(トルコ・イスタンブールのイスティクラル通りで行われた国際女性デーのデモの参加者ら(2019年3月8日撮影)【3月9日 AFP】)
【世界各地で「国際女性デー」に合わせた女性らの取組が】
日本ではあまり大きく取り上げられることはありませんが、今日「3月8日」は「国際女性デー」です。
その由来は“1904年3月8日にアメリカ合衆国のニューヨークで、女性労働者が婦人参政権を要求してデモを起こした。これを受けドイツの社会主義者クララ・ツェトキンが、1910年にコペンハーゲンで行なわれた国際社会主義者会議で「女性の政治的自由と平等のためにたたかう」記念の日とするよう提唱したことから始まった。”【ウィキペディア】とのことです。
****女性の権利向上求め各地でデモ、国際女性デー****
トルコ最大都市イスタンブールの中心部で8日、「国際女性デー」に合わせて女性ら数千人が当局が禁止した抗議デモを行い、女性の権利向上を求め、女性への暴力を非難した。警察はデモ参加者に催涙ガスを使用した。
歩行者専用の目抜き通り、イスティクラル通りの入り口付近では、暴動鎮圧用の装備をした治安部隊が女性らの集団を押し返した。警察がデモ参加者に向かって催涙ガスを発射し、警察犬を使って威嚇すると、多くのデモ参加者が脇道に逃れた。
昨年の国際女性デーの行事は平穏に行われたが、当局は今年、デモが実施される直前にイスティクラル通りでのデモ禁止を発表した。
警察はデモ開始前から市の中心部に多数出動し、タクシム広場の周囲に非常線を張った。多くの商店はこの日の営業を見合わせた。数千人のデモ参加者は、最終的にイスティクラル通りのごく一部での抗議行動を認められた。
トルコの女性活動家らは、女性に対する暴力根絶のための措置が不十分だとして以前からイスラム色の強いレジェプ・タイップ・エルドアン政権を批判している。
一方、スペインでも同日、来月の総選挙の争点になっている女性平等を求めてストライキと大規模なデモ行進が行われた。
国内二大労組の労働者総同盟と労働者委員会は2時間の時限ストライキを実施。UGTによると全国で600万人以上が参加した。他にも、複数の小規模な労組が24時間ストを呼び掛けた。
2時間の時限ストは昨年の国際女性デーに初めて行われ、これを再び実現させようと、マドリードのマヌエラ・カルメナ市長や複数の著名ジャーナリスト、修道女らがデモ参加を表明していた。
北部バスク自治州では、女性議員の大半が議会に出席せず、議会の延期を余儀なくされた。
スペインでは4月28日に解散総選挙が予定されている。左右両派が女性の権利を争点とし、男女の不平等是正を公約に掲げている。 【3月9日 AFP】
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トルコ・イスタンブールのデモについては、“「黙らない」「怖がらない」と連呼する大勢の女性たちのデモに治安部隊が介入、催涙ガスも発射した。”【3月9日 共同】とも。
「黙らない」女性はエルドアン大統領のイスラム主義的価値観に合わないということでしょうか。
一方、強権的なアサド政権支配が強まるシリアでは、女性の要求も切実です。
****国際女性デー シリアで不当拘束の女性解放訴え****
内戦が続くシリアで多くの女性たちがアサド政権に不当に拘束され拷問を受けているとして抗議する集会が、8日、隣国のトルコで開かれ、シリア難民の女性も参加して国際社会に女性たちの解放に向けて行動するよう訴えました。
この集会は、国連が定める3月8日の「国際女性デー」に合わせてトルコの最大都市イスタンブールで開かれ、シリアから逃れてきた難民の女性などおよそ1000人が参加しました。
参加者たちは、シリアではアサド政権によって反政府勢力に協力したなどの疑いをかけられ多くの女性や子どもが不当に拘束されていると訴えていて、スカーフで両手を縛るパフォーマンスをして、女性たちの速やかな解放を求めました。
集会を呼びかけた団体によりますと、アサド政権によって現在も拘束されているとみられる女性は、およそ7000人にのぼるということです。
