(【2月27日 Newsweek“アマゾン時代の「墓場」を歩く” 】 アマゾンとの競争に敗れて閉店したショッピング・モール アマゾンは、閉鎖したショッピングモールの跡地を続々と買い取り、自社の倉庫(フルフィルメントセンター)に様変わりさせているそうです。)
【GAFAを拒否しても普通に生活できる・・・・か?】
昔は「世界的大企業」というと、自動車メーカーだったり石油関連会社だったりが連想されましたが、最近では生活の隅々まで入り込んでいるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンといったIT企業が思い浮かびます。
それだけに、こうした巨大IT企業への反発も存在します。
****『グーグル』『アップル』『フェイスブック』『アマゾン』全部やめる人が急増中!?****
昨年の『新語・流行語大賞』の候補にもなった「GAFA」は、グーグル(G)、アップル(A)、フェイスブック(F)、アマゾン(A)という米国の巨大IT企業4社の頭文字を取ったものだ。いまや、世界中の人がGAFAのサービスや製品を日常的に利用しており、世界の影の支配者のように言われることもある。
これら4社の時価総額合計は、昨年11月2日の終値で2兆9700億ドル(約320兆円)にも上る。これは、英国のGDPをも上回り、4社の2017年度の売上高合計は5587億ドル(約62兆円)で、こちらは台湾やスウェーデンのGDPを上回っている。
史上類を見ないペースで急成長を遂げ続け、革新的な企業として常に称賛を浴びてきた「GAFA」だが、徐々に包囲網が築かれつつある。独占禁止法や競争法の適用、税制、そしてデータ・プライバシー規制だ。
使わなくても生活できることへの気付き
「しかし、もっと怖い包囲網が発祥の地、米国で築かれつつあります。『GAFAやめました』という若者の出現です。GAFAの光と影を描き、日本でも話題となった12万部のベストセラー『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』の著者、スコット・ギャロウェイ、ニューヨーク大学教授によると、米国経済はGAFAのせいでベンチャー企業がめっきり減っていると言います」(経済記者)
スコット教授いわく
《米国における年間の新規事業の数は、40年間で半分に減っている。カーター大統領のころは、今より新規事業が生まれていた。なぜ、新規事業が生まれにくくなったのか。その理由の1つが、多くの起業家がGAFAと競い合うのではなく、彼らに買収してもらえるような事業をしたいという認識を持っているからだ》
今や、彼らが提供するサービスや製品、機能がないと暮らしていけないのはもちろんだが、それを拒否したところで普通に生活できる。問題はそれに気付くかどうかだという。(後略)【1月15日 まいじつ】
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“全部やめる人が急増中”というのは、いささか「?」な表現です。現代文明に“アンチ”な思いを抱く人は常に存在します。まあ、“アンチ”GAFAをひとつのライフスタイルとして生むほどに、GAFAの影響力が大きくなっているということでしょう。
【アマゾン 生活を支配する怪物企業は世界の破壊者か変革者か】
今日取り上げるのは、巨大IT企業GAFAの中では“物流・通販”イメージも強いアマゾン。
個人的には、書籍関係はここ十数年、アマゾン以外の選択肢はありえません。(なんでも見つかることと、古本も網羅していることが魅力です。以前は送料も安かったし。配送も“早すぎるぐらい”早い。注文した翌日に鹿児島に届いてびっくりすることもあります。)
書籍以外にも、日用品関係は(比較的安いイメージがあって)アマゾンを繁用しますが、食品、ファッション関係、電化製品になると別サイトを利用しています。(実店舗での買い物はスーパーとドラッグストア、それに100均だけ)
AIスピーカーも、日本ではまだ“これから”の段階のようにも。
日本の市民生活におけるアマゾンの存在感は、(関係業界への影響力は別として)まだ“怪物”というほどのものにはなっていないように見えます。
“今のところ、アマゾン・エフェクトは主として北米市場に限定されている。同社の収入の約69%を占めるアメリカでの売り上げは1600億ドルだが、他の国々では格段に少ない。ドイツでは200億ドル、イギリスでは145億ドル、日本では138億ドルだ。”【下記「Newsweek」】
しかし、アメリカにおける存在感は圧倒的なようです。
****誰もアマゾンから逃れられない****
今も広がり続けるアマゾン・エフェクトの脅威 生活を支配する怪物企業は世界の破壊者か変革者か
