知りながら雇い、住み込みで使っている」と語る。BKSによると、同州で年1万~1万4千人の女の子が行方不明となる。多くはメイドなどとして売られるという。
ランチの寄宿舎学校で学ぶアールティ・クマリさんは16歳だという。5歳の頃に東部の都市コルカタにメイドとして売られ、2年後に逃げ出した。自宅の住所を知らなかったため、家族とは会えないまま。正確な生年月日も分からないため、保護された3月10日を「誕生日」にしている。
NGO「セーブ・ザ・チルドレン」などと協力して村々を回り、子供を学校に行かせることの大切さを寸劇などで伝える活動を続けている。「子供には仕事じゃなくて、自由を与えないといけない。私は勉強して、子供のために働く大人になりたい」【12月11日 朝日】
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売春婦の娘が売春婦に、教育を受けたことがない親の子供がまた児童労働に・・・・単に子供を逆境から救うだけではなく、「無知と貧困の悪循環」を断つ施策が必要とされています。
母親たちの自助グループ活動を、マイクロファイナンスで資金的に支援するのも有効なはずですが、現実には、インドでは悪質なマイクロファイナンス民間業者に食い物にされた貧困者が自殺に追い込まれる・・・といった、貧困層の支援という本来の目的と全く異なる様相も呈しているようです。
(2010年12月29日 ブルームバーグ 「インドを襲うマイクロファイナンスの悲劇、借金苦で貧困層の自殺多発 」http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LE4EIB1A74E901.html)
【「子どもたちが安全に労働できる環境を整えるべき」という主張も・・・】
形だけの単なる法規制では問題が地下に潜ってしまうので、どうせ働かないと生きていけない現実があるなら、児童労働を認めたうえで、その環境改善を図ったほうが現実的だ・・・という発想もあるようです。
****就労可能年齢を10歳に引き下げた南米最貧国****
南米最貧国のボリビアで今月、就労可能年齢が14歳から10歳に引き下げられた。
教育を受ける権利が妨げられないことなどが条件だが、年齢引き下げは児童労働撲滅に向けた世界的な取り組みに逆行する恐れがあるとして、国際社会から懸念の声が出ている。
就労可能年齢を引き下げた法律が今月17日に発効。親の監督下にあることなどを条件に10歳以上の子供の就労が認められ、12歳以上では契約に基づく労働が可能となった。
国連児童基金(ユニセフ)によると、同国では児童労働が横行し、50万人以上の子供が家計を助けるために路上での靴磨きや露店での物売りに従事。劣悪な環境にある鉱山や農場での強制労働も問題化している。
今回の法律は現状を追認する形で労働者としての権利擁護を図ったもので、児童虐待の厳罰化や労働日数制限なども盛り込んだ。【7月28日 読売】
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****10歳から働くことが常識? ボリビアで児童労働を認める法案が可決された・・・****
南米のボリビアは世界でも最貧国のひとつに数えられる。この国では子どもたちも貴重な労働力だ。
アリシアは道行く人やドライバーに色とりどりの花を売る。父は2年前に他界した。母は幼い妹や弟の面倒を見なければならない。彼女は働かなくてはいけないのだ。
アリシアの一日の稼ぎは日本円にしてせいぜい1700円程度。ここボリビアでは、彼女のように労働に従事し、一家を支える未成年は決して珍しくない。
世界の多くの国が児童労働をなくそうと試みる現代にあって、ボリビア政府は2014年7月に10歳以上の子どもの労働を合法化。それも大統領不在時に副大統領が法案にサインをするという強引な手法が取られた。
当然のことながら、法案は国連の協定に反しており、抗議する者も多い。
しかし、一方でボリビアの貧しい家庭では、子どもは貴重な労働力である。アリシアのような子どもから労働を取り上げることは、さらなる貧困につながる可能性がある。
ボリビア国内には、「子どもたちが安全に労働できる環境を整えるべき」という主張もある。そして、実際に児童労働者による組合(UNATSBO)までもが存在している。
国際労働機関とボリビア政府による2008年の調査では、同国内の5〜17歳の労働者は約85万人とされている。これは、約3分の1の子どもたちが学校に通っていない計算となる。
「他の子が映画を観にいくように、私も楽しみたい。でも、お母さんが頑張っているのに、私だけそんなことできない・・・」アリシアの言葉が、ボリビアの現実だ。
果たして、子どもたちが働かずに、学校に通える日は来るのだろうか?【7月20日 tabilabo】
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ボリビアといえば、故チャベス・ベネズエラ大統領と盟友関係にあった反米左派路線の先住民出身のモラレス大統領が10月に3選を果たして長期政権を実現しています。
アンデスの高地にある県は貧しい先住民が多いのに対し、東部は天然ガスなどの地下資源が豊富で白人富裕層の住民が主流を占めるという地域格差・対立もある国です。
“大統領不在時に副大統領が法案にサイン”・・・・どういう事情か、建前と異なる別の思惑もあるのか・・・詳しい事情を知りませんので、評価もできません。
闇の世界で無権利状態で働かせるよりは・・・、子どもから労働を取り上げることは、さらなる貧困につながる可能性がある・・・・確かに言われればそうですが、現状追認に堕すだけの危険もあります。
政府・当局の運用・監視体制にもよります。