孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中央アフリカ  停戦後も続く混乱 “宗教対立”の背後にあるもの  すべての子供たちに教育機会を

2014-12-27 21:46:17 | アフリカ

(キリスト教系民兵組織「アンチバラカ」の14歳の少年
“2012年12月に15歳で武装勢力に加わったグレース・ア・デューは言います。「毎朝、泥の中をはいつくばり、厳しい訓練を行います。大人の戦闘員たちは僕たちを冷酷で残忍な人間に仕立て上げたいのです。戦闘になると、僕たち子どもが前線に送られ、大人たちはずっと後方にいることがしばしばでした。戦闘中に多くの戦友が殺されるのを見ました。とても多くのものを、多くの残虐行為を目にしました。」”【12月18日 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 】http://www.savechildren.or.jp/scjcms/press.php?d=1814

紛争は「悪いガバナンス、民主主義の軽視、腐敗、人権侵害」のせいで発生
世界のあちこちで戦闘・内戦が起きるため、一時は世界の関心を集めたような問題も時間とともに“過去のもの”として忘れ去られていきます。

中央アフリカで起きた内戦もそんなひとつでしょうか。

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今回の紛争は2013年3月、主にイスラム教徒からなる武装勢力連合「セレカ」が首都バンギを制圧し、フランソワ・ボジゼ大統領(当時)を失脚させたことが始まりだ。

これに対し、キリスト教徒を中心としたボジゼ氏支持派の「反バラカ」と呼ばれる民兵組織が台頭し、イスラム教徒に復讐。以降、双方が虐殺、レイプ、略奪と血みどろの報復合戦を繰り広げた。

セレカはおおむね中央アフリカの北部と東部の出身者と、隣国のスーダンとチャドからやって来た主にイスラム教徒の戦闘員から構成されている。

一方の反バラカは、主にボジゼ氏の出身部族で、中央アフリカの中部と南部出身のムバヤ人から構成されている。

しかしセレカ、反バラカのいずれも、お守りや魔除けを使うなど精霊信仰が強く、専門家たちはお互いの憎悪は宗教ではなくもっと何か深いものに根差していると考えている。【7月29日 AFP】
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中央アフリカの内戦は、7月には一応の停戦合意が成立しました。

****中央アフリカ:武装勢力が停戦合意****
アフリカ中部・中央アフリカ共和国で戦闘を続けていたイスラム教徒とキリスト教徒の武装勢力が23日、停戦に合意した。

同国では武装勢力同士の衝突が宗教対立に発展し混乱が続いてきた。人口の2割以上に当たる約100万人が避難生活を余儀なくされた危機的状況が収束に向かうか注目される。

隣国コンゴ共和国のサスヌゲソ大統領が仲介し、同国の首都ブラザビルで、イスラム教徒主体の武装勢力セレカとキリスト教徒の民兵組織アンチ・バラカが停戦に合意した。【7月24日 毎日】
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中央アフリカの混乱は、イスラム教徒とキリスト教徒の戦いという視点でとらえられることが多いのですが、どこの紛争でも見られるように、対立の背景には劣悪な政治・社会的な格差に対する不満が存在しています。

****中央アフリカの戦闘は宗教紛争か、深層に民族対立 悪政 嫉妬****
中央アフリカで起きた血みどろの紛争は、アフリカ大陸各地で宗教間の対立が起きていることを反映して、イスラム教徒とキリスト教徒の戦いだと捉えられがちだ。

しかし専門家たちは、この紛争の真の原因は、民族や階級間の闘争、そして腐敗した政治のせいだと分析する。

チャドやスーダンから移住してきて成功を収めたイスラム教徒の貿易商たちへの嫉妬、パワーポリティクス、さらには中央アフリカが奴隷貿易の主要な中継地点だった頃から続く緊張が、すべて絡み合って現在の紛争につながっていると専門家たちは指摘する。

中央アフリカ福音教会連盟のニコラ・ゲレコヤム・ガングー代表は、「彼らは若者を操って殺人をさせている。失った権力を取り戻したいからだ」と言う。

「キリスト教徒とイスラム教徒はずっと一緒に暮らしてきた。だが戦争をあおるような政治家たちの発言から、紛争が起きる前から私たち宗教指導者たちは戦争の足音を感じていた。背後で糸を引き、宗教対立のように見せかけているのは政治家たちだ」(中略)

■「宗教的対立」だけではない
セレカの元幹部で現在は大統領顧問になっているアブドゥレイエ・ヒセーヌ氏は、この紛争を宗教間対立という表現だけで片付けるのは「まったくの間違いだ」と語る。

「モスクを破壊しているのは、本当のキリスト教徒ではないし、教会を攻撃しているのも本当のムスリムではない。彼らは平和の敵にカネを渡された個人だ」

ボジゼ政権で大臣を務め、現在は反体制勢力のメンバーになったジョゼフ・ベンドゥンガ氏は、紛争は「悪いガバナンス、民主主義の軽視、腐敗、人権侵害」のせいで発生したと語る。