(中略)25年前に書籍のネット販売を始めた頃から、アマゾンの望みは大きかった。南米大陸の密林地帯を流れる全長6500kmの大河アマゾンの名に負けない壮大さ。急成長を続ける同社の時価総額は今や8000億ドル近い。
アマゾンが扱う品目は2000万点を超える。しかも物流(専用の貨物機と倉庫網を運用する)や食品販売(自然食品チェーンのホールフーズ・マーケットを買収した)、映像コンテンツ(動画配信のプライム・ビデオ、クラ
ウドホスティング(アマゾンウェブサービス、略称AWS)、そしてゲームの世界(動画共有サービスのツイッ
チ)でも巨大な存在だ。
さらには四半期決算ごとに新たな展開を見せる。AIスピーカーのアレクサをデビューさせたかと思えば、オンライン薬局ピルパックの買収を発表したりもする。
その急成長を物語る数字には唖然とする。見たことがないような急速かつ多角的な事業拡大だ。18年度の総売り上げは2329億ドルで、前年度の1780億ドルから30%増。100億ドルという前代未聞の営業利益も記録した。
従業員数は米バーモント州の人口に匹敵する64万7500人以上。
事業の多角化が奏功し、今や売りヒげの半分近くはネット通販以外で稼いでいる。
この四半世紀にわたる躍進で、今では誰もがアマゾン・エフェクト(アマゾン効果)-アマゾンの急成長と多角化がもたらす影響、市場の混乱や変革を指す-を感じている。
アマゾンは消費者を囲い込み、注目と忠誠と出費を促す。そのために提供するのは利便性、価値、そして商品とサービスの拡充だ。
人々はアマゾンを身内のように信頼し、自宅に招き入れる。使い勝手の良さで関係が深まれば、もう他社は割り込めない。
蹴散らされた大手有名企業
アマゾンーエフェクトの原点はネット通販の規模と、規模の効果で築かれ角化がもたらす影響、市場の混乱や変た強い競争力にある。
もちろん、その「効果」(というか被害)が及んでいない企業もある。ホームセンター大手のホーム・デポや会員制小売り大手のコストコ・ホールセールなどだ。
しかし米国内を見渡せば、荒廃したショッピングモールから破産裁判所に至るまで、いわゆるリテール・アポカリプス(小売店の終末)の残骸が散らばっている。
創業時の取扱商品である書籍の業界では、書店チェーン大手のボーダーズが11年に経営破綻。最大手のバーンズ&ノーブルも実店舗の数を減らしている。玩具店チェーンのトイザラスも家電販売大手のラジオシャックも靴安売り店のペイレスーシューソースも、みんなアマゾンの参入によって打ちのめされている。
その実績と実行力ゆえに、アマゾン・エフェクトはまだ競争関係にない企業にも及ぶ。アマゾンが業界参入のそぶりを見せただけで、将来の競争相手と見なされた企業の株価は下がってしまう。(中略)
アマゾンに戦々恐々とする企業はどの業界にも存在する。アマゾンが自分の会社(またはライバル会社)を買収す奏のでは? いや、強力なライバルとなり得る会社を1から立ちあげるかもしれない。
アマゾンのスピード感と実行力、テクノロジーや新手法に積極投資する姿勢は誰にとっても脅威だ。(中略)
アマゾン・エフェクトは自治体にも及んでいる。事業の規模がシアトル本社に収まらなくなった同社が最大5万人の雇用を生む第2本社の建設を発表すると、200以上の都市が誘致合戦を展開した。(後略)【3月5日号 Newsweek日本語版】
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【巨大な支配力・影響力への批判・懸念】
その巨大な支配力・影響力への批判があることも事実です。
****民主党のウォーレン氏「アマゾン解体」公約=20年米大統領選****
2020年米大統領選に出馬表明した民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員(69)は8日、インターネット通販最大手アマゾンやIT大手グーグル、フェイスブックの「解体」を公約に掲げた。同党の候補者指名争いに十数人がひしめき合う中、「反大企業」の姿勢を鮮明にする狙いがある。
ウォーレン氏は公約で、フェイスブックが写真投稿サイト運営のインスタグラムを買収したことを例に、巨大企業が「競争を排除し、個人情報で利益を生み、その過程で小企業を苦しめ、革新を阻んできた」と非難。テクノロジー分野の競争を促す構造改革が必要だと指摘した。【3月9日 時事】
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上記は、民主党内で急進的主張が強まっていることの事例でもありますが、そのあたりの話は今日はパス。
日本でも、公取委が調査を始めています。
