孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

世界エイズデー 「AIDS IS NOT OVER ~まだ終わっていない~」

2014-12-03 22:05:33 | 疾病・保健衛生

(エイズ患者や感染者に対する偏見の解消を呼びかけるキャンペーンの一環として、感染の公表を恥じることはないと、これまで人に打ち明けられなかった自分の「秘密」を告白したイギリス・ヘンリー王子 【12月2日 CNN】)

感染者は3500万人以上、昨年の死者は150万人余り
一昨日、12月1日は「世界エイズデー」でした。

一時期に比べてエイズが話題になることは随分と少なくなりましたが、全世界で感染者が3500万人以上、昨年の死者が150万人余りという数字は、現在問題となっている西アフリカのエボラ出血熱の犠牲者(感染者約17000人、死者約6000人 12月1日WHO発表)と比べても桁違いの大きさです。

****子どもなどへのエイズ対策加速を****
「世界エイズデー」に合わせて、国連のパン・ギムン(潘基文)事務総長は声明を発表し、国際社会に向けて、貧困などで治療を受けられない子どもたちなどへの対策を加速させるべきだと訴えました。

「世界エイズデー」はエイズのまん延防止と、患者への差別や偏見の解消を目指してWHO=世界保健機関が12月1日と定めたもので、この日、世界各地でエイズに対する理解を深める啓発活動が行われます。

WHOによりますと、エイズウイルスに感染している人は、全世界で3500万人以上で、去年は、150万人余りの人々が、死亡しました。

WHOは、エイズウイルスに感染した場合の治療法として、エイズの発症を遅らせることができるとされる抗ウイルス薬などの投与を推奨しています。

しかし貧困などからこうした治療を受けられるのは患者全体の36%にとどまり、子どもの患者でみると、4人に1人にすぎないということです。

このため国連のパン・ギムン事務総長は、「世界エイズデー」に合わせて声明を発表し、「対応が特に必要な人々への取り組みには差がある」として国際社会は、効果的な治療を受けられない子どもなどへの対策を加速させるべきだと訴えました。【12月1日 NHK】
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【「FEEL NO SHAME」】
この「世界エイズデー」に合わせて、イギリス・ヘンリー王子が自分の秘密を告白したということが話題になりました。

別に、ヘンリー王子がエイズ感染していた・・・という話ではなく、感染していることを隠しがちなことが犠牲者を増やしている現状を改革しようというキャンペーンの一環です。

****英ヘンリー王子、エイズ偏見解消願い「秘密」告白****
「世界エイズデー」の12月1日、英ヘンリー王子がエイズ患者や感染者に対する偏見の解消を呼びかけるキャンペーンの一環として、これまで人に打ち明けられなかった「秘密」を告白した。

ヘンリー王子はアフリカ南部レソトで子どもや若者がエイズに苦しむ現状に衝撃を受け、レソトのセーイソ王子と共同で2006年に慈善団体「サンタバリー」を設立した。

同団体はエイズに感染している事実の公表をためらう子どもたちに、恥じる必要はないと呼びかけるキャンペーン「FEEL NO SHAME」を展開している。

王子はエイズ啓発運動の赤いリボンを着けた姿でキャンペーン映像に登場。「僕の秘密は、人前で話す前にものすごくあがってしまうこと。聴衆の人数には関係なく、笑ったり冗談を言ったりしていても、ものすごくあがっている」と告白した。

続いて歌手のジョス・ストーンさん、俳優のチャーリー・ブアマンさん、レーシングドライバーのダニエル・リチャルドさんといった有名人も秘密を打ち明けている。

ヘンリー王子はこれに先立って動画投稿サイト「ユーチューブ」に公開した映像の中で、アフリカではエイズが筆頭の死因になっていて、世界でも10~19歳の死因はエイズが2番目に多いと指摘した。

「特に悲劇を引き起こしているのはHIVにまつわる偏見で、毎年何千人という子どもたちが、自分の症状のことを隠して必要な治療を受けられないまま不必要に死んでいく」

ヘンリー王子はそう語り、「僕たちに続いてみんなで秘密を打ち明けて、レソトの子どもたちを応援してほしい」と呼びかけた。【12月2日 CNN】
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かつては不治の病のイメージがあったエイズですが、現在では適切に薬物治療を行えば、発症をコントロールして普通に生活が可能な疾患となっています。

ただ、エイズ患者や感染者に対する偏見も根強く、多くの感染者が適切な治療を受けていないという現実もあります。
結果的に、新たな感染者を生み出してしまうことにもなっています。

恥ずかしがらずに公表できるかどうかは、周囲の人間の認識あるいは偏見次第でもあります。

****米HIV感染者の7割、検査や治療受けず 調査報告****
米国のヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者の70%が、ウイルスの管理を適切に行っておらず、感染のリスクを増加させているとした調査報告が25日に発表された。

