(24日、バチカンのサンピエトロ大聖堂で恒例ミサを執り行い、「今、世界は優しさを必要としている」と、平和な世界を共に作る大切さを訴えるフランシスコ・ローマ法王 【12月25日 日テレNEWS24】http://www.news24.jp/articles/2014/12/25/10265992.html)
【ナイジェリア:「ボコ・ハラム」のクリスマス・テロを警戒】
今日はクリスマス。
世界には、静かな祈りでこの日を送ることが許されない地域もあります。
そのひとつが西アフリカの地域大国ナイジェリア。ナイジェリアは南部を中心に国民の半数がキリスト教徒の国です。
イスラム過激派「ボコ・ハラム」のテロ行為、少女の大量拉致などは再三取り上げてきていますが、例年、クリスマスのミサが襲撃の対象とされることもあって、現地では警戒を強めています。
****ナイジェリア クリスマスのテロ警戒****
西アフリカのナイジェリアでは、イスラム過激派組織ボコ・ハラムがクリスマスの時期を狙って、大規模なテロを引き起こすのではないかという懸念が高まっており、軍や警察が警戒を強めています。
ナイジェリアの北東部を拠点とするイスラム過激派組織ボコ・ハラムは、イスラム国家の樹立を図るとしてテロや襲撃を繰り返していて、子どもや女性を誘拐することも深刻な問題となっています。
こうしたなか、ナイジェリア軍は、ボコ・ハラムがクリスマスの時期を狙って大規模なテロ攻撃を仕掛ける恐れがあるという声明を出し、現地では警戒が強まっています。このうち北東部の2つの州では、車を使った爆弾テロを防ぐため、当局が車両での移動を厳しく制限しています。
また、首都アブジャでも警察などが車のトランクを調べるなどして爆発物が積まれていないか警戒を強めており、市民に対し、不審な人物を見かけたら直ちに通報するよう呼びかけています。
ナイジェリアでは、ボコ・ハラムの襲撃から逃れようと、多数の住民が家を追われて避難民キャンプで、不自由な生活を余儀なくされていて、クリスマスでも食糧の確保すらままならない人もいます。
アブジャの避難民キャンプにいる女性の1人も、「食べ物がほとんどなく、誰かに支援してもらわなければ飢え死にしてしまう」と訴えていました。【12月25日 NHK】
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過去の襲撃事件については、以下のように報じられています。
****ナイジェリア、クリスマスに爆弾攻撃相次ぐ 礼拝中の教会狙う****
ナイジェリア各地で25日、クリスマス礼拝が行われていたキリスト教会などを狙った複数の爆弾攻撃があり、少なくとも40人が死亡した。
すべての攻撃について、イスラム過激派「ボコ・ハラム(西洋の教育は罪の意)」が犯行声明を出し、アフリカ大陸で最大の人口を持つナイジェリアで、ボコ・ハラムによるテロ行為への恐れと怒りが広がっている。
首都アブジャ郊外の教会では、クリスマス礼拝を終え信者らが外に出始めたところで爆発が起き、少なくとも35人が死亡した。なかには車に乗り込んでから爆発に巻き込まれ、車両ごと焼死した犠牲者もいる。また負傷者も多数出ており、重傷を負いながら神父にすがる信者の姿もみられた。
このほか中部ジョスでも、教会を狙った爆発があり、警察官1人が死亡。北東部のダマトゥルでは、秘密警察ビル前に停車中の軍用車を狙った自爆攻撃があり、犯人のほか警察官3人が死亡した。(後略)【2011年12月26日 AFP】
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****礼拝中の教会を武装集団が襲撃、6人死亡 ナイジェリア****
ナイジェリア北部で24日、クリスマス・イブの礼拝中だった教会を武装集団が襲い、神父を含む6人を殺害した後に教会に火を放つ事件があった。地元警察などが25日、発表した。(中略)
ローマ法王ベネディクト16世は、例年行っているクリスマスの祝福メッセージの中で、「残虐なテロ行為が、キリスト教徒を多く含む人々の命を奪い続けているナイジェリアに、平和が訪れるように」との祈りを捧げた。(後略)【2012年12月26日 AFP】
