孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

エボラ出血熱  感染拡大ペースが鈍化 「隔離」と「安全な埋葬」 「エボラにならない人」の存在も

2014-12-06 22:00:56 | 疾病・保健衛生

(リベリア 国際協力団体「オックスファム」が設置した手洗い用の水タンクで手を洗う子供たち 手洗いはすべての疾患予防の基本です・・・多分 “flickr”より By Oxfam International https://www.flickr.com/photos/oxfam/15924114321/in/photolist-qgafpc-qgtj9G-pjdHdE-pZ6npY-qgP9fc-qgP9i8-q1hmwA-pjxK18-pYTCHe-pYTCDr-qgfi77-qg33jp-pkAVEy-pZdfmz-qgP9d8-q1W4en-qj7yDF-q1Rjgt-q1TXQJ-pZoYn7-pZC72k-qiLGxM-pm8aku-qfQbSf-pm8agm-pm8avQ-pYJSwW-qgfhz5-pjxJBT-qgfhsw-pYKFJd-pZt3ug-q1PPct-qhtUnZ-pmvwFR-pj9V2Y-q1bmAX-q1UN8c-q1SDwD-pZMmDP-q1u17f-qhYwMo-pmmEGt-pm8b1C-qi7uHF-q1yvBQ-pm8b4J-pmmEXi-qi42yo-qi421E)

【「2015年半ばの感染終息を目指す」】
西アフリカで猛威をふるっているエボラ出血熱ですが、ようやく感染拡大ペースが鈍化して、落ち着く気配も見え始めているようです。

****エボラ熱「来年半ばに終息を」=西アフリカの感染鈍化―WHO****
世界保健機関(WHO)のエイルワード事務局長補は1日、記者団に対し、西アフリカのリベリア、シエラレオネ、ギニア3カ国でのエボラ出血熱感染について、拡大ペースが予想を下回り、「鈍化した」との認識を示した。その上で、感染予防策を徹底し「2015年半ばの感染終息を目指す」と明言した。

3カ国での感染急増を受け、WHOや国際医療NGOなどは、安全な遺体埋葬、感染者の隔離など感染予防策を強化。

その結果、最も深刻だったリベリアで新規感染が減り、シエラレオネでも一部地区を除き減少しているという。こうした予防策は3カ国で7割以上達成できており、WHOなどは15年1月までに徹底させる計画だ。【12月2日 時事】 
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もっとも、現地での実態把握には混乱も見られます。

11月29日には、リベリアの死者が前回公表時の26日時点から1100人以上増加して、疑い例を含む感染者が25日時点で計1万6169人、死者が6928人に達したとの発表がありましたが、その直後の12月1日には、集計に誤りがあったとの訂正が報告されています。

****エボラ出血熱 死者数の集計に誤り****
西アフリカで過去最大の流行が続いているエボラ出血熱について、WHO=世界保健機関はこれまでの集計に誤りがあったとして、死者の数を1000人近く引き下げ、およそ6000人に修正し実態の把握にあたって混乱していることがうかがえます。

WHOは1日、西アフリカのギニア、リベリア、シエラレオネの3か国でのエボラ出血熱やその疑いによる死者の数についてリベリアで別の病気で死亡した人などが含まれ、集計に誤りがあったとしてこれまでよりも1000人近く引き下げ、5987人としました。

また、感染やその疑いがある人は1万6899人だとしています。エボラ出血熱で死亡した人の数を巡っては、WHOは先月28日「これまで計上されていなかった報告例があった」として、それまでよりもリベリアなどで1200人以上多くなったと発表したばかりで、今回その発表を修正するなど実態の把握にあたって混乱していることがうかがえます。

一方、WHOはエボラ出血熱について「患者の7割を隔離する」という目標についてギニアとリベリアでは実現できたものの、シエラレオネでは達成できていないと発表し、流行の終息までにはさらに時間がかかるとの見方を示していて、国際社会による支援の強化が必要だと呼びかけています。【12月2日 NHK】
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もとより、患者数・死亡者数の公表数字については、現状把握が十分ではなく、実態よりはるかに少ない数字にとどまっているとの指摘は以前からあります。

とにもかくにも、ひところの終息の目途が全く立たない状況に比べると、あかりが見えてきた感があります。
オバマ米大統領は2日、「戦略の成果は出始めているが、戦いは終わりには程遠い。片時も警戒を緩めるわけにはいかない」と述べ、流行終息に向けて引き続き全力で取り組む考えを示しています。

