孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ・ガザ地区  再びロケット弾攻撃、イスラエルの報復 その狙い、影響は?

2019-03-15 23:06:47 | パレスチナ

(パレスチナ自治区ガザ地区で15日未明、イスラエル軍の報復空爆を受けて炎上する市街地=ロイター【3月15日 朝日】)

【復興を目指すパレスチナ・ガザと東日本大震災被災地の“絆”】
遠く離れた紛争の地・パレスチナ自治区ガザ地区と日本には意外な“絆”もあるようです。

****ガザで「日本の日」 東日本大震災からの復興の願い込めたこ揚げ****
パレスチナ自治区ガザ南部ハンユニスで14日、「日本の日」と銘打ったたこ揚げイベントが開かれた。参加した約500人の子どもたちは東日本大震災からの復興への願いを込め、色とりどりのたこを泳がせた。

日本の高校生からの動画メッセージなども上映され、約9000キロ離れたガザと日本で交流を深めた。
 
イベントは国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が主催して東日本大震災の翌年の2012年から開かれており、今回が8回目。

参加者を代表してハナ・アブムスタファさん(14)が「私たちは日本の方々の痛みを忘れません。パレスチナ人は『あきらめない』という教訓を得ました」とあいさつした。
 
岩手県釜石市とガザは東日本大震災を機に交流を続けている。今年もたこを揚げる様子などを互いに配信。アラブの伝統舞踊ダブケなども披露し、日本側からも釜石市や広島、東京の高校生らから動画メッセージが寄せられた。【3月14日 毎日】
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「天井のない監獄」とも言われる封鎖状態のガザの方は、戦乱からの復興が今なお難しい状況が続いています。日本の被災地は・・・・どうでしょうか?

【焼夷風船vs地対空ミサイル迎撃システムiron dome 毎金曜日の境界での衝突】
そのパレスチナでまた、イスラエルに対するガザ地区からのロケット弾攻撃と、それに対するイスラエル軍の大規模報復空爆がありました。その話の前に、緊張が続いているガザ地区の最近の状況ついては、以下のように。

****悪化するガザ情勢****
ガザを巡っては、5~6日にかけて焼夷風船への報復として、IDF(イスラエル軍)がガザのハマス軍事組織拠点を攻撃したが、双方に人的被害はなかったことを報告しましたが、ガザを巡る緊張はその後増大しているようです

al qods al arabi net とhaaretz net は、その翌日の6~7日にかけて、また焼夷風船が飛ばされ(技術的な改良の後が見られ、風船から爆発物を落すことができるようになった由)、またロケット弾が飛ばされた由。

これに対して、IDF機がハマスの軍事組織拠点に対し、6発のロケット弾を撃ち込み、また(久しぶりに)短距離地対空ミサイル迎撃システムのiron dome が作動した由。

境界線上での衝突で、銃撃された16歳のパレスチナ青年が死亡した由(中略)

昨日の記事に書きましたが、どうやらガザでの緊張の激化の一つの要因は「帰還のための行進」開始から1周年ということのようですが、最近では毎週金曜礼拝の後で、大きなデモと衝突が起きていました。

明日がその金曜ですが、金曜日に照準を合わせたように、ガザでは、日を追って緊張が増大しているように見えるので、明日の動きが気になります。取りあえず。【3月7日 「中東の窓」】
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“焼夷風船”というのは、いわゆる風船爆弾ですね。(冒頭“たこ揚げ”の延長でしょうか)
人的被害はなくても山火事などを起こすため、イスラエル側は相当に苛立っています。

パレスチナ側からすれば、「超安価な焼夷風船vs高価な地対空ミサイル迎撃システムiron dome」というのは、おそろしく費用的に効率のいい攻撃です。

【ハマスが住民不満を外部にそらすため? 和平協議へ反対する勢力の妨害行為?】
上記のような悪化した状況での今回の衝突です。

****イスラエル最大の商業都市にロケット弾攻撃 空爆で報復****
中東のパレスチナ暫定自治区から発射されたロケット弾がイスラエルの商業都市テルアビブに飛来し、これに対し、イスラエル軍は報復に乗り出して、ガザ地区の100か所以上を空爆し、双方の衝突が激しくなっています。

イスラエル軍によりますと、14日夜、パレスチナのガザ地区から発射されたロケット弾2発が、およそ70キロ離れたイスラエル最大の商業都市テルアビブに飛来し、空き地などに着弾したとみられ、けが人はいませんでした。

ハイテク企業が集積し、日本企業の進出も相次いでいるテルアビブがロケット弾攻撃の標的になるのはおよそ5年ぶりで、テルアビブ周辺では一時、空襲警報が鳴り響き、さらなる攻撃に備えて避難用のシェルターが開放されました。