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今年は静かな祈りの日であって欲しいものですが・・・。
シリア・イラクの「イスラム国」をまねて、ゲリラ的な襲撃だけでなく最近は面的な支配地域も広げている「ボコ・ハラム」の勢いはおさまる気配がありません。
今年4月、ボルノ州チボクの女子高から少女200人以上を拉致して、世界中の非難を浴びた「ボコ・ハラム」ですが、同じような襲撃を今も繰り返しています。
****ナイジェリアでボコ・ハラムが32人殺害、185人拉致****
ナイジェリア北東部で14日、イスラム過激派「ボコ・ハラム」とみられる武装集団が村を襲撃し、32人を殺害後、女性や子どもを含む少なくとも185人を拉致した。当局者や目撃者が18日、明らかにした。軍が市民を守れない状態が続いている地域が、またも集団拉致事件に見舞われた。
襲撃を受けたのは、ボルノ州のグムスリ。地元当局者2人と目撃者1人の話によると、銃で武装した男らの一団が村内の建物に火炎瓶を投げ入れ、村はほぼ壊滅状態になった。
この攻撃について、ボコ・ハラムは犯行声明を出していないが、村内の複数の情報筋が同組織による攻撃だったと伝えている。同域では携帯電話網が完全に破綻していた上、通行不能になった道路も多く、事件の詳細が明らかになるまで4日かかったという。
現地の当局者によれば、これまでは軍の支援を受けた自警団が村を守っていたが、14日はついにボコ・ハラムに圧倒されたという。(後略)【12月19日 AFP】
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他のアフリカ諸国と異なり、ナイジェリアは原油輸出で潤う、アフリカ一番の経済大国です。
その豊富なはずの資金がどこに消えているのかは知りませんが、政府軍兵士らは、携行式ロケット弾や重火器で武装した武装勢力の「砲弾の餌食」にされていると不満を漏らしており、士気の低下が問題となっています。
****ボコ・ハラム襲撃で32人死亡…軍は士気低下?****
・・・・ナイジェリアの軍事裁判所は17日、ボコ・ハラム掃討作戦への参加を拒むなど命令に違反したとして、兵士54人に死刑判決を下した。
ナイジェリア軍は、軍需物資の不足や給与の未払いなどで、兵士の士気の低下が著しいとの指摘が出ている。【12月18日 読売】
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一方の、「ボコ・ハラム」の方は意気軒昂です。
****ボコ・ハラム拉致継続宣言「我々は殺し続ける」****
ナイジェリア東北部を拠点とするイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」が多数の女性や子供を拉致するなど、活動を活発化させている。
「さらなる攻撃」を警告する映像もインターネット上で確認され、緊張が高まっている。
「我々は殺し続ける。人々を拉致し、売りさばく」
ナイジェリアのメディアによると、ボコ・ハラムの幹部が約20分間の映像の中で叫んだ。(後略)【12月19日 読売】
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来年も、世界はこの狂気に悩まされそうです。
ただ、こうした狂気が生まれる背景には、莫大な原油利益がどこに消えているのかわからないような、政治・社会の腐敗・汚職の構造、それへの貧しい人々の不満・反発があるのではないかと思われます。
【パレスチナ:「ベツレヘムに行きたい。でも、かなわぬ願いです」】
イエス・キリスト生誕の地とされるパレスチナ暫定自治区のベツレヘムでは、恒例のクリスマスのミサが開かれ、パレスチナとイスラエルとの間で緊張が続くなか、大勢の人々が平和への祈りをささげました。
****キリスト生誕地でクリスマスミサ****
・・・・パレスチナ暫定自治区のベツレヘムにはキリスト生誕の地に建つとされる「聖誕教会」があり、24日深夜から恒例のクリスマスのミサが開かれました。