【「安全な埋葬」の徹底と、感染者の「隔離」】
今後流行終息に持ち込めるかどうかは、犠牲者の遺体を埋葬前に遺族・関係者が洗う風習が流行の大きな原因になっていますので、そうした点を含めた「安全な埋葬」の徹底と、感染者の「隔離」がポイントになります。

その「安全な埋葬」と「隔離」において、7割程度を確保できれば、次第に新規患者が減少し、終息への道も開けると考えられています。

ギニア、リベリア、シエラレオネの3か国において、ようやくそのあたりの達成が見込める状況になっているようです。

****エボラ感染者7割隔離など達成見通し・・・WHO****
世界保健機関(WHO)のブルース・エイルワード事務局長補は1日の記者会見で、エボラ出血熱が流行する西アフリカで当面の目標とする「感染者の7割隔離」などを達成できる見通しになったと明らかにした。

封じ込め対策が「重要な進展を見せている」との認識も示した。

WHOは、適切に隔離される感染者の割合と、安全に埋葬される死者の割合が共に7割を上回れば、新たな感染者の増加がマイナスに転じると試算。12月初めをそのための目標期限として掲げてきた。

感染が最も深刻な西アフリカ3か国のうちギニア、リベリアは「隔離」「安全な埋葬」の両方で7割を達成。シエラレオネでも「安全な埋葬」が7割に到達しており、「隔離」に関しても数週間で届きそうという。【12月2日 読売】 
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シエラレオネでは「安全な埋葬」を徹底するために、“違反者は投獄する”という警告を行っています。

****エボラ出血熱、遺体洗う伝統葬した家族は投獄 シエラレオネ****
エボラ出血熱の感染が依然、拡大している西アフリカのシエラレオネ政府は5日、死者を埋葬する前に遺体を洗う伝統に従ってエボラ出血熱で死亡した患者の遺体を自宅で洗ったことが判明した場合、家族全員を投獄すると警告した。

シエラレオネ政府は、感染力が強いエボラウイルスが同国で猛威を振るう主な要因となったのは、埋葬前に遺体を洗う慣習だとしてこれまでも繰り返し中止を呼び掛けてきたが、現在も依然、この儀式が新たな感染を引き起こしている。

同国国立エボラ対策センターのパロ・コンテー氏は「死亡した患者の家族から(埋葬ホットラインに)電話があった後、遺体を洗った痕跡が確認された場合、エボラ出血熱の最大潜伏期間である21日間にわたって家族全員を隔離、または留置する」と述べた。

「(検査の結果)家族が陰性ならば、緊急事態宣言に基づき一定期間、投獄する。陽性だった場合には治療へ送る。そこでもしも死亡すれば、それが運命だったということだが、回復すればその後、やはり投獄する」という。

首都フリータウンで記者会見したコンテー氏は、子どもにも刑事責任が問われるのかどうかや、両親が共に投獄された場合に残された子どもの処遇はどうなるかといった質問には回答しなかった。

シエラレオネでは、エボラ出血熱による死者がすでに約1600人に上っている。同国政府は、国内の一部地域での暴動や市民的不服従が感染拡大の収束を不可能にしていると主張している。【12月6日 AFP】
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政府・当局の感染予防措置の指示がどこまで徹底されるかは、政府が国民にどれだけ信頼されているかにもよりますが、信頼が期待できなければ強権で・・・ということになります。

シエラレオネの場合、遺体処理をめぐる問題は、一般国民だけではなく、作業員の処遇においてもあるようです。

****エボラ熱の遺体処理でもめるシエラレオネ****
エボラ出血熱による死者が約1400人に上る西アフリカのシエラレオネで、状況をさらに悪化させかねない事件が起きた。

東部の町ケネマの病院で遺体の埋葬を担当する作業員が、病院の玄関や院長室付近などに赤ん坊2人を含む15人のエボラ熱患者の遺体を放置したのだ。

理由は、感染者の遺体を扱う際の危険手当が支給されなかったことへの抗議。
この作業員は遺体を「非人道的な方法」で扱ったとして解雇された。

エボラ熱患者の遺体は感染力が非常に強く、公共の場に放置すれば「深刻なリスク」を引き起こす。葬儀の参列者に感染が広がったケースが多いことからも、患者の死後にウイルスが体液内で生存しているのは明らかだ。