米疾病対策センター(CDC)によると、120万人のHIVウイルス感染患者の大多数は、2011年の時点で、治療を受けていないか、薬を服用していなかった。

「最新の検査と治療により、伝染病を低減できる潜在的な可能性があるにもかかわらず、その機会はあまりにも多く失なわれている」とCDCのジョナサン・マーミン氏は指摘。

HIV/AIDS、ウイルス性肝炎、STD(性感染症)、結核など感染症の予防を目的とする「National Center for HIV/AIDS, Viral Hepatitis, STD, and TB Prevention、NCHHSTP」の代表を務める同氏は、「治療は不可欠。新たなHIV感染を阻止するために、最も重要な戦略のひとつです」と説明する。

調査によると、ウイルスを適切に管理していないとされる84万人のうち、66%は感染と診断されているが定期的な治療を受けていなかった。

20%は自分の感染について知らなかったとされる。また感染者の4%は治療を受けているが、抗レトロウィルス薬(ARVs)は処方されていなかった。

10%の感染者については治療を受けているが、それでも感染を抑制しきれていないという【11月26日 AFP】
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“感染と診断されているが定期的な治療を受けていなかった”理由は示されていませんが、経済的な理由の他に、エイズ患者や感染者に対する偏見、患者自身の隠そうとする行動もあるのではないでしょうか。

中国:半数以上が自らのHIV感染に気づいていない
中国では感染者は約50万人にのぼりますが、把握されている感染者と同数程度、あるいはそれ以上の者が自らのHIV感染に気づいていない状況にあるとされています。

****中国のHIV感染者、約50万人に WHO****
「世界エイズデー(World AIDS Day)」の1日、世界保健機関(WHO)は、中国でAIDS(エイズ、後天性免疫不全症候群)を発症した患者またはその原因となるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染者は、計50万人近くに上るとする政府統計の報告を受け、中国政府に行動をとるよう求めた。

前日、中国国家衛生計画出産委員会は10月末までの統計として、国内で初めてHIVへの感染例が確認された1985年以降、HIVへの感染またはエイズの発症を診断された例は49万7000人に上ると発表した。

約1年前の2013年9月の発表時では43万4000人だったが、数字の増加が感染者の増加によるものなのか、診断件数の増加によるものなのかは定かでない。

またさらに15万4000人が、過去30年の間にエイズで亡くなったという。

中国エイズ・性感染症予防対策センターは昨年、人口13億6000万人のうち、まだ診断されていない件数を含め最大約81万人がHIV感染者またはエイズ患者だろうと推計している。

一方、国連合同エイズ計画(UNAIDS)のキャサリン・スズィ中国支局長は、先月29日の国営英字紙チャイナ・デーリーに投稿した論説で、中国で抗レトロウイルス薬(ARV)による治療を受けている人は25万人以上に上ると述べた。

さらにWHOのバーンハート・シュワルツランダー中国支部代表は同紙への論説の中で、HIVへの感染予防と感染者への支援に関し「中国はやらなければならないことがたくさんある」と記し、「おそらく最優先課題はHIV感染者や、同性愛者の男性、性産業に従事する者、薬物使用者といった高リスク・グループへの偏見と差別をなくすことだ。私の同僚(WHO関係者)の医療専門家でさえ、患者の性的指向を受け入れられないとして追い返したこともある。あってはならないことだ」と警告した。

中国国家衛生計画出産委員会によれば現在、エイズの感染理由の9割を占めているのは性交渉で、次いで母子感染や注射器の共有となっている。【12月1日 AFP】
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HIVへの感染またはエイズの発症を診断された例は49万7000人、このうちすでに死亡したのが15万4000人で、差し引き34万3000人が存命中の感染者ということになります。

“まだ診断されていない件数を含め最大約81万人がHIV感染者またはエイズ患者だろう”ということは、40万人以上が感染を知らないということになります。

****中国のHIV感染者は75万人前後、半数以上が自らの感染を知らず****
・・・・北京佑安医院(病院)感染センターの李在村主任医師は中国新聞社の取材に対して、「HIVの感染者とエイズ患者は累計で40万人台だが、実際には40万人程度が自らの状態に気づいていない」と述べた。

つまり、中国において、存命中のHIV感染者はエイズ発症者を含めて統計上は34万3000人だが、それより多くの人が自らの感染に気づいていないことになる。

李主任医師によると、中国では現在、HIV感染の拡大を食い止める作業のうち、男性間の性的接触による感染の防止を重点としている。

男性同性愛者の場合、複数のパートナーを持つ場合が多いことなどから、感染の危険が高い。男性の同性愛者のHIV感染は、同じようにリスクが高い性的サービスの提供者と比較しても、4倍程度になるという。

李主任医師は、北京市においてもHIV感染者の9割以上が男性同性愛者と説明した。

人民日報によると、省別でHIV感染者が最も多いのは雲南省で、10月末時点の存命感染者数は7万9915人だった。

以前は薬物乱用の際の注射器の使い回しで感染する例が多かったが、現在では性的接触による感染が大部分になった。
2014年1-10月における新たな感染確認者は9601人だが、うち89.5%が性的接触による感染だったという。(後略)【12月1日 Searchina】
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検査にしても、治療にしても、エイズ患者や感染者に対する偏見、高リスク・グループへの偏見と差別といったものが大きな障壁・阻害要因となっています。
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