クリスマスを聖地で祝おうと、ベツレヘムには外国から大勢の巡礼者や観光客が集まり、クリスマスツリーやイルミネーションで飾られた教会前の広場を埋め尽くしました。
パレスチナとイスラエルを巡っては、ことし6月にパレスチナ人の少年が殺害された事件などをきっかけに対立が先鋭化し、イスラエル軍がパレスチナ暫定自治区のガザ地区に侵攻するなど、和平交渉が大きく後退しています。
クリスマスのミサに合わせてベツレヘムを訪れたパレスチナ暫定自治政府のアッバス議長はミサに先立ち、関係者を前に「来年のクリスマスこそは、平和と静けさのなかで迎えたい」と述べて、この地域の平和への思いを新たにしていました。【12月25日 NHK】
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折しも、ガザ地区では、実効支配するハマスとイスラエルとの間で衝突が起きるなど緊張が高まっています。
****ガザで一時交戦 再び緊張高まる****
パレスチナ暫定自治区のガザ地区の境界線付近で、イスラエル軍とイスラム原理主義組織ハマスが一時交戦し、イスラエルはハマスが報復に出る可能性があるとして、イスラエル側の住民の一部に避難を呼びかけるなど再び緊張が高まっています。
イスラエル軍によりますと24日、ガザ地区南部のイスラエルとの境界線付近でガザ地区から銃撃があり、兵士1人が大けがをしたということです。
イスラエル軍は報復としてガザ地区南部のハマスの拠点に対してガザ地区の外側から砲撃したほか、上空から無人機による爆撃も行い、ハマスの軍事部門の司令官を殺害しました。
これを受けて今度はハマスが報復に出る可能性があるとして、イスラエル政府は境界線付近に住むイスラエルの住民の一部に避難を呼びかけました。
一方、ハマスの軍事部門はイスラエル側に責任があるとしたうえで、「停戦の合意違反であり、越えてはいけない一線を越えている」とイスラエル側を非難する声明を出しました。
ガザ地区からは今月19日にイスラエル側に向けてロケット弾が発射され、これに対し、イスラエル軍が翌日、ことし8月の停戦以降初めてとなる空爆を行ったばかりで、双方の間で再び緊張が高まっています。【12月25日 NHK】
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こうした状況で、ガザ地区のキリスト教徒は聖地ベツレヘムを訪れることもかないません。
****<クリスマス>キリスト教徒、かなわぬ聖地訪問…ガザ封鎖****
・・・・今年夏の50日間におよぶ戦闘の一時停戦から26日で丸4カ月を迎えるガザでは、多くのキリスト教徒がキリスト生誕の地とされる西岸地区ベツレヘム訪問の許可をイスラエル側に求めたが、多くは認められなかったという。
「ベツレヘムに行きたい。でも、かなわぬ願いです」。病院勤務のジャフダ・マイケルさん(22)が、ガザ市中心部にあるローマ・カトリック教会で首を振った。「大きな夢」だが、一度も実現していないという。
ガザに住むキリスト教徒は約3500人。圧倒的多数を占めるイスラム教徒に比べ極めて少数だ。クリスマスのこの時期、その大半がイスラエルにベツレヘム行きの許可を求めるが、マイケルさんは「認められるのは親世代の一部で、僕のような若者はまず無理」と話す。
ベツレヘムまでは約70キロの距離だが、イスラム原理主義組織ハマスがガザを制圧した2007年以降、イスラエルはガザを封鎖。域外に出るにはイスラエルの許可が必要になった。若者については「テロ行為をする危険性がある」として、特別な例を除き、まず許可されない。(中略)
今年夏の戦闘では、ガザの人口の4分の1以上に当たる48万人余りが避難のため自宅を離れたが、施設不足で数万人が行き場を失った。教会は施設を開放し、キリスト教徒らが食べ物や水を持ち寄り避難民を支援した。
一方、ベツレヘムでは聖カテリナ教会で恒例のクリスマスミサが行われた。AP通信によると、参加したパレスチナ自治政府のアッバス議長は「過激主義とテロ」の終結を呼びかけた。【12月25日 毎日】
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【イラク:「あなた方はイエスのようだ」】