****公取委、ポイント還元巡りアマゾンを調査へ=メディア報道****
日本経済新聞電子版や読売新聞など国内メディアは26日、アマゾンジャパン(東京・目黒)がインターネット通販サイトの全商品でポイント還元する新サービスを巡り、公正取引委員会が取引の実態調査に乗り出す方針を固めたと報じた。
公取委は、ポイントの原資を出品者に負担させる方式が独占禁止法に違反している可能性があるとみて調べるという。
アマゾンは2月末、5月下旬からのポイント制度変更を出品事業者などに通知。ポイントの原資は出品者負担としており、公取委の関係者の話を日経が伝えたところによると、出品者側に直接的な利益があることを明示しないままの規約変更は、独禁法上の「優越的地位の乱用」に当たる可能性があるという。【2月26日 ロイター】
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アマゾンに対する独禁法関連の公取委の動きは2017年頃からあり、2018年3月にも、同社の通販サイトに出品する事業者に値引き販売した額の一部を補填させていた疑いがあるとして、独占禁止法違反(優越的地位の乱用)容疑でアマゾンを立ち入り検査しています。
また、“調べた後の公取委の対応の多くは、法的拘束力のない「注意」や「警告」にとどまり、課徴金の納付命令を出したのはここ5年で1件。アマゾン側はポイント還元は出品者の販売拡大につながると説明する。政府内からは「『注意』程度なら聞き流せば済むとアマゾンは思っているのでは」(経済産業省幹部)との見方もくすぶる。”【2月27日 朝日】とも。
ポイント還元制度で顧客の囲い込みを行っているのはアマゾンだけでなく、楽天もYAHOOも同様です。(各サイトのポイントに惹かれて、私は最近、各社のカードをつくっています。)
アマゾンなどGAFAへの警戒は、先進国だけでなく、インドでも。ただ、その趣旨は、国家のコントロールが及ばない存在への警戒感といった、欧米・日本とはまたことなる視点も。
****インドで強まるテック大手への規制強化は、どこまで実効性があるのか?****
インド政府が、アマゾンなどのECサイトやテック大手への締め付けを強化している。コンテンツの検閲やバックドアの作成などが義務づけられ、インターネット上の表現の自由が失われる懸念も生じている。(中略)
一方、インドでは、アマゾンやウォルマートなどネット通販大手の影響力を制限する目的でつくられた新たな規制が、2月1日から施行された。この新しい規制により、アマゾンがアメリカやヨーロッパで優位に立つ一因となった戦略の多くが、インドでは禁止される。
例えばネット通販大手は、自社製品(あるいはコントロール下にある企業の製品)の宣伝・販売や、自社ネット通販サイトだけで製品を販売するよう業者に強要すること、特定のセラーを優遇すること、さらに市場支配力を悪用してほかに負けない割引率を設定し、ライヴァルを妨害することなどができなくなる。
この規制が施行された直後、アマゾンはサイトから何千もの商品を削除することを余儀なくされた。それらは、Amazonブランド、あるいはアマゾンが多額を出資している販売業者の商品だったからだ。(後略)【3月8日 WIRED】
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上記インドのアマゾン規制は、いろいろ抜け道もあるようです。
【第2本社のニューヨーク建設断念 “『声なき多数派』が、雄弁な少数派や利己的な政治家たちに負けた”とも】
最近、話題になったのが前出【Newsweek】にもある、第2本社のニューヨーク建設計画断念の件。
これも、GAFAへの風当たりの強さを反映したものでしょう。
****アマゾン、ニューヨークの第2本社建設計画を断念****
Amazonは米国時間2月14日、ニューヨーク市に第2本社を建設する計画を撤回すると述べた。
第2本社「HQ2」の建設地は2018年11月、約1年に及ぶ公募と選定を経て、ニューヨーク市クイーンズ区のロングアイランドシティとバージニア州アーリントンの2カ所に決定したと発表された。Amazonはそれぞれ従業員2万5000人を収容するキャンパスを建設する計画を明らかにしていた。
建設地は、名乗りを上げた200を超える都市の中から選定された。Amazonは2カ所の本社にそれぞれ25億ドル(約2800億円)を投入するとしていた。また、5000人規模の新しいセンターオブエクセレンス(COE)をナッシュビルに開設することも明らかにしていた。
しかしニューヨーク市の建設予定地に対し、地元の擁護団体やニューヨーク市議会、クイーンズ区選出のニューヨーク州上院議員Michael Gianaris氏や下院議員Alexandria Ocasio-Cortez氏ら議員が直ちに反対し、根強く批判を続けた。