また国連も、政権側の収容所では、反政府勢力のメンバーの居場所を聞き出すために組織的に女性に性暴力を加えるなどの拷問を行っていると報告していて、内戦が続く中で女性に対する著しい人権侵害への懸念が高まっています。
集会に参加したシリア難民の女性は、「何人もの友人が性暴力の被害にあってきた。シリアで拘束されているすべての女性たちを救い出すために国際社会は行動を起こしてほしい」と話していました。【3月9日 NHK】
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女性に対する性暴力と言う直截的な人権侵害は別にシリアだけでなく、残念ながら世界各地で見られることです。
3月7日、国連人権理事会は、サウジアラビアに10人の活動家の解放と、イスタンブールでサウジアラビア人記者のカショギ氏が殺害された事件に対する国連主導の捜査への協力を求める共同声明を発表しましたが、サウジアラビアでの女性拘束者への暴行・拷問も問題視されています。
“活動家らは、拘束されている人々のうち、女性は電気ショックや鞭打ち、性的攻撃、その他の拷問にさらされていると訴えている。
サウジの検察当局者は先週、国内紙に対し、報道内容を調査したが、女性への拷問を示す根拠はなく、報道は「誤り」と述べた。”【3月8日 ロイター】
欧米・日本では、さすがにそこまでの人権侵害はありませんが、経済的・社会的な女性差別・格差は多方面で見られます。
****「女性差別だ」米連盟を提訴 サッカー女子W杯Vメンバー****
サッカー女子のワールドカップで、前回優勝したアメリカ代表の選手たちが、男子代表よりも報酬が低いのは差別にあたるとして、国際女性デーにあたる8日、アメリカサッカー連盟に対して訴えを起こした。
訴えを起こしたのは、サッカー女子のアメリカ代表選手28人。
訴状によると、女子代表選手の報酬は男子代表の4割程度で、是正を求めたものの、なんの措置も取られなかったという。
このため、「報酬に格差があるのは、性差別によるもので違法」だとして、アメリカサッカー連盟に対して、男子と同等の報酬の支払いを求めている。
アメリカ女子代表は現在、FIFA(国際サッカー連盟)ランキング1位で、過去3回のワールドカップで優勝している一方、男子代表は25位となっている。【3月9日 FNN PRIME】
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【世界で進む女性管理職・幹部の登用 日本ではほとんど変化なし】
各国・各機関の経済的・社会的差別・格差是正の取り組み・目標設定も報じられています。
****10年で国連職員半数女性に 事務総長「進歩に不可欠」*****
国連のグテレス事務総長は7日、国連の全職員に占める女性の割合を10年以内に50%まで高める方針を表明した上で、女性の地位向上と男女平等の実現は「世界の進歩に欠かせない」と強調した。8日の「国際女性デー」に合わせたビデオメッセージで明らかにした。
2018年12月時点で国連職員のうち女性は39%。17年に就任したグテレス氏は女性の幹部登用を積極的に進めており、昨年には幹部職員の女性の割合が50%に達した。
軍縮担当上級代表の中満泉事務次長や防災担当の水鳥真美事務総長特別代表ら日本人女性の幹部就任も続いている。【3月8日 共同】
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****仏軍、女性将官増加目指す 22年までに10%****
フランスのパルリ国防相は7日、記者会見し、軍で女性の役割強化を図る「男女共同参加計画」を発表した。士官学校の受験要件緩和や昇進機会の拡大などを通じ、2022年までに女性将官の割合を現在の約7%から10%へ増加させることなどを目指す。
男女平等はマクロン政権の重点政策の一つ。女性のパルリ氏は軍人の資質について「性別は関係ない。フランス史を振り返れば分かる」として、15世紀に英国と戦うフランスを救ったジャンヌ・ダルクに触れる一方「(女性を)優遇はしない。地位は全て能力と功績で与えられる」と強調した。【3月8日 共同】