専門家たちは、人口のほぼ50%をイスラム教徒が占めている隣国チャドも、中央アフリカの紛争の原因を作ったとして非難している。

チャド政府は2003年、フランスや周辺国の支持を得て中央アフリカのクーデターを支援し、ボジゼ氏を大統領の座に就けた。だが10年後には、そのボジゼ氏を失脚させたセレカを支援しているとして、チャドは非難されている。

中央アフリカにはダイヤモンドや金など天然資源があるが、長年の失政によって国の発展は遅れたままだ。そんななか、主にチャドやスーダンからのイスラム教徒の貿易商たちがダイヤモンド採掘の拠点や陸運業を支配し、中央アフリカの他の国民よりも豊かな暮らしをしてきた。

彼らの成功は、首都バンギに最後に残ったイスラム教徒の居住区「PK-5」を見れば明らかだ。この商業地域にイスラム教徒たちは大きな店を所有しているが、小作農たちはここの通りでキャッサバやサツマイモを売るためにやってくる。

現地人とのこのような社会経済的な格差は、西アフリカではレバノン系住民との間で、東アフリカではインド系住民との間で見られる。このような格差が生み出した嫉妬心が、社会の秩序が失われた時に暴力という形で噴出するのだ。【7月29日 AFP】
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停戦合意が成立したことで、メディアにも取り上げられる機会は殆どなくなり、私を含めた人々の記憶からも消えていきつつありますが、必ずしも停戦合意ですぐに平和な生活は戻る訳でもありません。

“セレカとアンチ・バラカは同年7月に停戦合意したものの,停戦違反や各勢力内の内部衝突はその後も頻発。今後,2015年7-8月には大統領選が予定されている”【日本外務省HP】

すべての子どもがよい将来を築けるよう声を上げる時期
世界の関心が薄れれば、国際的な支援も細っていきます。

****戦火の中でも学ぶ喜び 中央アフリカ****
内戦が続く中央アフリカでは、推定約1万人の子どもが武装勢力の戦闘員などとして使われ、約250万人の子どもが戦闘の恐怖にさらされている。国連児童基金(ユニセフ)のモハメド・フォール中央アフリカ代表が朝日新聞の取材に明らかにした。

ユニセフがこの1年間、武装勢力との交渉の末に解放した子どもは19日現在で2143人。うち約4分の1は女子で、使用人とされたり戦闘員の妻にさせられたりしていたという。

国際社会の支援もなかなか届かないが、首都バンギ郊外の村ではようやくテント式の教室が設けられ、児童156人が勉強を始めた。

ピアマ・ベルグ校長は「戦闘で家族を亡くした児童は多く、心のケアが問題だが、今は多くの子どもが学校に通える喜びをかみしめている」と話した。【12月27日 朝日】
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ナイジェリアのイスラム武装勢力「ボコ・ハラム」が学校から女生徒200人以上を拉致して世界中の批判を浴びていますが、同じような行為はナイジェリアだけでなく世界各地で起きています。

ことし、史上最年少でノーベル平和賞を受賞したパキスタン人の17歳の少女、マララ・ユスフザイさんが新年を前に世界のリーダーに宛てたメッセージを発表し、2015年こそはすべての子どもたちが平等に教育を受けられる環境をつくるよう訴えています。

****マララさん 世界のリーダー宛てにメッセージ****
マララ・ユスフザイさんは、おととし、通学途中に女性の教育を否定するイスラム過激派組織に銃撃されましたが、その後も、内戦が続くシリアから逃れてきた難民のキャンプなど、紛争や貧困、テロなどによって教育の機会を奪われた子どもたちのもとを訪れる活動を続けており、ことしのノーベル平和賞を史上最年少で受賞しました。

新年を迎えるにあたりマララさんはみずからが立ち上げた基金のウェブサイトに世界のリーダーに宛てたメッセージを掲載し、「年末年始、世界各地は祝いに包まれるが、すべての子どもがよい将来を築けるよう声を上げる時期でもあるべきだ」と述べています。

そのうえで、「学校に行けなかったり強制労働を強いられたりする子どもたちをなくす年にできるはずだ」と述べ、来年を転換の年と位置づけ、各国の首脳に対して子どもたちの権利を守るための政策を実行に移すよう呼びかけました。【12月27日 NHK】
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宗教対立といえば“どうしようもないもの”にも思えますが、その背景にある「悪いガバナンス、民主主義の軽視、腐敗、人権侵害」の改善は政治の役目です。

“良い統治”が実現すれば、宗教対立の形でを借りた暴力が噴き出すことも、子供たちが紛争の犠牲になることも防ぐことができます。

2015年、マララの願いが少しでも現実のものとなるように祈ります。
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