一方、イスラエル軍は、ロケット弾攻撃はガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスによるものだとして報復に乗り出し、戦闘機などを使ってガザ地区にあるロケット弾の製造施設など、100か所以上の軍事施設を空爆し、これにハマス側もロケット弾で応戦して、双方の衝突が激しくなっています。

ハマスはロケット弾攻撃への関与を否定しています。

ただ、ハマスは、この直前にガザ地区の各地で発生したハマスに対する異例の抗議デモを武力で鎮圧していて、現地メディアの間では、住民の関心をそらそうとイスラエルへの攻撃を仕掛けたのではないかという見方も出ています。【3月15日 NHK】
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“ロケット弾攻撃はガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスによるものだとして”というのは、ハマスの関与の有無にかかわらず、ガザ地区を実効支配するハマスが「ガザで発生したすべての事案に対する責任を負う」というイスラエル側の立場です。

上記NHK記事の最後にある“ハマスは、この直前にガザ地区の各地で発生したハマスに対する異例の抗議デモを武力で鎮圧”云々については、上記以上の情報は目にしていません。

最初に少し触れたように、ガザ地区では復興が進まず、住民の経済状態も困窮が続くという状況ですので、謝意するハマスへの不満を強まっている・・・ということを背景にしたものでしょう。

誰がどういう思惑でロケット弾攻撃を行ったのかはわかりません。上記のようなハマスが、住民不満を外部にそらすためという見方は、ひとつの見解ですが。

“イスラエルとハマスは、エジプトの仲介で停戦の長期延長に向け協議していたとされ、これに反対する勢力が妨害目的でロケット弾を撃った可能性がある。”【3月15日 時事】という見解もあるようです。

どの紛争でも、和平の動きに対しこれを妨害しようとする勢力がありますので、ありえない話ではありません。

【総選挙を控え逆風下にあるイスラエル・ネタニヤフ首相にとっては追い風?】
一方、今回の衝突はイスラエル側の政治状況にも大きく影響しそうです。(別に、その思惑でイスラエル側が仕掛けたという訳ではありませんが)

イスラエルでは総選挙を前に右派ネタニヤフ首相が汚職で起訴されることになり、与党側の苦戦も報じられています。

****イスラエル 10年ぶり政権交代も 4月総選挙、右派苦戦*****
イスラエル総選挙が4月9日に実施される。選挙戦は5期目を目指すネタニヤフ首相率いる右派政党リクードと、ガンツ元軍参謀総長とラピド元財務相の中道政党連合「青と白」が第1党の座を争う構図となっている。

選挙後にネタニヤフ氏を収賄罪などで起訴する検察の方針を受けて、リクードは苦戦を強いられており、10年ぶりの政権交代の可能性も出ている。
 
「今後も首相として国民と国に奉仕する」。検察が起訴方針を示した2月28日、ネタニヤフ氏は無実を主張し、首相続投への意欲を強調した。

イスラエルでは首相が違法行為で起訴されたとしても辞任する法的義務はない。仮に起訴された場合、法廷闘争を続ければ有罪になっても5期目の任期中に収監されることはないとみられ、ネタニヤフ氏は強気の姿勢を崩さない。
 
起訴方針が明らかになった後の3月初旬の世論調査では、「青と白」が定数120のうち36〜38議席を獲得すると予想され、29〜30議席のリクードは劣勢だ。

だが、リクードと連立を組んできた右派や宗教政党は、なおネタニヤフ氏の首相続投支持を表明。右派・宗教政党ブロックの結束は固い。
 
ネタニヤフ氏は、エルサレムをイスラエルの首都と認定し大使館をエルサレムに移転したトランプ米大統領との蜜月ぶりなど、外交面の成果を誇示。通算で約13年に及ぶ首相としての実績を強調している。
 
一方、ガンツ氏はネタニヤフ氏を「汚職にまみれた首相」と呼び辞任を要求。「右派も左派もない」と国民の結束を呼びかけ、中東和平プロセスの進展を目指すとも公言。ガンツ氏の他にも元軍参謀総長2人が合流しており、安全保障面での強みもアピールしている。
 
ガンツ氏はネタニヤフ氏の起訴方針が発表された後に「ネタニヤフ氏と同じ政権にいることはあり得ない」と、連立には加わらない考えを示した。ただリクード内でネタニヤフ氏降ろしが起きれば、リクードとの連携もあり得るとの立場だ。
 
4月の総選挙に向けて42政党が名簿を提出しているが、実際に議席を獲得できるのは13〜14政党とみられている。単独政党が過半数を獲得する見込みはなく、選挙後の連立協議で政権が樹立される。【3月9日 毎日】
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上記のようなネタニヤフ首相にとって逆風が吹くなかでの今回衝突です。その影響は?