Amazonは、プロジェクト撤回の理由として州や地元政治家らの反対を挙げ、長期に及ぶ大規模なプロジェクトの遂行には「前向きで協調的な関係」が必要だと述べた。(中略)
HQ2建設に対し、複数の抗議活動が展開され、Amazonの幹部らは2回の市議会ミーティングで厳しい批判を浴びた。議員らは、従業員の多くが労働組合に加入していないことや、米移民関税執行局との関係をやり玉にあげた。Amazonに提供されるおよそ30億ドル(約3300億円)の優遇措置も大いに懸念されていた。
特にAmazonが莫大な規模を誇り、最高経営責任者(CEO)のJeff Bezos氏が世界最大の資産家であることが指摘されていた。【2月15日 CNET Japan】
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こうした“巨大企業批判”的なアマゾンへの反発によって計画断念に至ったことについて、アマゾン本社誘致を進めていたニューヨーク州当局は“怒り心頭”の様子です。
****痛恨のアマゾン第2本社撤回、「もう企業きてくれない」とNY州が反対議員を猛批判****
<多くの雇用と税収を失うことになった責任は、アマゾンの計画に賛成だった多くのニューヨーカーにもある。「声なき多数派」が「雄弁な少数派」に負けたのだ>
ニューヨーク州のロバート・ムヒカ予算担当官は2月22日に公開書簡を発表し、ニューヨーク市に第2本社の一部を建設しようとしたアマゾンの計画に公然と反対した連邦議員や州議会議員、一部の組合を激しく非難した。
ムヒカはアマゾンの計画について、ニューヨークにとって過去25年で「唯一最大の経済開発のチャンス」だったと指摘。アマゾンが進出を諦めたことで、いつかニューヨーク州で事業を展開したいと考えていた企業も二の足を踏むだろう。ツイッターで巻き起こった反対を理由に計画に反対した人々は、経済のことが分かっていないと主張した。
公開書簡は州知事のウェブサイトに掲載された。アマゾンの件から教訓を得てもらうためだと彼は言う。
「我々は最終的に270億ドルの収入と2万5000〜4万人分の雇用を失い、『企業の受け入れに前向き』だという評判にも大きな傷がついた」とムヒカは書いている。「計画に反対した組合が得たものは何もなく、彼らはほかの組合の組合員から1万1000人分の高賃金の仕事を奪った」
「数学と経済学の基礎も分かっていない」
ムヒカは、アマゾン側に提供されることになっていた助成金や税優遇措置は別のところに投資すべきだと主張した政治家たちは、数学や経済学の基礎も「わかっていない」と批判した。(中略)
ムヒカによれば、アマゾンが市と州にもたらす税収は(同社が得る30億ドルの9倍の)270億ドルにのぼる見込みだった。最大30億ドルの税制優遇措置も、2万5000〜4万の雇用が生まれれば、という条件だった。「州の予算担当官でなくとも、9倍のリターンが得られる投資が成功だということは分かるはずだ」
彼は、アマゾンの第2本社をめぐって北米200超の都市が誘致を競っていた時には提案に合意しておきながら、後になって反対の声を上げた一部の議員を強く非難した。(中略)
ムヒカは、反対した政治家たちを何も考えずに車を追いかける犬にたとえた。
「アマゾンが撤退を表明してから彼らが学んだとおり、計画への反対は優れた政治でさえなかった。彼らは車を追いかけて、追いついてしまった犬と同じだ。今なんとかして自分たちの行動を説明しようとしているが、説明ができずにいる」と彼は指摘した。
ムヒカは州議会で働いて23年になるが、その間に同州がまとめたアマゾンの次に大規模な経済開発プロジェクトが創出した雇用はわずか1000人分だったと語る。アマゾンが創出する見通しだった雇用に比べるとケタ違いに少ない。
「雄弁な少数派」に負けた
(中略)「アマゾンの計画を支持し、今は怒りに燃えている70%のニューヨーカーたちにも責任はある。彼らは『声なき多数派』は『声を上げなければならない』ことを学ぶべきだ。そうしなければ雄弁な少数派や利己的な政治家たちに負けてしまうのだから」とムヒカは述べている。
さらに彼は、市と州がとてつもなく大きな損をすることになった原因は、一部の議員が「責任ある統治」を行わずに政治ゲームに走ったからだと指摘した。
「アマゾンの建設計画を失ったことは、(ロングアイランドシティを含む)クイーンズ区にとって大きな打撃であるだけでなく、ニューヨーク州全域にとって打撃となり、地元選出の全ての議員の汚点になる」(後略)【2月26日 Newsweek】
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『声なき多数派』が、雄弁な少数派や利己的な政治家たちに負けてしまう・・・というのは、民主主義にあっては、ときに見られる現象です。