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あまり切実に意識されることはありませんが、組織内の幹部・管理職割合が少ないことでは、日本はその後進性では世界的に定評があるところです。
****女性管理職、日本はG7で最下位 18年、世界では3割近くに****
国際労働機関(ILO)は7日、女性の労働に関する報告書を8日の国際女性デーに合わせて発表、2018年に世界で管理職に占める女性の割合は27.1%と3割近くに達した。安倍政権が女性活躍推進を掲げる日本は12%にとどまり、先進7カ国(G7)で最下位。11.1%のアラブ諸国と同水準だった。
ILOの統計によると、日本の女性管理職の割合は1991年の8.4%から27年間で3.6ポイントしか上昇していない。
世界で管理職に占める女性の割合は91年に24.8%だったが少しずつ上昇。地域別では、アジア・太平洋で約5ポイント上昇し22.5%になった。【3月7日 共同】
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****女性の管理職 世界全体27% 日本は12%****
(中略)2018年の時点で管理職に占める女性の割合は世界全体では27.1%と推計され、およそ30年にわたって緩やかな増加傾向が続いていますが、依然として低い水準にとどまっています。
国別に見ますと、G7=先進7か国ではアメリカが39.7%と最も高く、イギリスが35.9%、カナダが35.3%と続き、日本は大きく離され12%で最下位でした。
また上場企業の役員に占める女性の割合は2016年の時点で、G7ではフランスが37%、イタリアが30%、イギリスとドイツが27%と続き、日本は最下位の3.4%となっていて、日本の水準が先進国の中でもひときわ低くなっている実態が改めて浮き彫りとなりました。
ILOの担当者は「女性の機会や扱いを平等にすることにとどまらず、結果の平等を実現するための積極的な法律や政策が必要だ」と話しています。【3月8日 NHK】
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【女性自身の意識の問題も】
女性の社会進出が日本で遅れている理由は、社会や企業・組織における制度的問題、男性の無理解など要因は多々ありますが、世界で緩やかな変化が続く中で、日本では“27年間で3.6ポイントしか上昇していない”“アラブ諸国と同水準”というのは、女性の地位・役割に関する日本独自の価値観が背景にあってのことでしょう。
そうした女性の地位・役割に関する日本独自の価値観に関しては、社会や男性から“押し付けられている”面も多々ありますが、それだけでは日本の“無変化”は説明できないように思えます。
日本で女性の地位・役割について変化が起きない大きな理由は、そうした現状を女性自身が肯定的、あるいは無自覚に受け入れているという現実があるのではないでしょうか?
例えば、「女子力」といった言葉が女性を含めてごく一般的に使用されている現状も不思議な感があります。
もちろん「フェミニンな魅力」は私も大好きですが、そうした価値尺度で女性を測るような「女子力」といった表現には違和感も感じます。「女性とはかくあるべき」という固定観念みたいなものをベースにしているようにも思えます。
(そもそも「女子」という言葉を「私たち女子は・・・」など女性が抵抗なく使用していることにも違和感があります。学校で男子生徒との対比で使う場合は別として、一般的には「女子」は「男」に対比される“おんなこども”であり、“おとこ”に比べてのネガティブなイメージがあります。)
****サヨナラしたい8つの呪縛:6)お茶の用意は「女性の役割」****
■Dear Girls
1月末、プロ野球DeNAの筒香嘉智選手が、子どもの野球環境の改革を提言する記者会見を開き、こう言った。「(中学時代に所属した)堺ビッグボーイズでは、お茶当番の強制などは今は全くしていません」
少年野球では監督やコーチを務める父親のため、お茶や弁当を母親が交代で用意し、練習を見守るチームが少なくない。筒香選手は母親が負担を強いられていることも問題視したのだ。
