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(11月末の党大会でのマリーヌ・ルペン氏(中央女性) アジア系少女も配して民族主義的偏見のないこともアピールでしょうか。
大会にはオランダ極右政党・自由党(PVV)のウィルダース党首も招かれています。“flickr”より By https://www.flickr.com/photos/jarousseau/15735364960/in/photolist-pYtRMS-qdKxEu-qfYsuC-qfRK5z-pYt4V9-pTHHGY-puGPKR-oRH4Ty-pNyBKt-pw7JjG-pwarfC-p5uQKL-pypaBn-oRbBwe-qfYsc3-pjgVT2-pWfyHR-q49wgm-q6eT14-pE4HSF-oHrzfE-q95Fr9-oHrAwN-pE4H5P-pVejv9-pw54xZ-pw8izi-pNCUYL-pNCYms-pw8mVM-pP93j7-pNhVQc-oRH6fb-pw7EdA-pNyDnX-pPhyi1-oSpLK2-pwLX2i-pRaCdF-pwLiwE-pRaDvk-pwLmJw-pwP6ab-petu3b-pM7SfQ-pPhF9W-pNYzq6-pPhyT9-pPhDr7-pPdimt)
【「イスラム教徒に対する偏見が広がらないか心配だ」】
15日から16日にかけて、オーストラリアの最大都市シドニー中心部のカフェに武装した男が客や従業員を人質に立てこもった事件では。犯人がイランからの政治亡命者で、イスラム過激派の思想に共鳴していたことから、移民国家オーストラリアにあって、イスラム教徒への排斥機運も懸念されています。
****<豪立てこもり>対イスラム 移民大国に「反感」と「融和」****
・・・・モニス容疑者は過激なイスラム思想を持つイランからの移民で、オーストラリアでイスラム教徒への差別や偏見が深まるとの懸念が出ている。
宗教や民族に関わりなく移民を寛容に受け入れてきた国是が揺るぎかねないだけに、融和を呼びかける動きも活発だ。
「イスラム教徒もこの国の一部。分断して考えないでほしい」。シドニーのイスラム教指導者の一人でパキスタン出身のナゼル・ハサン・タンビ氏(74)は16日朝、心配でいても立ってもいられずに事件現場となったシドニーの現場近くを訪れた。
タンビ氏は昨年、市内のモスクでモニス容疑者と会って話をしたことがあるという。「(容疑者は)イスラム教徒のコミュニティーとも距離を置き、1人で行動していた。イスラムの教えを正しく理解していれば、こんな事件は起こさない。イスラム教徒に対する偏見が広がらないか心配だ」と話した。
オーストラリアは毎年12万人の移民を受け入れる移民大国で、現在は人口の約2%にあたる約50万人のイスラム教徒を抱える。
しかし、イスラム教徒は一般的に経済面で恵まれず、多数派のキリスト教徒からの疎外感を感じやすいとされる。
イスラム国はそういった移民の不満を背景に2、3世に過激な思想を広め、現在では60人以上が中東で従軍。
非イスラム教徒からは「移民として受け入れたのに、テロという形で恩をあだで返そうとしている」との反感を生み、インターネット上で「イスラム教は殺人カルトだ」「イスラム教を禁止せよ」などと憎しみをあおる内容のサイトも出現した。
一方、事件後、厳しい目にさらされるイスラム教徒を守ろうとする動きも始まった。列車内でイスラム教徒の女性が人目を気にしてスカーフを脱いだところ、そばにいた別の女性が「(嫌がらせされないように)私が一緒に歩いてあげる」と声を掛けた。ネット上で話が広まると、ツイッターなどでこの行為に賛同する声が35万件以上寄せられている。
現場近くでは16日、多くの市民が献花に訪れ、昼休み時間帯には行列ができるほどだった。元看護師のキャット・デルニーさんは、涙を流す参列者のためにティッシュペーパーを持って配った。「キリスト教徒といっても200年ほど前に来たばかり。隣人同士理解しようとすれば、必ず皆で団結できる」。自分に言い聞かせるように話していた。【12月16日 毎日】
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いろいろ問題の多かった危険な人物がなぜ野放し状態になっていたのかについては厳しい批判が政府に向けられていますが、“現地では事件を受け、政治家らが多民族融和の重要性を繰り返し、メディアもこれを何度も取り上げている。今のところイスラム教徒に対する目立った差別的言動は見られない”【12月17日 産経】
【フランスでも「アッラー・アクバル」・・・】
時期を同じくして、フランスでも20日と21日、同様な事件が連続しています。
****警官襲撃の男射殺=「イスラム国」に感化か―仏****
フランス中部ジュエレトゥールで20日、刃物を持った男が交番を襲い、警官3人が重軽傷を負う事件があった。
男はアフリカ出身のフランス人で、犯行後に射殺された。アラビア語で「神は偉大だ」と叫んでいたことから、当局はイラクやシリアで台頭する過激組織「イスラム国」の思想に感化された可能性もあるとみて調べている。仏メディアが報じた。【12月21日 時事】