****テルアビブへのミサイル発射(イスラエル、ガザ)****
(中略)他方、この時点でテルアビブにミサイルが発射された背景が懸念されるところで、4月には(確か9日か?)イスラエル総選挙があることになっていて、パレスチナの誰かがそれを狙ったか否かは別として、haretz net は選挙を控えたネタニアフとしては、十分な反撃(報復)をしないことも、やりすぎて本格紛争に至ることも、選挙に影響するというジレンマを抱えているとしています。

他方現在エジプトの情報機関等が、ハマスとイスラエル間の緊張緩和を働きかけ、それとは別にカタールもハマスの資金援助等を通じて同じようにはたきかけているところ、haaretz net は彼らの動きに期待を表明しています。(中略)

いずれにしても、本日が金曜日で、恒例の?ガザでの緊張の日ですが、昨夜の動きを踏まえて、どういうことになるのか大いに懸念されるところです。

またイスラエル紙が指摘しているところ、この事件のイスラエル総選挙に対する影響が気になりますが、ネタニアフの汚職疑惑等から彼の率いる右翼グループの支持率が下がっていて、元参謀長たちの新しい政党が人気を得つつあるとの報道もあるところ、今回もこのような事件で右翼の強硬派に対する支持が盛り返すとすると、ネタニアフはラビン首相暗殺後、ペレス労働党が当然勝つものと思われていたのが、パレスチナのテロでリクードが勝った二の舞、と言うかまたもやパレスチナの過激派の動きで、ネタニアフが得をすることになるのか、更には彼が占拠を気にして、地上進攻などの強硬策をとることにならないか気になるところです。

気になる事ばかりですが、取りあえず。【3月15日 「中東の窓」】
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haretz netは“十分な反撃(報復)をしないことも、やりすぎて本格紛争に至ることも、選挙に影響するというジレンマを抱えている”としていますが、一般的には、こうした衝突はパレスチナへの強硬姿勢を示してきた右派(つまりネタニヤフ首相など)に有利に働くと思われます。

テロリスト側の過激派と右派強硬派の利害が、「和平の動きをとん挫させ、緊張状態を高め、主戦論主張勢力の立場を強くする」と言う点で一致する(裏でつながっているのでは・・・と思いたくなるほど)というのは、これまたどの紛争でも見られる現象です。

【進まないパレスチナ和平協議 「世紀の取引」は?】
上記記事にあるエジプト、あるいはカタールの和平調停の最近の動きについては知りません。(エジプトについては、シナイ半島をパレスチナに提供して、その代わりに・・・・なんて、実現できそうもない話は以前ありましたが)

エジプトの調停と言っても、できることは、自分のところに火の粉が飛んでこないようにという“とりあえず”の対応でしょう。

トランプ大統領の「世紀の取引」も、どうなったのかは知りません。そのうち、パレスチナ側の意向は無視しても、“華々しく”公表されるのかも。

基本的にトランプ大統領は中東に関心があるようには見えませんし、エルサレムへの大使館移転に見られるように中立的立場を捨ててイスラエル支持を鮮明にしていますので、仲介も困難になっています。

また、根気強く時間をかけて、入り組んだ利害の調整を行う気もないでしょう。「どうしてアメリカの得にもならないパレスチナなんかに、時間・カネをかける必要があるんだ?」といったところでしょう。

でも国内外からの賞賛は欲しい。オバマ前大統領がもらったノーベル平和賞も欲しい・・・とにかく短期の華々しい成果を誇示することしか念頭にないと思われますが、今はロシア疑惑だ、中国だ、北朝鮮だ・・・で忙しく、パレスチナどころではないとも思われます。

それとも、だからこそパレスチナ「世紀の取引」で一発逆転狙いでしょうか?

【自治政府 ハマスとの統一政府樹立は困難に】
ところで、パレスチナ自治政府は何をしているのか?

****パレスチナ首相にファタハ高官 ハマスとの統一、難航か****
パレスチナ自治政府のアッバス議長は、自治政府の主流派組織ファタハ高官のムハンマド・シュタイエ氏を新首相に任命した。

シュタイエ氏はアッバス氏の側近で、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスには批判的とされる。ファタハとハマスの分裂状態を解消し、統一政府樹立をめざす和解交渉はいっそう難航する可能性がある。
任命は10日。

今年1月末にアッバス氏に辞表を提出したハムダラ前首相は、ハマスとの和解交渉を主導したが、18年3月にガザ地区を訪れた際、自らの車列を狙った爆発事件が起きたこともあり、和解交渉は停滞している。
 
シュタイエ氏は以前、イスラエルとの和平交渉を担当したが、イスラエル寄りのトランプ米政権は、在イスラエル米大使館をエルサレムに移し、パレスチナへの支援を大幅に削減するなど圧力を強めている。

パレスチナは米国が仲介するイスラエルとの和平交渉を拒否し、米国が近く示すとみられる和平案にも応じない構えを見せている。【3月12日 朝日】
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ハマスとの統一ができないと、イスラエル・アメリカとの交渉も進められません。

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