ガザ地区の避難民と同様に、イラクでも「イスラム国」によって家を追われた人々がクリスマスを迎えています。
****<ローマ法王>イラク避難民「イエスのようだ」…電話で激励*****
フランシスコ・ローマ法王はクリスマスイブの24日、イラク北部でイスラム過激派組織「イスラム国」の迫害を逃れたキリスト教徒の避難民に電話をかけ、「あなた方はイエスのようだ」と励ました。
電話を受けたのは、イラク北部クルド人自治区の主要都市アルビル近郊にある避難民キャンプのキリスト教徒。
法王は衛星電話を通じ「イエスは(ベツレヘムから)エジプトに逃げなければならなかった。今のあなた方はイエスのようだ」と述べ、「私はあなた方のそばにいる」と語りかけた。
また、法王が中東に暮らすキリスト教徒にあてた書簡が23日に公表された。法王は書簡の中で「イスラム国」の暴力を非難し、国際社会に対応を要請。現地のキリスト教徒に対して「連帯」を表明し、キリスト教が生まれ育った地である中東にとどまるよう促した。
法王は24日、バチカンのサンピエトロ大聖堂でクリスマスイブのミサをささげ、「世界は慈しみを必要としている」と強調した。【12月25日 毎日】
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“キリスト教が生まれ育った地である中東にとどまるよう”・・・・欧州への難民流入による混乱を防止するためでしょうか。現地で暮らせるなら誰も好き好んで異郷の地には向かわないでしょう。
【シエラレオネ:「何とか子どもが食べるものを確保するのが精いっぱい」】
紛争やテロ以外にも、静かなクリスマスを妨げるものがあります。
エボラ出血熱の感染拡大が続くシエラレオネでは、感染予防のため人々が集まって祝うことを全土で禁止しています。
****シエラレオネ エボラ熱でクリスマス祝えず****
エボラ出血熱の感染拡大が続く西アフリカのシエラレオネでは、感染を予防するため人々が集まって祝うことが禁止され、クリスマスシーズンを迎えても、多くの市民がクリスマスを祝うことができないでいます。
WHO=世界保健機関は、24日付けで、エボラ出血熱の最新状況をまとめ、感染者が増え続けている西アフリカのリベリア、シエラレオネ、ギニアの3か国を中心に、感染や、感染の疑いのある人は合わせて1万9497人で、このうち7588人が死亡したとしています。
最も感染が深刻なのは、シエラレオネで、首都フリータウンなどを中心に、依然として感染拡大が続いています。
政府は、感染予防のため人々が集まって祝うことを全土で禁止していて、クリスマスシーズンを迎えても、多くの市民がクリスマスを祝うことができずにいます。
路上で商品を売っていた女性は、「クリスマスを迎えたけれども、うれしいことは何もない。ただ何とか子どもが食べるものを確保するのが精いっぱいだ」と話していました。
さらに店を経営している男性は「エボラ出血熱が発生してから商品が全く売れなくなってしまった」と話していて、長引くエボラ出血熱の感染が市民生活に深刻な影響を及ぼしています。【12月25日 NHK】
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エボラ出血熱の方は、拡大の勢いが弱まってきており、また、治療法やワクチンなどの研究開発も進められていますので、来年のクリスマスは通常に祝えるのではないでしょうか。
食糧援助などで、来年まで生活が持ちこたえることができればの話ですが。
来年の改善が全く見えないテロや紛争など人間の所業に比べれば、エボラウイルスの方がまだ扱いやすい・・・とも言えます。
【追記】
****シエラレオネ北部、エボラ対策で5日間「閉鎖」 クリスマスの例外も****
シエラレオネ政府は24日、エボラ出血熱の封じ込めを目指し、同国北部に5日間の「閉鎖」命令を出した。店舗や市場は閉鎖され、車両の通行が禁じられ、教会やモスクでの礼拝が禁止される。ただし、キリスト教徒にはクリスマスの25日だけは例外が認められる。(後略)【12月25日 AFP】
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