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****「神は偉大」、次々歩行者はねる=11人けが、男を逮捕―仏****
フランス東部ディジョンで21日、車に乗った40歳前後の男がアラビア語で「神は偉大なり」と叫びながら5カ所で歩行者に突っ込み、計11人が負傷する事件があった。男は駆け付けた警官に逮捕された。
AFP通信によると、男は精神的に不安定で、精神科への通院歴もあった。犯行当時、「パレスチナの子どものために活動している」という趣旨の発言もしていたとされ、当局はイスラム過激組織との関連を調べる。
けが人のうち2人は重傷で、残る9人は軽傷。いずれも命に別条はない。【12月22日 時事】
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こうした事件が起きることで国民のイスラム教徒への視線が厳しくなり、イスラム系同胞の生活をますます困難にするだけなのに、なぜそんな簡単な道理がわからないのか・・・と言ってみても仕方がないところがあります。こうした事件を起こす者は心のバランスを失っており、ほとんど精神的には病んでいると言ってもいい状態でしょう。
宗教的な問題や主義主張の問題というよりは、日ごろの不平不満で病んだ精神のもとで、卑小な怒りを爆発させたというだけの話です。
【イスラム教徒の人口がヨーロッパで最も多い国】
ただ、精神的に病んだ者の凶行というだけですまないのは、被害者とその家族の怒り・悲しみの問題のほかに、こうした凶行が、外国人排斥の風潮が高まる社会をますます排他的な方向に追いやる危険もあるからです。
フランスは、少数派としてのイスラム教徒の人口がヨーロッパで最も多い国であると同時に、イスラム恐怖症やイスラム排斥も強い国でもあります。
非公式の統計ではフランス国内もイスラム教徒はおよそ600万人とされ、全人口のおよそ1割を占めています。
移民がもたらす経済的・政治的な軋轢、治安上の問題は今さら繰り返すまでもないことですが、一方で、フランスの議会には人口の1割を占めるイスラム教徒の代表が一人も存在していません。
2011年には、ムスリム女性の顔や全身を覆うブルカを公共の場で着用することを全面的に禁じられるなど、イスラム教徒側からすれば、自分たちの宗教・生活が侵害されているという思いもあります。
CCIF(フランスのイスラム恐怖症に反対する委員会)は、2012年にイスラム排斥行為が469件発生したことを明らかにしており、「フランスでは、1日に少なくとも一人がイスラム排斥行為の犠牲者となっている」と表明しています。【2013年7月23日 Iran Japanese Radioより】
こうした社会への不平不満が土壌となって、フランス国籍を有する900人余りが、「イスラム国」の兵士としてシリア・イラクに向かっているとも言われています。
【着実に支持を拡大するマリーヌ・ルペン党首率いる右翼政党・国民戦線(FN)】
欧州各国の右傾化、移民排斥の機運については、これまでもたびたび取り上げてきましたが、最近の報道としては、オランダ極右政党・自由党(PVV)のウィルダース党首に関するものが報じられています。
****「人種差別あおった」右翼党首訴追 オランダ検察、選挙運動中の発言で****
移民排斥を訴えるオランダの右翼政党の党首が選挙運動中の移民への差別的な発言で市民から告訴されていた問題で、オランダの検察当局は18日、人種差別をあおったとして、右翼・自由党(PVV)のウィルダース党首を訴追すると発表した。
地元紙フォルクスクラントなどによると、ウィルダース氏は3月、地方選の選挙活動の演説で、「モロッコ人は多いのと少ないのどちらがいい?」とあおった。「少ない方」と聴衆が応じると、「それに取り組もう」と答えたという。反イスラム的な発言だとして、抗議する市民らがウィルダース氏を告訴していた。
検察当局は訴追の理由について声明で、「政治家に表現の自由はあるが、人種差別禁止によって制限を受ける」と説明した。これに対して、ウィルダース氏は「誰もが思っていることを言っただけ。検察は(『聖戦』を実行する)ジハーディストの訴追に時間を使った方がいい」と声明で反発している。
ウィルダース氏の差別発言まで、PVVはオランダ国内の政党に関する世論調査で第1党の人気を得ていたが、発言後は第3党に転落。5月の欧州議会選では前回と同じ4議席を獲得するにとどまった。
最近では、過激派「イスラム国」の台頭や政府の社会保障改革への反発などで再び第1党に戻ったが、訴追によって支持を失う可能性もある。
ウィルダース氏は反イスラム的な言動で過去にも訴追され、2011年に無罪となっている。【12月21日 朝日】
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フランスには、オランダのウィルダース党首より慎重に事を運び、より大きな勢力を築きつつある政治家・政党が存在します。マリーヌ・ルペン党首(46)率いる右翼政党・国民戦線(FN)です。