「気温が高いアフリカでは遺体の腐敗が速く進み、大量の体液が漏出しやすい。その段階に至ったら、遺体の取り扱いは非常に危険だ」と、英ランカスター大学のデレク・ギャザラー講師は言う。

国連エボラ緊急対応ミッション(UNMEER)は今月1日までに、70%の遺体を安全かつ丁重な方法で埋葬するとの目標を掲げていた。だが目標達成には程遠く、感染者は今も増え続けている。【12月9日号 Newsweek日本版】
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遺体を処置する作業員が当局に雇用されているのか、病院に雇用されているのか・・・定かではありませんが、感染リスクの極めて高い危険な仕事ですから「危険手当」は必要でしょう。

前出【読売】では、“シエラレオネでも「安全な埋葬」が7割に到達しており、「隔離」に関しても数週間で届きそうという”とのことでしたが、そうそう楽観もできないようです。

【「エボラにならない人」】
楽観はできないものの流行終息の気配も感じられるようになってきた背景には、先述のように「安全な埋葬」と「隔離」の徹底があるということですが、そもそもの話として、感染しやすさ、発症しやすさにはかなり個人差もあるようです。

****エボラにならない人、エボラにならない町****
・・・・エリック・ダンカンは、アメリカで初めて発症し唯一死亡したエボラ出血熱の症例である。

ダンカンをほんの数時間ケアをしただけの看護師2名が発熱してエボラ陽性となったのに対し、同棲していたフィアンセを含む同居親族4人はすべてエボラ陰性だった。

特に、フィアンセはダンカンの下痢や吐瀉物などの片づけもしていた。知ってのとおり、通常であればエボラは、患者の体液へ少しでも接触しただけでも感染する。それなのに、なぜか、フィアンセはエボラにならなかった。

感染しても発症しない人
日本のメディアではあまり注目されていないことのひとつに、エボラ出血熱には感染しても無症状の人が相当数いるという報告がある。

今年10月末、改めてこのことを指摘した投稿が有名科学雑誌『ランセット』へ掲載され、海外の研究者たちの間で議論を沸き起こした。

このような報告はすでに2000年からいくつかあるが、例えば、今回と同じ、エボラ・ザイール株によるアウトブレイクが1996年ガボンで起きこっている最中、手袋等をせずに患者の看病を行った家族など、患者との明らかな濃厚接触があったがエボラの症状を呈さなかった24人を調べたところ、11人(46%)に感染の形跡(エボラに対する免疫)が確認されたという報告がある。

要するに、エボラは濃厚接触したからといって必ず感染するわけではないし、感染したからといって必ず症状がでるわけでもない。

人によっては感染しづらかったり、感染しても症状を示さなかったりと、ウイルスにかかる人の個体差は大きいようだ。

ただし、こういった「エボラにならない人」がコミュニティの中にどの程度いるのかについては不明で、1%という報告や10%、17%などレポートの数字はまちまち。

同じコミュニティで調査した場合でも、アウトブレイクの最中、アウトブレイクの直後、アウトブレイクの2年後とでは結果が異なり、エボラに対する免疫力が感染後、いつまで持続するものなのかについても不明となっている。

つまり、「エボラにならなかった人」が、「これからもエボラにならない人」であるかどうかはよくわかっていない。

となると、ダンカンのフィアンセは、「濃厚接触してもエボラに感染しない人」であった可能性がある。もちろん、検査したタイミングでは陰性ではあったが、今検査しなおせば陽性である可能性もあり、そうなれば「感染はするが、エボラにならない人」の方である可能性も出てくる。

専門家の間では、エボラ出血熱の場合、感染しても発症せずに免疫をもっている人(不顕性感染者)に感染力は無いとする見方が強く、不顕性感染者を見つけてエボラ患者のケアにあたらせればよいという主張もある。

また、今後、彼らがコミュニティの中の盾となり、エボラの感染拡大が鈍っていくことも期待される。(後略)【11月25日 村中璃子氏 WEDGE Infinity】
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流行初期には「エボラになる人」が次々に犠牲となりますが、その結果「エボラにならない人」の比率が高まってくると、感染拡大ペースが落ちてくる・・・とも考えられます。

西アフリカで感染拡大ペースが鈍ってきた背景には、こうした「エボラにならない人」の存在があるのかも。
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