小学6年生の息子が東京都内のチームに所属する女性(38)も、違和感を感じている。キャッチボールを教えられないからといって、「ママたちは雑務を」と男性側から言われると「それは違う」と思う。
この一年、「お茶どうぞ」はしなかった。「コーチは自分で持って来たらいいじゃないの」。ただ、周囲の母親たちの中には、お茶を用意することに抵抗がないように見える人も少なくない。
■固定された意識
マルチタレントの「はましゃか」さん(24)は一昨年末、「サラダ取り分け禁止委員会」の設立を宣言した。飲み会で、女性が大皿のサラダを取り分けたとき、「女子力あるね~」と声がかかるのを何度も聞いたのがきっかけだった。
サラダの取り分けは「女子力」なのか――。そんな思いから女性向けネットメディアに記事を書いた。
「男女問わず『やりたい人』がやればいい」「気遣いや思いやりに性別なんかない」。ツイッターにはそんな声が多数投稿された。
「委員会の本当の目的は、固定的な役割分担意識への問題提起なのです」。はましゃかさんは言う。
■「非対称」に疑問
昨年、「『女子』という呪い」という著書を出版した作家の雨宮処凛(かりん)さんは、「男と女を入れ替えて考えてみよう」と呼びかけている。「女性活躍」と言うが、「男性活躍」とは言わない。「女だてらに」と言うが、「男だてらに」とは言わない。
いとこの20代の女性が病気で亡くなった時のことだ。娘を亡くした母親や妹を亡くした姉に「ビールもう1本!」などと言っていた親戚の男性に対し、「殺意が芽生えた」と書く。
男性にとって都合がいい女性がよしとされる。男が頑張れば評価につながるのに、女性には時に冷ややかな視線が注がれる。
こんな「非対称」な社会に疑問を感じて思いついたのが、この「男女入れ替え」術だ。「必殺! フェミ返し」と命名した。
「この社会の変なところを一瞬で男性に気づいてもらういい方法なんです」
■価値観、カラフルに
小学1年生の私に親が与えたランドセルの色はピンクだった。交通安全を考えたようだが、案の定クラス中から「男のくせに、なんやこの色」総攻撃。泣きついて黒に買い直してもらった。
あれから半世紀。ランドセルこそずいぶんカラフルになったが、「男は(女は)こうしたもんだ」という決めつけは、どれだけ変わっただろう。ジェンダーを取り巻く価値観も、もっとカラフルであっていい。【3月7日 朝日】
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毎年、夏の甲子園中継などで取り上げられる“女子マネージャー”の裏方的美談にも違和感があります。(一生懸命やられている方には、非常に失礼な言い様ですが・・・)
本来“マネージャー”というのは、組織の内外を調整する管理職的業務ですが、実際に“女子マネージャー”がやっているのは、選手のユニフォームの洗濯であったり、極めて補助的な仕事です。
もちろん、どんな仕事にも“裏方”は必要であり、その仕事は尊重されるべきですが、その“裏方”と“女子”がくっつくと、女性の役割に対する固定観念みたいなもの感じてしまいます。
夫を陰で支える“良妻賢母”的なイメージでしょうか。
そうした“女子マネージャー”の存在を男性選手が当然のように受け入れ、女性自身がそういう立場を嬉々として受け入れているということに対する違和感です。
そんなに野球が好きなら、マネージャーでなく、自分たちでやったら?・・・とも思うのですが。
もちろん、中学で女子野球をやっていたけど、高校ではそういう場がないので・・・といった話もあるのでしょうが・・・。
女性週刊誌の見出しに「女子力アップ」という言葉が躍り、夏の甲子園中継で“女子マネージャー”の裏方美談が語られる限り、日本の“アラブ諸国と同水準”という現状はあまり変わらないのでは・・・とも思えます。
こうした“女性自身の意識”に対する思いは、個人的な体験に根差すのかも。
昔、男女雇用機会均等法が改正されたときに、組織内の女性の位置づけの変更作業に関係しましたが、その際に一番の抵抗となったのは、組織でも、管理職でも、男性でもなく、「男性と待遇で格差があったとしても、これまで以上に働きたくない。今のままでいい。」という女性の存在でした。
もちろん、それは女性が直面している家事・育児の負担という現実的制約によるものではありますが・・・・。