****「極右政党」市民の抵抗感薄らぎ…フランス「極右市長」が狙う理想と現実****
フランスで勢いを増す極右政党「国民戦線」(FN)が国政での影響力拡大に向け、地方で実績作りに取り組んでいる。
今春の統一地方選では11人が市長に当選。中でも、カンヌやニースなどの保養地に近い地中海沿いの街、フレジュスの市政はしばしば地元メディアに取り上げられ、注目を集めている。現地で“FN市長”の手腕を探った。
■失敗を教訓に
フレジュス市中心部の市庁舎。バルコニーにはフランス国旗だけが翻る。以前あった欧州連合(EU)の旗は、EUに批判的なFNのダビッド・ラシュリーヌ市長(27)が4月に就任した後、撤去された。
「旗などどうでもいい。街の問題と関係ない」。近くで家電販売店を営む女性(63)が話す。メディアの取材には「今のところ、いい感じよ」と答えるという。
人口約5万2千人の市は周辺に比べて観光客を引きつけられず、活気を失っていた。新たな市長は音楽祭などのイベントを企画し活性化に尽力。商店街も若者らが集まってにぎわった。「店を始めて20年、見たこともない光景だった」。FNへの抵抗感もあったという女性はいま、若き市長に再生への期待を寄せる。
「おおむね市民は満足していると思う」。市長交代に伴って就任したFN党員のリシャール・セール第1助役も、半年余の市政に手応えを感じているようだ。
FNは過去にも市政を担った経験があるが、移民排斥などの党の主張に沿い、フランス人優遇政策を進めるなどして問題化した。セール氏は「失敗を繰り返さないため、現実的にやっている」と強調する。
■批判は許さず
市の喫緊の課題は財政再建と活性化だ。借金は年間予算の1・4倍に相当する約1億4千万ユーロ(約210億円)に膨らんでいたが、資産売却や各種補助金の削減ですでに850万ユーロを捻出。ディスコ誘致などの活性化計画で投資呼び込みも目指す。
堅実にみえる市政運営だが、“ほころび”を示すような問題も浮上している。
「市長は当選前、手を出さないと言っていたのに…」。ビルヌーブ地区にある社会センターで、センター長のサンドリーヌ・モンタガール氏が表情を曇らせた。市の助成金が今年末で打ち切られるため、閉鎖の危機にひんしている。
社会センターは低所得者や移民系住民が多く、地域事情が複雑な市内の3地区に設置されている。市長は就任後、これらを運営する市民団体への補助金半減を表明。モンタガール氏が全国紙の取材に運営への支障などを訴えると、市長はビルヌーブのセンターに限って補助を完全に停止すると決めた。
他の市民団体や地域住民らも反発し、11月中旬には約400人が抗議デモを実施したが、セール氏は「市から資金をもらう立場なら、批判は控えめにすべきだ」と語る。
一方、センターの支持者らは「自由な発言を奪うつもりだ。これは始まりにすぎない」と危機感を強める。
パリ政治学院現代政治研究所のパスカル・ペリノー所長はフレジュス市の例を踏まえ、地方から国政への勢力拡大戦略を描くFNについて、「政敵は排除するとの『戦闘的論理』で行政を担っている。(当選したら)市長は市民全体の代表として行動すべきだという民主主義の原則を理解していない」と懸念を示した。【12月20日 産経】
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社会党のオランド大統領は、景気・失業率の改善がなされていないことから、その支持率は各世論調査で21%~22%と最低を記録し、底知らずの低下を続けています。
最大野党・民衆運動連合(UMP)も党内のゴタゴタが続いており、疑惑やスキャンダルで“過去の人”とも思われていたニコラ・サルコジ前大統領(59)が党首に返り咲いたものの、もはや以前のような勢いはありません。
そういう政治状況で国民の不満の受け皿になっているのがマリーヌ・ルペン党首率いる右翼政党・国民戦線(FN)という訳です。
“サルコジ氏、オランド氏が大統領選に立ったと仮定しての世論調査(10月末)では、FNのマリーヌ・ルペン党首(46)が29%でトップとなり、26%のサルコジ氏と決選投票になるとの結果が出た。オランド氏は14%。ルペン氏は28日付のフィガロ紙のインタビューで「政権をとる準備を進める」と語った。”【12月1日 朝日】
社会党は超不人気なオランド氏をほかの誰かに代えるのではないでしょうか。
いずれにしても、2017年の次期大統領選挙において、ルペン氏が決選投票に残る可能性も高くなってきています。(2012年大統領選挙では、17.9%の得票率で3位)
左翼・保守の双方からの批判も根強い右翼政党のルペン氏が決選投票で過半数を制するのはさすがに難しいとは思われますが、イスラム教徒による事件などでムスリム批判の風潮が強まれば、相当な支持を集めることも予想されます。
なお、党員の極端な極右的言動や差別的言動は認めていないルペン氏ですが、彼女のイスラムへの姿勢は、“フランスでのムスリム移民の野外礼拝をナチス・ドイツによるフランス占領に例える発言をするなど、物議を醸した。ただし、ムスリム移民の排斥を唱えるのでは無く、「フランス社会にふさわしいイスラーム」を求めていくとしている”【ウィキペディア】というものです。